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【巻頭言】国葬と統一教会を撃つ! 中北龍太郎

国葬とは国が主催し国の経費で行う葬儀と定義されます。9月27日に強行された安倍国葬には重大な問題が幾重にもあり、とりわけ安倍や自民党と世界平和統一家庭連合(統一教会)との骨がらみの黒い癒着問題が存在しています。

■国葬の問題点と歴史

国葬の実施は閣議だけで決定され、国民の代表機関である国会での審議・決議が全く無視されたことが第1の問題点です。第2に、政府は国葬の根拠法として内閣府設置法をあげていますが、同法はどのような場合にどのようなことができるのかを定めておらず、国葬の実施法にはならず、単に所掌事務を定めただけの同法は法的根拠になりません。第3に、「国葬は故人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式」(岸田首相)と述べているように、国=国民全体に対し弔意と安倍に対する敬意を強要し、憲法19条の思想良心の自由を侵害することです。

戦前における国葬の歴史を省みると深刻な問題性が浮かび上がります。1878年の大久保利通の葬儀は自由民権運動などを封じる意図から国葬に準じる形にし、実質上最初の国葬の対象となったのが83年の岩倉具視、次いで91年三条実美の時政府は国葬と表現しました。国葬は天皇が「臣民」の功績を讃えるための儀式として次第に形を整え、1926年には国葬令が作られ法的にも完成しました。戦時下になると山本五十六などの国葬は戦意高揚のために最大限利用されました。国葬は、マスメディアを介し軍を動員して盛大に行われ、国民は喪に服すとされ、国民統合の機能を大いに発揮しました。戦後国葬令は戦後民主主義と相容れないとして廃止され、国葬に関する法が制定されないまま今日に至っています。戦後1度だけ吉田茂の国葬が佐藤栄作のゴリ押しで行われたものの、以来55年間国葬は死語と化していました。今回安倍国葬が唐突に強行されることになったのです。



■安倍と統一教会

安倍銃撃事件の山上徹也容疑者は犯行の動機として、安倍が2021年統一教会関連団体に統一教会を称賛するビデオメッセージを寄せていることをあげました。統一教会関係者が安倍の選挙事務所に出入りし選挙の支援を行い、桜を見る会に統一教会関連団体幹部が連続招待されてきました。とりわけ見逃すことのできないのは、統一教会票の差配を安倍自らが行っていたという点です。安倍は自民党と統一教会との構造的な癒着の要をなしてきたのです。にもかかわらず、岸田首相は安倍と統一教会との関係を全く調査しないと一貫して明言しており、どこまでも安倍の果たしてきた役割を隠蔽しようとしています。

統一教会と安倍との密接な関係の歴史は祖父岸信介にさかのぼります。韓国統一教会の創立は1954年、日本に入ってきたのが58年で、宗教法人として設立されたのが64年です。68年統一教会の政治部門である国際勝共連合が日韓で設立され、岸はたびたび勝共イベントの実行委員長をしたり、韓国での合同結婚式に祝辞を送ったり、米国で収監中の教祖文鮮明の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったりしました。安倍は祖父と統一教会との親密な関係を引き継いできたのです。

■統一教会の原理

統一教会の信者数は韓国で2万人、日本には4万にいるとされています。文鮮明によって創設された統一教会は、独特の聖書解釈をとる原理講論という教典を持ち、文鮮明が再臨のキリストを自称しています。こうした教義からキリスト各教派では統一教会は異端とみなされています。アダムとエバの時代にエバがサタンと不倫をしたことにより人類は原罪を背負うことになった、この原罪から人類を救済するためにサタンの血統を転換しなければならないと説いています。血統転換のためには、女性は文鮮明が選んだ男性と結婚することによって初めて原罪のない子が生まれる、これが第1教義の祝福であり、集団結婚はその象徴的な儀式と位置づけられます。

もう一つの教義・万物復帰は、地上にある万物=すべての財産は本来神のものであり、地上というサタンの世界に置かれている財産を神すなわち文鮮明のもとに復帰させるのは救いであると説いています。この教説は正体を隠した霊感商法を見事に合理化することになります。唯一日本においてだけ違法な霊感商法を行い多額の資金を調達しています。こうして得た莫大な資金は韓国の統一教会やファミリービジネスを支えてきました。

