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●神奈川の基地―最近の動き 【すべての基地に「NO!」を・ファイト神奈川】 木元茂夫

■横浜ノースドックに揚陸艇部隊配備

 神奈川県の基地で、いま一番注目を集めているのは、横浜ノースドックである。横浜港の一番北にある埠頭なのでノースドックと呼ばれる。瑞穂埠頭ともいい、面積約53ヘクタールである。



 その歴史を簡単に振り返っておくと、1945年に完成し日本陸軍の高射砲陣地が置かれていた。敗戦と同時に米軍が接収し、朝鮮戦争では弾薬の集積地となり、53年に休戦協定が結ばれると日本の予算で建物の増築が行われた。講和条約の締結を前後して横浜港が次々に接収解除される中で、横浜ノースドックだけは米軍専用埠頭として使用され続けている。ベトナム戦争時は米陸軍・相模補給廠で修理された戦車、装甲車などが国道16号線を南下して、横浜ノースドックから搬出されていた。72年8月には当時の飛鳥田横浜市長を先頭に「戦車の通行は車両制限令違反」として戦車闘争が起きた。

 2023年1月11日の日米外務防衛相会談で、揚陸艇部隊280人を配備することが合意された。小型揚陸艇そのものは2002年から2004年にかけて「保管のため」という名目で32隻が搬入された。現在は13隻であるが、「保管」ではなく稼働しているのが実態である。ここ数年の日米共同統合演習で、奄美大島や佐世保に陸自の16式機動戦闘車などを輸送した実績があり、23年4月に米軍がフィリピンに1万2千人の兵力を投入して実施された大規模軍事演習バリカタン23では、小型揚陸艇がフィリピンに米軍の高機動ロケット砲システム(ハイマース)を輸送した。ウクライナにも供与した短距離ロケット砲である。現在は必要な時に運転要員がやってくるが、今後は280人を常駐させるという。


ハイマース

 神奈川県基地関係県市連絡協議会は2月7日付で、外務・防衛両大臣宛の要請書を提出。「新編される部隊の役割、具体的な活動内容、部隊配備までのスケジュール、要員の居住場所等について速やかに情報提供すること。また、横浜ノースドックにおける、将来にわたる大規模な施設整備の予定、基地機能の変化の有無などについて、速やかに明らかにすること」という、なかなか鋭い質問を投げかけた。

 3月3日付の浜田防衛大臣からの回答は、「船舶の運航要員を常時配置することにより、海上機動力を強化するものであり、船舶の入出港回数が一定程度増加するものと予想されますが、人員・物資の輸送という任務や船舶数の面では、これまでと変更はありません」「新たに配置される要員は、日本国外の様々な場所から集められ、家族帯同で主に横須賀海軍施設、キャンプ座間等の既存の神奈川県内の米軍施設等への居住を予定している」「既存施設の改修を行うことは想定され得るが、施設を新たに建設する予定はない、との説明を受けております」だった。4月16日に先遣隊員5人が配備されたが、残りは来年末までに順次やってくるという不明瞭な説明であった。

■米軍の動きと歩調を合わせるように、自衛隊は独自の揚陸艇部隊の編制に動いている。

 22年度防衛予算では、小型揚陸艇(略称LCU、載貨重量 350トン)と中型揚陸艇(LSV載貨重量1700トン)各1隻が発注され、24年3月が納期。23年度予算でも小型揚陸艇 2隻の建造予算を計上。

 昨年の日米共同統合演習では、重量26トンの16式機動戦闘車が与那国島にC‐2輸送機(最大搭載重量29トン)で空輸されたが、LCUならば8隻程度を一度に輸送できる。LSVならばさらに大量の物資輸送が可能。この2隻がどこに配備するかはまだ公表されていない。


LCU

 「防衛力整備計画」(22年12月閣議決定)には、「島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊等を南西地域に迅速かつ確実に輸送するため、輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇)、輸送機(C‐2)、空中給油・輸送機(KC‐46A等)、輸送・多用途ヘリコプター(CH‐47J/JA)、UH‐2)等の各種輸送アセットの取得を推進する」とある。「南西地域に迅速に輸送」と言い切っていることに要注意。

 1月11日の日米外務防衛相会談では、沖縄海兵隊の一部を小規模な海兵沿岸連隊に再編することが合意された。防衛省の資料には「海兵沿岸連隊(MLR)は、米海兵隊の新たな運用構想(EABO)を実行する中核となる部隊」と書かれている。EABOは遠征前進基地作戦の略称で、対艦ミサイルを装備した小部隊を多数の島々に分散配置して、中国軍に対抗しようとする構想である。

 沖縄島、宮古島、石垣島などには、すでに大型の港湾が整備されているが、そこからさらに小さな島々への輸送となると、その量は相当なものになる。そこで、砂浜にも物資の陸揚げができる小型揚陸艇による輸送が注目され、日米とも輸送能力を増強しようとしている。

■横須賀基地-米艦船1隻増、PFOS米軍原因回答せず

 横須賀基地には3月4日、イージス駆逐艦ジョン・フィン(DDG113、2017年就役)が配備され母港艦船は13隻から14隻に増加した。ここ2年で艦艇の交替が進み、旧式のイージス艦は帰国し、ラファエル・ペラルタ(2017年就役)、ラルフ・ジョンソン(2018年就役)、など新鋭艦が配備された。横須賀を母港とするイージス艦は台湾海峡を通過したり、7月16日には日本海で日米韓共同訓練が実施されたが、米軍はジョン・フィンを海自は横須賀配備の「まや」を参加させた。


米イージス艦 ジョン・フィン

 7月10日、南関東防衛局長は有機フッ素化合物PFOS(ピーフォス)に係る米軍の調査結果を横須賀市に説明しにやってきたが、「極めて大規模な横須賀海軍施設の全ての排水を処理しているため、原因を特定することは困難である」という開き直りとも言うべき回答であった。

 なお、空母の艦載機のうち固定翼機50数機は岩国基地に移転したが、厚木基地には米海兵隊のFA‐18戦闘攻撃機が頻繁に飛来し飛行訓練も行われている。原告約8800人で、2017年に提訴した第5次爆音訴訟は6月26日に最後の口頭弁論が行われ、11月1日に結審の予定である。


FA-18




関西共同行動ニュース No94