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日本政府は虐殺に加担するな!  【BDS関西・関西ガザ緊急アクション】  役重善洋

 10月7日のハマース等パレスチナ抵抗勢力による大規模越境攻撃以降、イスラエルによるガザ攻撃がかつてない規模で継続し、一日数百人のペースで人々が殺され続けた。この衆人環視の下での大量虐殺を止めようと世界中の人びとが抗議の声をあげる中、欧米諸国はイスラエルの軍事行動を支持し続け、日本政府もそれに追随した。他方、グローバルサウスではイスラエルに対する批判的な国が圧倒的であり、10月31日にボリビアはイスラエルとの国交断絶を発表し、12月20日にはマレーシアがイスラエル船舶の入港禁止を決定した。また、この時期、イスラエルサッカー協会とのスポンサー契約が批判されてきたスポーツ用品ブランドのプーマも契約終了することをメディアにリークした。

 そしてついに12月29日には、南アフリカが、イスラエルのガザ攻撃がジェノサイド罪に当たることを認定するよう国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、その判決が出るまでの間、攻撃停止等を命じる暫定措置を取るよう求めた。そして今年1月26日に出された暫定措置命令では、攻撃停止命令こそ明記されなかったものの、ジェノサイドを防ぐためのあらゆる措置を取ることがイスラエルに対して命じられ、上川外相も「誠実に履行されるべきもの」との談話を翌日に発出した。

 ICJ暫定措置命令は、イスラエルがジェノサイドを犯している可能性が十分にあることを前提としたものであり、イスラエルのみならず、あらゆる国連加盟国が尊重すべき権威を有するものである。この間、東京の「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)」や「〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会」を中心に、イスラエル最大の軍需企業エルビットシステムズと協力覚書を締結した伊藤忠アビエーションおよび日本エアクラフトサプライ(NAS)に対する抗議行動が展開されてきていたが、2月5日には伊藤忠アビエーションを所有する伊藤忠商事が、2月9日にはNASが、立て続けにエルビット社との協力覚書を2月中を目途に終了することを発表した。とりわけ伊藤忠は、ICJの暫定措置命令と上記外務大臣談話を踏まえ、この決定を行ったことを明らかにした。これは、日本におけるパレスチナ連帯運動の大勝利といえる。

 日本の社会運動は、他国と比べても世代交代の遅れが目立っていたが、10月7日以降、これまでパレスチナ連帯にほとんど関わっていなかったミレニアル世代やZ世代の若者が相当数、運動に参入する状況が各地で見られるようになった。在日パレスチナ人や在日アラブ人などが運動に主体的に参加する状況も新たな動きとして注目される。

 大阪では10月19日の米国領事館前行動以降、「関西ガザ緊急アクション」の枠組みによる抗議行動が10回ほど取り組まれてきているが、その主力は「若者グループ」となりつつある。そこでは、街頭行動に際しての「撮影禁止ゾーン」の設定や、あらゆる差別への反対を表明する「グラウンドルール」の提示など、新たな運動文化が導入され、従来型の運動スタイルの転換がいよいよ始まりつつある。とりわけ、12月16日の抗議行動の一環として行われた「ティアーズ・フォー・ガザ」アクションは、そのようなイニシアチブによって実現された創意工夫に満ちた取り組みであった。エルビット社との協力覚書破棄を求める運動が勝利を収めることができたのも、そのような新しい世代の動きによるものだといえる。

 パレスチナ連帯運動に限らず、日本の多くの社会運動では、同じ顔触れの活動家が長く運動を牽引してきた結果、無意識のセクショナリズムや権威主義が、若者のイニシアチブを阻害してきた側面は否めない。とりわけ、「関西ガザ緊急アクション」内では、この間「トランスジェンダー差別」をめぐって話し合いが行われており、世代や立場の異なるメンバーの間の認識ギャップを埋める努力が継続している。米国のブラックライブズマター運動などでも、クイアの活動家が一環して運動の中で重要な役割を担っていることなどを想起すれば、日本の旧来型の運動がこの問題に関していかにアップデートが遅れているか、改めて反省を迫られていることは明らかであろう。

 こうした日本の社会運動における地殻変動を、対米追従を深めてきた日本外交の転換を迫る力の蓄積につなげられるかどうかが、今後問われることとなる。イスラエルは、ICJの暫定措置命令が出されたのと同じ1月26日に、国連難民救済事業機関(UNRWA)の複数の職員が10月7日の越境攻撃に参加していたとの発表を行った。間髪入れず、米国がUNRWAへの拠出金停止を発表、その後日本を含む18か国が極めて短期間の間に同様の決定を行った。この異常事態を受け、「関西ガザ緊急アクション」は、以下の要望書を外務省大阪分室で職員に手交し、面会の場の設定を求めたところである。




