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安倍・菅政権の五輪への固執が日本のコロナ対策を歪めてきた
【東京オリ・パラ反対!実行委員会 】 喜多幡佳秀


昨年初めから「東京オリンピック・パラリンピック反対!実行委員会」を結成して講演集会、デモ、街頭宣伝を繰り返してきた。福島原発事故からの避難者、都市再開発と排除に反対、障がい者差別反対、反天皇制、アジア連帯などさまざまな分野の運動団体が集まっている。次の企画を相談するたびに、「それまでには中止が決まっているだろう」、「これで最後だろう」などと話していた。しかし、まだ止まらない。あと2カ月を切り、緊急事態の延長が決まった今でも、彼らはますます意固地になっている。

やっと野党やメディアからも五輪開催反対の声が上がり、政局と絡めた解説や米中冷戦下の中国との関係に言及する論評が賑やかだ。

現時点(5月末)でも今回の五輪がどうなるかは不明だが、中止されるにせよ強行開催されるにせよ、今回の五輪をめぐる一連の騒ぎは、そもそも五輪とは何なのか、誰のためのものなのかを考え直すための多くのきっかけと手がかりを「レガシー」として遺すだろう。「平和の祭典」や「スポーツ精神」という衣に隠れた醜悪な国家の威信と体面、商業主義と利権が、誰の目にも明らかなほど剥き出しになった。今回の騒ぎをきっかけに、世界中で五輪廃止の声が広がることを期待したい。

■玉砕精神と奇跡頼み?

5月中旬にフランスのジャーナリストで、2024年パリ五輪に反対している活動家から問い合わせがあった。「五輪中止のネット署名が回ってきたのでサインしたが、中止の可能性はどうなのか?日本政府とIOC(国際オリンピック委員会)の力関係は?日本の反対運動は?」

私に中止の可能性を尋ねられても困るのだが、とりあえずは当たり外れのないように、次のように答えておいた。

「今では日本の70%以上の人が五輪開催は非現実的あるいは非合理的だと思っている。問題は開催か中止かの決定が支配階級内の権力構造や政治的な思惑とリンクしていることだ。菅首相と彼の取り巻きたちにとって五輪の成功はギャンブルだ。しかもコロナ感染をめぐる状況が悪化するのにつれて賭け金はますます高くなっている。なぜなら状況をコントロールできない菅政権への批判が高まっているからだ。



今では多くの人が菅首相とJOC(日本オリンピック委員会)のやり方を説明する際に、第2次世界大戦当時の日本軍の玉砕精神に言及するようになっている。そんな事情なので何が起こるかは全く予想できない。ロックダウン(封じ込め)に関する決定やワクチンの供給計画さえ、このギャンブルとリンクさせられてきた。現在の時点で私が言えることは、中止の可能性があるのは間違いないが、政策決定者が常に冷静な決定を下すわけではないということだ」。

早速返信が来て、「ありがとう。少しわかってきた。ところで(コロナ対策が)ギャンブルとリンクさせられてきたというのは興味深い。もう少し説明してほしい」と。



■呪いの五輪

私は当初から安倍政権の五輪開催への固執が日本のコロナ対策を歪めてきたと主張してきたので、「よく聞いてくれた」とばかりに次のような追伸を送った。

「五輪開催が可能だという判断はいかなる客観的状況・条件にも根拠づけられていない。これはギャンブルであって、もし勝った場合は菅政権の人気と名声が高まるだろう。そうなれば彼らのナショナリスト且つ新自由主義者としての政策に弾みがつく。では、負けた場合は?そんなことは考えない。だから怖い。

私が問題にしているのは、五輪開催への固執がコロナ感染対策を歪めてきたことだ。初期の段階で、彼らは感染の脅威を軽く考えようとした。人々が五輪の成功に疑いを持たないようにするためだ。
五輪延期を決めた後は、何の見通しもなくゲーム感覚で感染者数の増減に応じて緊急事態宣言を弄んできた。

彼らの関心の中心は五輪などのメガイベントや巨大建設プロジェクトに主導されるGDPの成長であり、ビジネス活動の規制には常に消極的だった。その一方で、彼らはワクチンですべて問題が解決するかのように言ってきた。現在の時点でも彼らはワクチンが奇跡をもたらすと信じようとしている。ドタバタの接種計画には多くの不安があるのに、彼らは奇跡に賭けているのだ」。

こういう玉砕精神や奇跡頼みの政策決定は日本独特のものだと思っていたので、フランスの活動家に伝わるか不安だったが、IOCやG7(主要先進7ヶ国)も日本政府の決断を支持しているどころか煽っている。ヨーロッパやアメリカにまで玉砕精神と奇跡頼みが蔓延しているのかもしれない。

福島はアンダーコントロールというウソから始まった2020年東京オリンピック・パラリンピック。国立競技場やシンボルマークをめぐる疑惑から森差別暴言まで次々と暴露された醜態。まさに呪われた五輪だ。

大阪では五輪の呪いに加えて、万博の呪い、都構想の呪いがコロナ対策を歪め、医療崩壊をもたらしてきた。インバウンド頼みの経済成長、開発主導の府政、トップダウン的行政の危うさに多くの人たちが気付いたはずだ。

今号が届くころには五輪中止が決まっている可能性もあるが、それを「人類にコロナが打ち勝った証」とするのではなく、「人類が五輪の呪いに打ち勝った証」にしていくべきだ。






関西共同行動ニュース No87