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横須賀・佐世保とのトライアングルの要・米海兵隊岩国基地、世界規模でも突出した基地強化
【ピースデポ代表】湯浅一郎


 2022年5月20日、在日米海兵隊第1海兵航空団(沖縄県)は岩国基地(山口県)にステルス戦闘機F35Bを16機追加配備する計画が完了したと発表した。F35Bは最新鋭戦闘機「F35」のなかで短距離離陸・垂直着陸(STOVL)ができるようにした機種である。さらに5月9日には米海兵隊が3年ぶりに公表した航空計画で、2014年から岩国基地に配備されている15機のKC130空中給油機を2023年3月までに17機に増強することも明らかになっている。岩国基地は増強の一途をたどっている。その課されている役割を考える。

(1)海兵隊の航空基地としての岩国基地

 米海兵隊は七つの航空基地を有しているが、そのうち二つが海外にある。それが普天間基地(沖縄県)と岩国基地である。普天間は、オスプレイ24機をはじめとしたヘリ部隊が常駐している。岩国基地には、FA18ホーネット戦闘攻撃機を中心にハリアーⅡやグラウラー電子戦機など約60機の戦闘機が配備されていた。2016年8月、米軍は、岩国のハリアー8機、及びホーネット20機を米本国に移駐し、代わりに2017年からF35Bステルス戦闘機16機に交代すると発表した。そして冒頭に述べたようにF35Bは16機追加され、現在32機になっている。岩国配備のF35Bは佐世保配備の強襲揚陸艦に搭載されることになる。強襲揚陸艦はヘリ空母と言われるが、垂直離着陸戦闘機を搭載することで、規模は小さいが空母と同じ機能を有している。



(2)空母艦載機の移駐で海軍も同居

 その岩国に厚木基地の空母艦載機部隊の移駐計画が米軍再編の過程で急浮上した。理由は示されていないが、横須賀配備の空母を原子力空母にすることで、神奈川県への負担増を少しでも減らすべく、海面埋め立てで基地拡張した岩国が矢面に上がった可能性がある。また今、馬毛島で自衛隊基地として建設を強行しているが、懸案である空母艦載機の夜間離着陸訓練施設を西日本で確保する方針も関係しているかもしれない。そして2018年3月31日、空母艦載機部隊61機の移駐が完了した。これにより岩国基地は海軍と海兵隊が共存する基地となった。

 現在、岩国基地への配備機数は、元々の海兵隊配備の60機、空中給油機15機に加え、空母艦載機61機を含めると合計136機と推定される。これまで極東最大といわれた沖縄県の嘉手納は全部合わせても100機程度なので、それをはるかにしのぐ規模である。

 岩国への空母艦載機移駐で、岩国は海軍基地としての性格も持つようになった。否、むしろ海軍基地の性格の方が強くなったとも言える。原子力空母は動く軍事空港で、空母1隻の艦載機部隊は中規模国の軍事空港を上回る能力があり、世界中どこの海にも行ける。どこかで戦端を開く必要があれば空母を派遣して艦載機が爆撃をする。イラク戦争が典型だが、1、2ヶ月の戦闘で政権を覆す。その戦争の戦端を開き、戦争の中心を担う空母の艦載機部隊が岩国に来たということは、岩国が戦争の中心を担い、戦争に最も近い基地となったことを意味する。

(3)在日米軍の要となった岩国基地

 朝鮮戦争が終結していない状況下で起こりうる朝鮮半島危機において、米韓合同の作戦行動における米軍には、在日米軍が含まれる。というよりも作戦の中心を担うことになる。

 またここ数年、日米政府は台湾有事を意図的に取り上げ、東アジアの軍事緊張を高め、それに対応するための日米の軍事連携や、南西諸島から薩南諸島への自衛隊配備などを進めている。これらへの軍事的対応が具体的に想定される事態が生じた折には、岩国の軍事的機能は、朝鮮戦争を想定した場合と同様に米軍の中心的役割を担うことになる。

 こうみると朝鮮戦争や対中国との軍事行動を想定した作戦において、岩国基地配備の航空機は、その中心的な役割を担うことが見えてくる。空母艦載機は空母「ロナルド・レーガン」打撃群の中心として空爆の第一撃を担う。海兵隊のF35B垂直離着陸機は佐世保の揚陸艦から空爆を行う。岩国に海軍と海兵隊の両方の航空機部隊がいることで、岩国基地は、横須賀、佐世保の海軍部隊の双方と密接な関係を保持し、空母と強襲揚陸艦という海上軍事基地をプラットホームとして戦闘を遂行するのである。普天間や横田のオスプレイ部隊も岩国を給油基地として経由しながら朝鮮半島や東シナ海へと向かう。これほど多彩な機能を有した基地は他にはない。逆に武力衝突が起これば、岩国は北朝鮮や中国の準中距離弾道ミサイルの標的になる。岩国は米軍の戦争を支えることと、その戦争に伴う標的になるという二重構造の中に否応なく置かれているのである。

 2021年末現在、米軍は17万2642人の兵員を海外に配備している。その中で在日米軍は5万6842人と世界で最も多い。基地総数も120と最大で、特に大型基地は21と群を抜いている。横須賀には空母「ロナルド・レーガン」打撃群を中心に13隻の戦闘艦、佐世保には強襲揚陸艦「アメリカ」を初めドック型揚陸艦や掃海艦など9隻が配備されている。海外基地で戦闘艦を5隻以上母港としているのは横須賀と佐世保だけである。これらの事実は、在日米軍の際立った特徴である。岩国基地は、海上で軍事空港となる横須賀、佐世保配備の艦船をプラットホームとして、岩国配備の61機の空母艦載機、32機の垂直離着陸機F35Bがいつでも戦闘を起こせる体制を維持している。岩国は、横須賀、佐世保とのトライアングルの要となっており、世界規模で見ても戦略的に極めて重要な基地となっている。米軍の世界規模での海外展開の中で岩国基地の位置づけが飛躍的に高まっていることは間違いない。




関西共同行動ニュース No91