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日本を戦場にしないために 【参議院議員(会派・沖縄の風 )】 伊波洋一



 ハイサイ、皆様、会派「沖縄の風」参議院議員の伊波洋一です。10月に京都・円山野外音楽堂での沖縄報告で中北龍太郎弁護士から声をかけてもらい書いています。

 10月の沖縄報告でも取り上げたのですが、米国と中国の緊張関係が高まり、米軍の軍事演習や訓練が日本国内及びわが国周辺で頻繁に実施されるようになっています。

 2012年末に再登場した第2次安倍政権は20年9月で終わるまでの7年8ヵ月間、日米同盟を最重要視する方針のもと、日本をアメリカと共に戦争できる国にするために多くの仕組みをつくってきました。

 具体的には、13年12月には「国家安全保障会議(NSC)」を発足させ、特定秘密保護法を成立させました。14年7月にはアメリカと共同して戦争を取り組めるようにするために、日本国憲法が禁じてきた「集団的自衛権の行使」について密接な第3国への攻撃を理由に我が国が相手国を攻撃できるという「新武力行使3要件」を閣議決定しました。15年9月19日には「平和安全法制」の名で自衛隊が戦争をするための〝戦争法〟を整備し成立させました。「平和安全法制=戦争法」の成立で自衛隊はアメリカ軍とともに様々な戦争のための役割を担うことができるようになったのです。

 2013年には新防衛大綱で「南西地域の防衛態勢の強化、防衛力装備を優先する」という「南西シフト」を打ち出し、16年の自衛隊法改正で陸上自衛隊や航空自衛隊の大幅改編を実施し、16年から20年にかけて那覇空自基地へのF15中隊の追加配備、与那国島への陸自沿岸監視部隊の配備、奄美大島・宮古島への陸自ミサイル部隊・警備部隊の配備、佐世保・相浦での陸自水陸起動団を発足させました。すなわち、尖閣諸島問題で生じている日中対立を軍事的対処で備えるという危険な「南西シフト」です。

 このような日本国憲法第9条の「戦争放棄」の立場を百八十度転換させた安倍政権の軍事的対決姿勢に対して、かつて1981年に「ルック・イースト(東方政策)」で日本の勤勉や成長を学ぼうと提唱したマレーシアのマハティール首相は、日本政府が「戦争」を志向していることに対し、昨年19年5月のテレビ・インタビューで「戦争放棄を定めた日本の憲法9条について『変えるべきでない』」と訴えました。

 今の日本の対米追従ともいうべき日米同盟重視に不安を感じる東南アジア諸国首脳は、19年のマハティール首相だけではありません。安倍首相は「地球儀を俯瞰する外交」と称して80ヶ国以上、延べ回数で約180カ所、飛行距離にして地球を約40周しましたが、約50~60兆円の政府ODA援助と民間経済協力融資を日米同盟に協力的な国々に提示して回りました。どんなことをしていたのでしょうか。

 17年1月12日のフィリピン訪問では安倍首相はODA及び民間投資を含めて今後5年間に1兆円の支援をおこなうことを約束し、高速小型艇等や巡視船供与、人材育成、海自航空機にかかるパイロットの育成などに加え、米比共同訓練バリカタンへの自衛隊参加を表明しました。デュテルテ大統領は、巡視船や小型高速艇の供与,及び海自航空機TC‐90の貸与に感謝すると述べました。一方、1月15日の現地英字紙はデュテルテ大統領の発言として「第三次世界大戦をみたくないから、安倍首相からのミサイル供与の申し出を断った」と報じました。

 報道のもとになったのは安倍首相会談直後のダバオ市商工会議所の総会での挨拶でデュテルテ大統領が「安倍にも言ったんだ、私はミサイルを必要とはしていない」と述べ、「もし第三次世界大戦が始まれば、それはこの世の終わりを意味する」と述べたことです。安倍政権の安易な「戦争」志向が近隣首脳にどのように受け止められていたかがわかります。

 デュテルテ大統領は「安倍には軍事同盟は必要ではないと言った。私は外国の軍人がいない国を目指したい」とも述べています。いまや米軍駐留人数が約5万5千人と世界一多い日本が、さらに多くを駐留させようとするのとは真逆です。

 今年20年2月にはデュテルテ大統領は米国に「訪問軍地位協定(VFA)」破棄を通告し、3月には恒例の米比合同軍事演習「バリタカン」の中止を決めました。VFAが失効する8月直前に6ヵ月間の保留を明らかにしつつ、フィリピン軍が他国との合同演習に参加することを禁じました。デュテルテ政権は、南シナ海での米中対立に巻き込まれたくないことを発信し続けています。同様なことはインドネシア政府にもあり、米国の哨戒機P8の着陸と給油の許可要請をジョコ大統領が拒否しました。

 一方、安倍政権は日本近海のみならず、南シナ海に海上自衛隊艦船を派遣して米海軍との共同巡航訓練を実施しています。国内や米国内のみならず豪州での米軍との実働訓練も実施し、日米の訓練は年間に数十回に及んでいます。

 報道によると、新たに英海軍の最新空母「クイーン・エリザベス」が西太平洋に派遣され、日本に寄港して南西諸島や南シナ海を含めて長期的に活動するようです。防衛省・自衛隊内からは「中国包囲網の強化になる」との声も上がっているようですが、かつて米ソ冷戦の代理戦争が朝鮮半島を舞台に限定戦争として戦われ、今日まで休戦ラインとして残っているように、南西諸島を新たな米中冷戦の〝戦場〟にしようとする動きにしか見えません。安倍政権の7年8ヵ月は、日本を〝戦争をできる国〟にしただけでなく、自国内で〝戦
場〟を用意するところにまで至っているということでしょう。
 


 イギリスは、1982年にフォークランド紛争でアルゼンチンと約3ヵ月戦い勝利したが、両国の国交回復には8年を要した。約200人の住民しかいなかったフォークランド諸島と違い、石垣島5万人弱や宮古島5万5千人を含め、南西諸島には約150万人の国民が住んでいる。南西諸島での限定戦争は、台湾全土や日本全土を巻き込む戦争になるでしょう。

 一方、米国は、中国との全面戦争や核戦争を避けるために、中国領土や領海を攻撃しないことを様々な対中国戦略で明らかにしています。米国は、戦争が始まる前に横須賀の空母艦隊や横田や沖縄の米軍機を米軍家族と共にグアム以東の中国ミサイルの射程外に避難させます。日米の2005年合意では、「日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する。」とされており、米軍の関与は決まっていません。そのために、自衛隊は中国からのミサイルに対処するために自ら〝敵基地攻撃能力〟を備えようとしています。日米安保や日米同盟はなんのためにあるのかという疑問が自民党や自衛隊にも湧いてくるのは当然でしょう。

※詳しくは、https://youtu.be/5G8rPoDkTRY 及びhttps://bit.ly/36WuYD6 を参照してください。






関西共同行動ニュース No85