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「日本政府は、破綻した埋立工事の中止を決断し、サンゴとジュゴンの辺野古・大浦湾を保存せよ!」

【島ぐるみ八重瀬の会】 沖本裕司


■月曜日は「平和丸」に乗って

 私の1週間は、月曜日の抗議船「平和丸」乗船からスタートする。朝7時半、辺野古のテント2に集合。カヌーと抗議船に分かれて海に出る。ヘリ基地反対協の仲本興真さんと一緒に乗船し、カヌーチームのバックアップ、取材陣の案内などと共に、操船の経験も積んできた。40年前に取得した船長免許が役に立っている。カヌーチームは午前、午後、多い時には1日3回フロートを越え、身を挺して土砂投入に抗議する行動を行なう。

 オール沖縄会議は現在、県のコロナ感染拡大防止の緊急事態宣言を受けて、辺野古・安和・塩川・海上での多人数の現地行動を中止し、少人数による監視行動に切り替えている。地域での活動を紹介しながら、この間の辺野古の闘いを整理してみたい。


2020.6.15 辺野古・大浦輪での海上行動。K8護岸。ランプウェイ台船による赤土土砂陸揚げに抗議するカヌーにとびかかる海上保安官。


■翁長知事の誕生と共に始まった島ぐるみ

 八重瀬町は沖縄島南部に位置する人口3万人余りの自治体であり、以前から保守的な土地柄で、労組や市民運動は活発ではない。そこに、辺野古新基地反対を掲げる島ぐるみの会が生まれたのは、2014年11月県知事選挙での翁長雄志知事の誕生を契機としてであった。

 保革を越えた運動の大きな盛り上がりをバックに、約10万票の大差で当選した翁長さんは、辺野古新基地反対を公約の柱にしていた。知人の小学校の教員から聞いた話だが、子供たちが「先生、じゃあ、辺野古に基地は造らないことになったんだね」と言ったそうだ。日本の政治がまともなら、沖縄に民主主義があるなら、当然そうなっていただろう。しかし、日本の政治は子供たちの率直な気持ちを裏切った。

 辺野古埋立に関する第三者検討員会の報告を受けた翁長知事は、2015年10月、仲井真前知事の埋立承認を取り消した。以来5年近く、沖縄県と安倍政権との辺野古新基地建設をめぐる非妥協的な対立が続いてきた。県議会も知事と歩調を合わせてきた。全県各地に島ぐるみの組織が作られ、辺野古の現場と地域をむすんで活動した。この過程で誕生した島ぐるみ八重瀬も毎週、現地行動と地域でのスタンディングを継続している。

 毎週火曜日のスタンディングは足掛け5年、年末年始、祝祭日も休みなし。コロナの中でもマスクをつけ距離を保って続けた。「民意は示された。辺野古埋立工事を中止せよ」との横断幕をバックに、戦争体験者のサンシンと歌「艦砲の喰ぇ残さー」、参加者のリレースピーチを行なっている。昨年2月の県民投票は、全県で60万余の投票者のうち埋立反対が約72%であったが、八重瀬町の場合、反対票は74・8%を占めた。いわゆる保守地盤であろうと、辺野古新基地に関しては、絶対に反対。辺野古NO!は県民ぐるみの要求なのだ。


2020.8.12 琉球セメント安和桟橋ゲート前の監視行動。ゲート前は青信号で直進優先にも関わらず、赤土ダンプが突っ込んでくる。一触即発。


■沖縄におけるコロナ感染拡大が意味するもの

 沖縄のコロナ感染拡大が止まらない。8月15日現在で、感染者数は累計1500人を越えた。沖縄県は県の緊急事態宣言を8月29日まで延長した。GO TOトラベルによる7月の4連休の観光客の訪問拡大の後、県内の感染は爆発的に拡大し続けてきた。直近一週間の人口10万人当たりの感染者指数は、東京・福岡・大阪・愛知を上回りダントツの日本一だ。また、沖縄の米軍関係者の感染者は8月15日現在、累計335人となった。これも全国一だ。

 全国の米軍専用施設の70%が集中し、年間1000万人観光客が訪問する沖縄は、もともと感染拡大の素地がある所に、世界一感染が多い米国からの米兵の移動と米軍のずさんな検査・検疫および日本政府の旅行奨励によって、現在の爆発的な感染拡大がもたらされた。沖縄のコロナ感染は、最も矛盾が集中する日本の縮図だ。

