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リコール不正署名によって浮かび上がったもの 【弁護士 】  中谷雄二


テレビCMの高須クリニックの高須克也院長を代表とし、河村たかし名古屋市長が応援してはじめた愛知県の大村知事のリコール署名で、佐賀県で大量アルバイトを雇って偽造署名をしたことが発覚した。これを受け、愛知県選挙管理委員会は、愛知県警に地方自治法違反で被疑者不詳で告発した。

本年5月19日には、署名推進団体である「お辞め下さい大村秀章愛知県知事愛知100万人リコールの会」の事務局長で、維新の会の次期衆議院候補であった田中孝博氏とその家族、関係者ら4人が逮捕された。この事件によって署名を推進したネット右翼を中心にした勢力の実態が浮かびあがってきた。

元々、リコール署名の発端は、2019年に愛知県で開催された国際美術展である「あいちトリエンナーレ」の企画展として「表現の不自由展・その後」(以下、不自由展)を大村知事が開催したことにある。不自由展は、松井大阪市長から電話を受けた河村市長が不自由展を視察して、平和の少女像などの展示作品を「日本人の心を傷つける」などと発言し、不自由展の中止を求め、同日、菅官房長官(当時)も助成金見直しを発言したことがきっかけとなって、抗議の電話、メールやFAXなどが殺到した。



その結果、不自由展は、開催後わずか3日で中止されてしまった。あいちトリエンナーレは県条例に基づき、知事が実行委員会会長、名古屋市長が会長代行となり、県と市の負担金と民間企業からの資金の拠出によって運営されることとなっていた。その名古屋市の負担金残金を河村市長が支払うのを拒否したため、実行委員会から支払を求める裁判が起こされた。それを理由に、高須院長と河村市長が話し合って大村知事に対するリコール運動を始めたのである。

名古屋市内で開かれた署名推進団体である「お辞め下さい大村秀章愛知県知事愛知100万人リコールの会」の設立記者会見には、会長の高須院長の他、作家の百田尚樹、評論家の竹田恒泰、中部大学の武田邦彦氏らが駆けつけ、河村市長、吉村大阪府知事もメッセージを寄せた。このリコール運動が歴史修正主義者・ネット右翼らによって推進されたことがわかる。



100万人の署名を集めると高須氏が大見得を切ってはじまったリコール賛同署名は、昨年11月、43万5334人分(必要法定数:86万6000人)が選管に提出されたが、提出直後から署名を偽造された、同一人の筆跡があるなどの苦情がよせられたため、選管が精査したところ、提出署名の実に83.2%が無効で、うち90%近くが同一人の筆跡などの偽造署名だということが発覚した。内約8000人が死者で、偽造署名には10年前の名簿が元になったものもあった。リコール運動のボランティアに参加する際は、秘密を遵守すること、秘密を漏示した場合には、損害賠償に応じるという誓約書も書かされていたという。

署名の期限後に書き写させたものがあることから、有効署名数が7万3147筆と必要署名数の10分の1にも満たなかったため、署名数を水増しするために偽造が行われたことが疑われる。実務上は、有効署名数に達しない場合には、精査されることなく署名簿が返却される扱いとなっていたことから、どうせばれないだろうと考えて偽造させたものと思われる。



署名推進勢力は、わずかな署名しか集められない実態で、インターネットやマスコミの報道によって実力以上に過大に見せかけていることがわかる。

金でアルバイトを雇って署名偽造を行うというのは、民主主義の根幹というべき直接民主制度を冒涜する行為であり、署名推進勢力の腐敗と堕落、幼稚さを浮き彫りにした事件である。

このような勢力に日本を蹂躙させておくわけにはいかない。




関西共同行動ニュース No87