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日本は自立した独自の外交を!  【ジャーナリスト】 布施祐仁  (講演要約-齋藤郁夫)


 「止めよう戦争への道・めざそうアジアの平和秋のつどい(10月21日)」での布施祐仁さんの講演「岸田軍拡の本質を暴く」の講演要旨です。布施さんは、2016年の自衛隊南スーダン派遣部隊が作成した日報の隠蔽を告発したジャーナリストです。(文責 齋藤郁夫)

■日本の防衛3文書のネタ

 43兆円規模の岸田軍拡の根拠になっているのが防衛3文書(22年12月閣議決定)です。その基になった一つ目は、2020年4月米国インド太平洋軍が米議会に提出した報告書です。ここには、第1列島線沿いに同盟国がつくる地上配備型ミサイルの増強、精密打撃ネットワークが必要だとされています。

 2つ目は、日米安全保障協議委員会(2プラス2)での合意(22年1月)です。その合意とは、『日米の戦略を完全に整合させ・共に目標を優先させる』というものです。

 3つ目が、米国の「国家安全保障戦略」(2022年10月)です。そこでは、米国の唯一の競争相手である中国に打ち勝つために国力のあらゆる要素を活用すると述べています。日本の防衛3文書は、この戦略に忠実にしたがってつくられたということです。

 自民党政調幹部は、43兆円は「確実に2割は上回る」と断言しました。国防族に至っては、「足りなければ社会保障費を削るなど、政府全体で財源を出せばいい」などと増額要求までする始末。(9月2日北海道新聞)。つまり国民生活を犠牲にしていいと言っているわけです。





■前線は自衛隊が担い、自衛隊基地は強靱化

 有事の時、日米はこの第1列島線上に築かれた「ミサイルの壁」により、中国を封じ込める遠征前進基地作戦をとります。その作戦は、米海兵隊が南西諸島の島々に分散して臨時の軍事拠点を置き、そこで対艦ミサイル部隊を展開させ、自衛隊はそれを支援し、中国本土へのミサイル攻撃も行うというものです。さらに、中国のミサイル攻撃を回避するため、在日米空軍・海軍の主力(アウトサイド部隊)は一旦日本から脱出し、中国のミサイルの脅威圏外へ移動します。

 一方、中国のミサイルの射程圏内で戦う部隊(インサイド部隊)は、自衛隊が担います。そのため、日本も1千キロ射程ミサイルを大量取得する(射程千~2千キロの高速滑空弾、射程2千~3千キロの極超音速誘導弾)。そして、インサイドで戦うことになる自衛隊の基地は、ミサイル攻撃を受けても継戦できるように、5年間で4兆円かけて強靱化するとしています。

 これは「米軍が日本を守る」こととはほど遠く、米国中心の戦略なのです。

■ASEAN外交に学ぼう

 このように日本は米国追従一辺倒ですが、ASEAN(東南アジア諸国連合)は違います。インドネシアのルトノ外相は、「世界戦争を防ぐもう1つの選択肢は、ゼロサムではなく、ウインウインであり、競争ではなく協力。封じ込めではなく包摂のパラダイムです」と述べている。そこには、ベトナム戦争の教訓が反映されています。対話により、アジア太平洋地域の紛争を予防する目的でつくられたASEAN地域フォーラムは、長期的には、「東アジア共同体」を展望しています。

 また、フィリピンの「二重外交」も示唆に富んでいます。マルコス大統領は2023年1月のダボス会議で「フィリピンが軍備を増強する意味はないと信じている」と述べています。

 沖縄県の翁長元知事は、「沖縄は『平和の緩衝地帯』として貢献したいと考えています」と述べました現玉城デニー現知事は「独自の地域外交でアジア太平洋地域の平和構築に貢献していく」と語っています。

 日中国交正常化(1972年9月29日)を実現した田中角栄首相は、1972年11月9日参議院予算委員会で「これは封じ込め政策のときから考えると、今昔の感にたえないぐらい緊張緩和ということだと思います」と述べています。このことばに米国は不快感を持ちましたが、しかし日本国民の多くは日中国交正常化を支持しました。その後米国も、1997年1月に中国と国交正常化で合意しました。

 国民が支持すれば独自の外交を展開することができるのです。





関西共同行動ニュース No95