 ところが、感染拡大防止に奔走する沖縄県を横目にして、菅官房長官は8月3日の会見で「宿泊施設の確保を何回も促してきた」と、あたかも沖縄県の怠慢であるかのような印象を与える会見を行って恥じない。菅には誠実さがない。8月8日付琉球新報で、佐藤優さんも「菅長官の印象操作」と指摘し「沖縄の困難への共感が欠如している」と批判した。全くその通りだ。


2020.6.17 琉球セメント安和桟橋。入口ゲートで、プラカードとノボリを掲げて、赤土土砂搬入に抗議。


■コロナ感染の裏で進む沖縄の軍事利用

 コロナ感染拡大の裏で、辺野古埋立工事と歩調を合わせ、宮古・石垣での自衛隊ミサイル基地建設と沖縄のさらなる軍事化への動きが進んでいる。河野防衛相は、尖閣の中国船舶への対応として「必要なら自衛隊が行動」と記者会見で述べた。中谷元防衛相や前原元外相などのグループは、米軍と自衛隊との基地の共同使用や沖縄に自衛隊の統合作戦司令部を置くなどと主張している。防衛省は8月7日、嘉手納基地、普天間基地、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、そして辺野古・大浦湾の埋立工事現場を含む米軍基地のドローン撮影の規制を発表した。基地の実態、工事の実情を覆い隠したいのだ。

 「帝国の南門」と位置づけ沖縄を軍事利用した天皇制軍国主義と同じように、日本政府は県民の意思を無視して、東アジアの軍事的緊張を激化させるだけの沖縄と「南西諸島」の軍事利用を進めている。


2020.7.21 島ぐるみ八重瀬の朝のスタンディング。


■2周忌を迎えた翁長知事の言葉の重み

 去る8月8日は、翁長知事の二周忌だった。知事選前に発行された『闘う民意』(角川書店)で、翁長知事は「埋立は完成しない。どこかで中断する。すると、辺野古の海にコンクリートの残骸が残されることになる。そうした事態は日米両政府にとっても我々にとっても、いわば敗北だ。工事に着工してはいけない」との趣旨を強く主張していた。その後の事態は翁長知事の言葉通りになってきている。

 沖縄防衛局は、これまで進めてきた埋立工事が破綻したため変更申請を提出したが、埋立の完成の目途は全く立っていない。最深90mにおよぶ軟弱地盤は大浦湾の埋立予定地の大半に及んでおり、専門家の調査によると、たとえ形の上でできたとしても震度1の地震で崩壊の危険があるという。震度1以上の地震は沖縄で年間6回以上起っている。何よりも無理な地盤改良工事を強行すれば、とてつもない環境破壊をもたらすことは明らかだ。政府は辺野古・大浦湾に執着するのをやめるべきだ。

■辺野古NO!の県民ぐるみの闘いは続く

 翁長知事の誕生と共に始まった県民ぐるみの沖縄と安倍政権との対決ははや6年になろうとしている。この間、県民は合法的な民主主義の方法を駆使し、知事選、衆参両院選、県民投票、現場の行動を通じて辺野古NO!の意思を明確に示してきた。県政は政府への要請、全国知事会への提起、米国および国連への訴えなど、自主的で独立した自治体の役割を最大限果たしてきた。

 「辺野古新基地反対!沖縄にはもうこれ以上新しい軍事基地はいらない!」というのは、ゆらぐことのない県民の総意である。県民の総意に支えられた知事の意思でもある。サンゴ移植をめぐる農水相の違法な指示に関して、県はまた国を相手取って9度目の裁判闘争に突入することになるだろう。沖縄は屈しない。間違いなく安倍政権の方が先に退場することになるだろう。次の政府は安倍政権の愚を決して繰り返してはならない。何度も何度も繰り返し示されている県民の意思に基づく以外、解決の道はないことを日本政府、国会議員、裁判官は理解すべきだ。

 今、コロナ感染拡大防止のため大規模な現地闘争は控えられている。その間、変更申請に反対する意見書を玉城知事に届ける運動を全県、全国で取り組み、抗議行動が再開される時には再び、全国で地域と現場をむすんだ力強い運動をつくり上げて行かなければならない。(2020年8月16日)

 防衛局の変更申請に反対する意見書を玉城知事に届けよう!

 抗議行動が再開されれば、再び各地から辺野古に集まろう!



2020.6.15 キャンプ・シュワブゲート前の座り込み。資材を積んだダンプが待機する中、警官隊の圧力に抗して最大限頑張る。



関西共同行動ニュース No84