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【巻頭言】改憲勢力=維新を撃て! 中北龍太郎

■改憲と大軍拡

衆院選は、自民絶対多数獲得、野党共闘でも野党は敗北、維新伸長という結果に終わりました。また、衆院における改憲勢力は77%に達しました。これにより一気に改憲の動きが強まりました。

自民党は憲法改正推進本部を憲法改正実現本部に改組しました。岸田首相は「憲法改正を進めるため党内の体制を強化する、国民的議論のさらなる喚起と国会における議論を進める」「任期中の実現をめざす」と明言しました。茂木幹事長は「コロナ禍を考えると緊急事態に対する切迫感は高まっている」「党内論議から主戦場が国会での審議に移っていく」と発言しています。日本維新の会は来年の参院選と同時に改憲の国民投票を行うと主張し、国民民主党と憲法審査会の議論を加速させると合意しました。安倍元首相は清話会会長就任あいさつで「憲法改正は立党以来の党是、この議論の先頭に清話会は立とう」と檄を飛ばしました。こうした改憲の動きが9条をターゲットにしていることは疑う余地がありません。

改憲と大軍拡がセットで迫ってきています。軍事費をGNP2%=11兆円に増額する大軍拡が自民の選挙公約に掲げられました。GNP1%枠は90年以降現在まで守られてきましたが、これを反故にしようとしているのです。

もう一つの大軍拡の動きは敵基地攻撃能力保有の一般方針化です。すでに、1000㎞射程の長距離射程ミサイル、護衛艦「いずも」の空母化、新型イージス艦の建造など先取りの実態が先行しています。こうした実態を一般方針化してさらなる拡大強化を狙っているのです。敵基地攻撃能力の保有は、専守防衛原則を破壊し、先制攻撃に行きつかざるを得ません。大軍拡により自衛隊は、自衛力整備段階から攻撃力強化段階に進みます。それは中国との戦争準備に外なりません。

敵基地攻撃能力は沖縄―南西地域に集中的に配備され、辺野古基地やミサイル基地建設が強行されています。これらは自衛隊が、対中国対決の第1線に立つことに外ならず、沖縄―南西地域は戦場と化します。安保法制により集団的自衛権行使に道が開かれ日米軍事一体化した本土も戦争に巻き込まれます。こうした大軍拡の動きの集大成が9条改憲です。

■ハシズムによる憲法破壊

維新の会は、橋下徹抜きには語れません。07年数多くテレビ出演していた橋下は、視聴者に光市事件弁護団を懲戒請求するよう煽動しました。ところが、弁護士会は懲戒事由がないと判断し、むしろ逆に弁護士でもある橋下に業務停止2ヶ月の懲戒処分を下しました。テレビで露出度の高い橋下は、08年大阪府知事選で当選を果たしました。就任して間もなく橋下は「今の日本の政治で一番重要なのは独裁」と発言し、職員に独裁的な手法で命令し、叱責・激高を繰り返しました。

10年には地域政党「大阪維新の会」を設立し、11年の統一地方選で躍進し、その力を最大限活用し、府議会で君が代斉唱時の起立強制条例を成立させました。ダブル選では、橋下は大阪市長選へ、府知事選には松井一郎が立候補し、共に勝利して、12年府議会で教育基本条例を可決させました。条例によって教職員に君が代斉唱時の起立を義務づけ強制することは、君が代斉唱が戦前忠君愛国教育に利用されてきた歴史的経緯からも、憲法19条の思想・良心の自由を破壊し違憲です。また、教育基本条例の「5回目の職務命令違反又は同一の職務命令に対する3回目の違反を行った教員等は、原則として免職とする」との条項は、余りにも過酷であり裁量権の乱用です。さらに、教育基本条例は、「知事は教育目標を策定し、教育委員を罷免できる」とされています。これら条項は、憲法26条で「教育の自由」を、教育基本法16条で「不当な支配は許されない」として、教育への政治介入を禁止した精神に違反し、知事による教育行政の支配に公然と道を開いています。

12年大阪市は橋下市長の業務命令で職員に対するアンケート調査を実施しました。調査項目には思想調査を強制する内容が含まれ、「正確な回答をしないと処分の対象とする」とされていました。こうした強制は思想・良心の自由、憲法21条で保障された政治活動の自由の侵害です。弁護士会が調査中止を求める会長声明を発表した結果ようやく中止になりました。13年には橋下は「慰安婦制度は必要」、「(海兵隊の性犯罪をなくすために)もっと風俗業を活用するよう」にと沖縄基地司令官に進言しました。この発言は性暴力の被害者たちの尊厳を著しく傷つけるもので、辞任を求める声が巻き起こりました。