■統一教会の活動

80年代から統一教会は霊感商法を行ってきました。街頭や戸別訪問で姓名判断や家系図診断を行い、先祖供養や霊魂の恨みを解くなどの名目で市価の数倍から数十倍に及ぶ印鑑、数珠、高麗大理石壺などを売りました。また、教養講座を装うビデオセンターを各地に設置し、統一教会の名を隠して市民を勧誘するようになりました。こうした活動を契機として市民の動員と資金調達を戦略的に行う組織宗教となりました。戦後の外来宗教の中で統一教会ほど社会に浸透した新宗教はありません。しかし、こうした活動は社会から批判を浴びせられ、統一教会=霊感商法、集団結婚式、マインドコントロールという評価が定着しました。

信者たちは、文鮮明とその妻韓鶴子を「真の御父様、御母様」と呼び、集団結婚に選ばれたいという願望を抱き、統一教会の様々な活動にのめり込んでいきました。また、信者は家庭を犠牲にして多額の献金を行ってきました。集団結婚式で家庭を持ち韓国に渡った日本人の信者数は1万人にも上っています。この現象はマインドコントロールによるものです。マインドコントロールとは、常識を逸脱した影響力の行使によって、無意識のうちに自己の信条などが強く支配され、精神・金銭面などで重大な被害を受ける状態を指します。

統一教会は宗教部門を有する多国籍企業の形態をとり、日本だけでも100を超える事業体が設立されています。こうした事業活動・組織が統一教会を支え、信者を獲得する基盤となり、また社会の批判や警察の介入を防ぐ偽装組織になっているのです。

■自民党と統一教会

自民党が9月8日に発表した党所属の国会議員と統一教会との接点点検結果でも179名もの多数が接点を持っていたことが明らかになり、癒着の根深さと広がりの一端が浮き彫りになりました。それでも申告はじゃじゃ漏れで追加発表されることになりました。教会側は票・人出・資金面などで選挙の応援をし、その見返りに議員は統一教会関連団体への参加・挨拶、祝電・祝辞などをしていました。両者は持ちつ持たれつの関係であり、自民党は反社会的な統一教会に一種のお墨付きを与えてきました。自民党側の統一教会への庇護は、例えば、①92年米国で懲役刑の判決を受けたために本来日本に入国できない文鮮明を金丸信が入国の便宜を図りました。②08年文鮮明提唱の莫大な資金がいる日韓トンネル構想に自民党議員が推進議員連盟を結成しました。③15年には18年間認められなかった統一教会の名称変更を統一教会と深い関係にあった下村博文文科大臣の下で一転承認されました。

統一教会は勝共連合を使って、勝共という価値観を広め、スパイ防止法定運動や改憲などの活動を担ってきました。選択的夫婦別姓の否定、家族の極端な重視、福祉・生活保護制度の敵視、大軍拡などの点でも、統一教会と自民党の政策はピッタリと一致しています。

92、93年は合同結婚式報道や式に参加したスポーツ選手の脱会などで統一教会報道が続きました。ところが、94年になると地下鉄サリン事件をきっかけにオウム真理教報道一色になり、統一教会は忘れられていきました。この失われた30年で、霊感商法や献金被害が繰り返され、統一教会の国会議員や地方議員への浸透が続きました。



■改憲と国葬

大軍拡と改憲の動きが進んでいます。年内を目途に防衛3文書の国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改訂が計画されています。今年4月発表の自民党政務調査会=安全保障調査会の「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」は、日本の防衛戦略を米国の国家防衛戦略体系に合わせた新たな防衛3文書に切り替えるよう提言しています。また、米国家防衛戦略にならって多くの事項を秘密化することも検討されています。新防衛3文書により、集団的自衛権の行使、敵基地・中枢攻撃能力の保有、中国に対する日米共同の抑止と対処などの大軍拡がいよいよ本格化します。

大軍拡の動きに続いて9条改憲がやってきます。衆参両院で改憲議席が3分の2を超える中で、岸田首相は任期中の改憲をめざすと公言しています。安倍銃撃後は「安倍元首相の遺志を引きつぎ改憲を実行する」と明言しています。遺志の継承という名で国葬を改憲の正当化に利用しようと企んでいるのです。安倍は安保法制、改憲4項目の提案、敵基地・中枢攻撃能力の保有を提唱してきた政治家です。こんな安倍を国葬にするということは、安倍のすすめてきた大軍拡・改憲を賛美することになります。しかも、国葬は安倍・自民党と統一教会との骨がらみの構造的結びつきを隠蔽する危険も持っています。

自民党の改憲案と統一教会の改憲案は、2012年の自民党改憲草案や改憲4項目のどちらも瓜二つです。統一教会は自民党の改憲案を実現するために活動してきたと評価されます。

国葬を徹底的に批判し、そして改憲を断固として阻止しましょう!




関西共同行動ニュース No92