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辺野古新基地建設と沖縄県知事選挙 【沖縄弁護士会】 三宅俊司


2022年9月11日、沖縄県知事選挙がおこなわれ、オール沖縄の「玉城デニー氏」が、33万9757票の得票で、自民公明のサキマ氏に6万票あまりの差をつけて圧勝した。

サキマ氏は、これまで曖昧にしてきた「辺野古新基地建設」について、「容認、推進」の立場を明確に示し、「辺野古新基地建設の是非」が県知事選の明確な争点となった。県民は、再び「辺野古新基地建設反対」の民意を明確に示した。

自民公明日本政府は、自ら「辺野古新基地建設」を県知事選の争点としながら、「辺野古新基地建設」の民意が明らかになると、「基地問題が動かなければ沖縄経済も進まない。こう着状態は県民にとって不幸なことだ」と脅し、自民党・森山選対委員長は、「さらに県民の理解を得られるよう努力」する。「あと一歩及ばなかった。県民の気持ちが基地問題よりも経済対策にあることはよく理解していたが、沖縄県の発展に向けさらに政策に磨きをかけたい」「地方自治体の首長選挙なので、国政に直接影響することはない。辺野古への移設は、国の方針として決めているのでさらに県民の理解を得られるよう努力することに尽きる」と述べ、沖縄県民が辺野古新基地建設反対の民意を示そうとも、国は「辺野古新基地建設」を強行すると宣言した。

日本政府にとって、「辺野古新基地建設受け入れ知事」が当選すれば、これを民意と評価して利用しようとしたが、「反対の民意を示す知事」が当選すると、「国が決めること」だから無視してよい。との態度を再び示した。

沖縄の民意を無視し、沖縄の軍事基地化を推し進める日本政府・沖縄防衛局は、選挙から10日も経たない9月20日には、埋め立て予定海域のサンゴ類の移植申請を不許可とした県の対応を不服として、行政不服審査法に基づいて、農相にその取り消しを求める審査を請求した。

行政不服審査法は、本来、「国民の権利」を守るための法律であるが、「防衛施設局も事業者」であるとして、「私人」のふりをして、「行政不服審査法」に基づいて、所管大臣にその取消とともに、執行停止を求め、裁判を経ることなく、沖縄県知事の判断を無効にしてきた。これまでも、「国の違法行為」を「国が守る」という手法を繰り返してきたが、選挙直後に、沖縄県民の民意を無視するように審査請求を行った。

今回の選挙は、旧統一協会とサキマの関係が大きく取り上げられ投票行動に影響を及ぼしたことは明らかであるが、その一方で、インターネットを通じて、玉城デニーに対する「ヘイト」が乱発された。大阪府泉南市の添田詩織市議が知事選期間中、候補者の玉城デニー氏に関する虚偽投稿をしたとして、「奈良―沖縄連帯委員会」が出した公選法違反(虚偽事項公表)容疑の告発状を大阪府警泉南署が受理している。

「沖縄土人に選挙権は早かったね」「沖縄人、日本から出ていけ!」「令和の琉球処分が必要だ」など、差別、排斥、制度的な暴力を扇動するもの、「お前らは中国人と同じや」「沖縄の土人達(たち)は在日が沢山(たくさん)いるようです」など、外国人差別と重ね合わせた書き込みも放置されていた。米国人を父に持つ玉城知事に対して「日本人もどき」などの差別発言や、「帰化人」などのデマが飛んだ。「高江オスプレイパット建設強行」のために派遣された大阪府警機動隊が、高江反対派市民に対して発した「土人」発言は、沖縄に対する本土の差別感情を如実に示している。

辺野古新基地建設、琉球弧ミサイル基地群化は、沖縄を再び戦争への危険に追いやる日本政府による沖縄の利用と切り捨てであり、その本質は、沖縄に対する「根底的差別」が根柢にある。

沖縄には47分の1の自治権すらない、従属植民地でありつづけさせる。沖縄は、本土のために利用し、収奪させる対象であり、日本にすり寄る限りで保護するが、反対すれば抑圧する。その歴史は、いまでも変わらない。



沖縄振興予算を、基地とリンクさせて減額を繰り返す。「サキマ」の日本とのパイプとは、「日本にすり寄る」ことで予算をもらうとの主張にすぎない。大田県政を敗北させた「県政不況」の再来を夢想して、「県政危機」を叫んだが、不況の現況は日本政府の無能にあることは周知の事実で、騙される県民はいなかった。

日本政府は、「お金をばらまくこと」が「丁寧な説明」と思っているのだろう。沖縄関連予算は、オール沖縄県知事が当選してから、毎年減額され続ける。

名護市「稲嶺市長」の時代、政府は米軍再編交付金を不支給とした。交付金は、在日米軍の再編計画に伴い、新たな施設や訓練を受け入れる自治体に対し、着工など進捗(しんちょく)に応じて政府が支給する。自治体は地域振興など、幅広く活用できる。これを不支給として、名護市を飛び越えて、新基地建設に係わる「区」に直接「現金」を交付して懐柔手段とした。辺野古新基地建設問題をあやふやにして、黙認する現市長となると、突然、「米軍再編交付金」を復活させた。

辺野古新基地建設予算は、防衛省の試算でも、発注から2年半で工費が当初の259億円から416億円と、約1.6倍に増えている。また、沖縄県の試算では、工期13年、工事費用2兆5000万円と評価しており、防衛省の当初計画の約10倍と評価されている。

本格的な埋め立ての、土砂の投入量は計画全体の11%にとどまる。玉城デニー知事は、「新基地建設反対は、1ミリも動かない」と宣言した。沖縄に新基地建設を許してはならないし沖縄を再び戦争の危機においやってはならない。



我々は、沖縄を差別し続ける日本の琉球・沖縄に対する歴史的責任を今一度検証し、学び直さなければない。私自身、沖縄に住む本土出身者として自らの責任を自覚し、検証しなければならないと思う。辺野古新基地建設、米軍基地問題は沖縄だけの問題ではない。本土の問題だといわれるが、それは間違いだと思う。琉球、沖縄に犠牲を強制し続ける、日本の責任であり、日本の問題であり日本人民の責任の問題である。




関西共同行動ニュース No92