橋下の悪政はとどまることはありませんでした。幾つかの例をあげれば、大阪人権博物館の廃止、ピースおおさかの加害展示取りやめ、大阪市内の市民交流センターの全廃、朝鮮学校に対する補助金の停止などです。このように橋下の悪政=ハシズムの嵐が吹き荒れたのです。大阪都構想の住民投票で敗れた橋下は15年遂に市長を辞職しました。



■維新改憲案は改悪

12年、大阪維新の会を母体に全国政党日本維新の会を立ち上げました。維新の会は改憲を掲げ、教育無償化、道州制、憲法裁判所の導入を提唱しています。しかし、いずれの案も改悪に外なりません。具体的にその問題点を明らかにします。

「法律に定める学校における教育は、すべて公の性質を有するものであり、保育期の教育から高等教育に至るまで、法律の定めるところにより無償とする」と教育無償化の改憲案を提唱しています。ここでは、無償化の根拠は学校における「公の性質」に求められています。「公の性質」の明確化は限りなく教育への国家統制につながります。これまで無償化が進まなかった原因は行政・立法の怠慢であり、無償化は現行憲法でも十分可能です。憲法26条は「すべて国民は・・・教育を受ける権利を有する」と定めています。この規定により、いかなる理由によっても教育を受ける権利は奪われてはならず、国も自治体もその権利を実現するために最大の努力をしなければならないことになっています。憲法26条は市民の教育権の保障として簡潔にして十分なものになっており、維新案のようにいらぬ条項の追加により権利保障が制限されてはたまったものではありません。必要なことは憲法をもとに政策転換、政治姿勢の変革へ向かう合意形成です。

道州制は、自民党や財界が強く求めているもので、自治体を基礎自治体300位と都道府県を廃止して新設される広域自治体=道州10位に再編しようとするものです。道州制の目的は大規模な公共事業や国際競争力のある都市づくりの推進などにあります。他方、過疎が一層深まり、福祉や教育への投資の抑制が生じ、ナショナル・ミニマムが低下し、公務員の大幅削減、住民負担の増大がもたらされます。しかも、国と自治体の対等な関係という原則が否定され、地方は国の専管事項とされる外交・防衛・通商などに口を出すなということになります。現憲法は、対等原則を前提に、自治体に団体自治(自治体の自律権)と住民自治(意思決定への住民参加)を保障していますが、この原則が大きく崩されてしまいます。全国市町村会が道州制に反対しているのも当然です。

憲法裁判所設置の改憲案は、経済同友会、読売新聞社や中曽根元首相「憲法改正試案」など財界・政界から出されていました。その理由として、読売新聞は「スピードアップ」をあげています。このスピーディーな事件処理から透けて見える憲法裁判所像は、重要な憲法問題を政府側に有利かつ迅速に処理することです。私たちは、現行違憲審査制を活性化させ、憲法の価値原理を体現する裁判を迫っていかなければなりません。

■狙いは9条

維新の会が9条改憲に熱心なのは、その創始者・橋下に由来しています。橋下は「9条は国際貢献とか、他人を助けるときに自分のいやなことはやらないという価値観。」、「憲法9条がなかった時は、他人のために汗をかこう、場合によっては命の危険もあるかもしれないけど、負担せざるを得ないとやっていた」。このように、9条に対し極端な嫌悪感を抱いています。

維新の会は9条については改正論議を行うとしています。もっとも維新の会合では、自民党の9条に自衛隊を明記するという案に変えて「実力組織」という表現を提唱しています。9条の真骨頂は武力によらない平和を築く努力を積極的に展開するところにあり、世界の民衆の平和的生存権を実現するために汗をかくという積極的平和主義が9条の真髄です。橋下は、こうした憲法の精神を全く理解できていないのです。

吉村府知事は総選挙後「岸田総理が本気で憲法改正したいかにかかっている。自民党が腹くくって改憲するというのなら協力する。総理総裁の首が飛んでもやるかどうか。やるやる詐欺に付き合うつもりはない」と発言しています。

維新の会が改憲の動きの先導役を果たそうとしています。改憲潮流はいよいよ奔流になろうとしています。しかし、絶対に改憲を許してならないとの決意を改めて確認しましょう。





関西共同行動ニュース No89