内閣総理大臣 岸田文雄 様
外務大臣   上川陽子 様

要  望  書

 日本政府による国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への「資金拠出一時停止」の撤回を求めます

 私たちは、「中東和平」に深く関わってきた日本に暮らす市民として、現在のガザ地区における壊滅的状況を深く憂慮し、去る1月28日に日本政府がUNRWAに対する資金拠出の一時停止を決定したことに対し、強く抗議します。

 ガザ地区のパレスチナ保健省によれば、10月7日以降約4ヶ月間に、ガザ地区では2万6000人が死亡し、6万5000人以上が負傷、8000人以上が行方不明になっています(1月29日現在)。

 1949年の設立以来、UNRWAが行っている食糧支援・教育・保健医療等のサービスは、現在、ガザ住民が甚大な被害を受け、過酷な避難生活を強いられている状況において、人々の生活と生命を維持するために必要不可欠なものであることは誰がみても明らかなことです。日本政府を含む18ヶ国が資金拠出を停止したことは、イスラエルのパレスチナ人に対する民族浄化・ジェノサイドへの加担です。

 1万3000人いるUNRWAのパレスチナ人職員の中の12名が「アル=アクサ―の洪水」作戦に参加したとのイスラエル側の訴えにもとづく「疑惑」は、UNRWAへの拠出金を停止する理由にはなり得ません。そのことにより、ガザにおける食料、水、医薬品の欠乏、不衛生な環境下の感染症が進行するのは明らかです。これは集団懲罰に当たり、国際法違反です。

 1月26日には国際司法裁判所(ICJ)が、南アフリカ政府の訴えを受け、ジェノサイドを防ぐために手段を尽くすこと、必要な緊急支援を可能とする措置を行うことをイスラエルに命じる暫定措置命令を出しました。上川外務大臣も、「この暫定措置命令は誠実に履行されるべきもの」との談話を発表しました。今回の日本政府のUNRWAに対する拠出金停止は、国連加盟国としての当然の責務を述べたに過ぎない、この談話にも矛盾するものです。

 そもそも、歴史的に見れば、パレスチナ人の苦難は、ヨーロッパにおける反ユダヤ主義の問題をパレスチナ人の犠牲によって解決しようとしたシオニズム運動を欧米諸国が支持したことに始まります。1948年のイスラエル建国以来続くイスラエルの民族浄化・アパルトヘイト政策の中、パレスチナ人はその人間としての尊厳を賭けて闘い、生き抜いてこられました。10月7日はその歴史の中で迎えられた日であることに心せねばなりません。長年続いているイスラエルによるUNRWA攻撃は、自らの加害の歴史を抹消しようとする試みに他なりません。

 一方、この日本は、アイヌモシリ・琉球・台湾・朝鮮半島・中国大陸・・・等に対する侵略と虐殺を繰り返して来た加害の歴史を持ちます。これを心から反省し、世界の人々に約束する意味で1947年、日本国憲法を制定し、その前文で、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と謳ったのではなかったのでしょうか。国際社会とは、欧米諸国だけではありません。今回の日本政府の措置は、いま世界中で起きている脱植民地化の潮流に真っ向から対立するものであり、大きく変わりつつある世界の中で日本が「名誉ある地位」を占めようとする努力を自ら公然と放棄する所業であると考えます。

 以上に認識にもとづき、以下要望します。

1. 日本政府は、UNRWAへの資金拠出の一時停止措置を撤回してください。また、同様の措置を行った他国に対しても、拠出停止の撤回を働きかけてください。

2. 国連による調査が行われている段階であるにも関わらず、ガザにおける人道危機をさらに深刻化することとなる上記決定を極めて短期間で行った経緯と理由を明らかにしてください。

3. 日本政府は、ICJによる1月26日の暫定措置命令を尊重し、ジェノサイドを防ぐためにガザ攻撃の即時中止とガザからの即時撤退をイスラエル政府に求めてください。

4. 対イスラエル武器禁輸を求める国連総会決議(ES‐9/1、1982年)、入植地ビジネス終結を求める人権理事会決議(A/HRC/RES/22/29)、およびイスラエル軍によるジェノサイドの可能性を前提としたICJの暫定措置命令等を考慮し、イスラエルに対する武器(デュアルユース製品・技術を含む)および入植地製品の輸出入を全面的に禁止してください。

 以上、それぞれの項目に対する政府の見解をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

ガザ・パレスチナの人々と共に生きていくために。
世界の希望、人間の未来を拓くために。

2024年2月6日   
関西ガザ緊急アクション




関西共同行動ニュース No95