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イージス・アショア配備 秋田県候補地からの報告
【連合秋田ユニオン】佐藤 毅



▼政府「新屋断念か」

20 年5月6日、NHK秋田ほか民報でも「陸上イージス・アショアの新屋配備を断念。新たな候補地を秋田県内で再選考する方向」政府関係者への取材で分かった。

佐竹知事は「政府から正式な連絡は何もない」「防衛省に問い合わせたがその事実はないという」「国防上の機密がべらべら漏れている。 ますます不信感がわく。当事者のわれわれに何も情報がないから困るんだよ」と不満を述べた。河野防衛大臣はこの報道を「フェイク・ニュースだ」と。

▼新屋勝平地区の位置

秋田市の西、県庁・市役所から3㎞、海と川に囲まれた所。昔、雄物川上流の穀倉地帯から久保田城下へ米を運び、土崎港からは北前船が持ち込んだ物資を上流の町々に運ぶ、新屋はその船着き場で栄えていた。雄物川の度重なる氾濫で秋田市市内は洪水の被害を被っていた。そこで雄物川改修工事が計画され山を切り開き、真っ直ぐ日本海に注ぐ全長2㎞に及ぶ放水路が完成した。現在、5500世帯、1万3千人が住む住宅地である。

▼いち早く反応した町内会

新屋勝平地区振興会は 16 町内会と各種団体で構成され、地域の振興に取り組み街づくりに大きく寄与してきた。商業高校までは1㎞内、小学校までは1㎞。 周辺は住宅地が所狭しと建っている。電磁波による健康被害はないか!有事の際ミサイルは落下しないか!テロ行為が発生するのではないか!など、 心配と不安が入り混じっていた。

▼学習会・講演会など開催

18 年1月、新年早々「秋田九条の会」が勝平コミセンで集会を開き地区住民が 40 人の参加。2月「イージス・アショアを考える会」が勝平コミセンで講演会 80 人が参加。他に、連合秋田が学習会、住民の会が「電磁波について学ぼう」が開催されている。

▼防衛省からの県への説明

18 年6月1日、自衛隊新屋演習場が適候補地であること、夏以降に調査を始めたいと伝えられた。「適候補地」と位置づけたことに対し、住宅地との近さを懸念し、 「環境としてどうなのか」と疑問を呈した。

▼住民説明会

説明会は4回開催されている。1回目は新屋演習場から半径3㎞以内にある町内会、小中高のPTAなど 68 団体に整理券が送られ、参加者は 47 団体の119人であった。

私は、「北朝鮮と新屋演習場を結んだ線上にはハワイがあり、むつみ演習場との線上にはグアムがあるが」の質問に、「あくまでも日本を守るものだ」と答弁。「あなたに小さい子どもがいるかどうかわかりませんが、もしいるとしたら、近くにミサイル基地のある学校に、安心して子どもを通わせられますか」との質問に、防衛省・五味課長は言葉を詰まらせ、「もちろん、ご心配になるのは当然です。住む地域に負の遺産になるようなものを残すということは、あってはならないと強く思っております」と。

3回目は8月 18 日~ 19 日、勝平地区住民を対象に開催され、 18 日260人、 19 日189人が参加した。4回目は「電磁波」に関する説明が主であったが、「電波の人体への影響は科学的に立証されていない」とか、「政府は電波防護指針に則り運用するであろうから、人体への影響はない」とか。



▼市長への要望書

18 年5月 18 日、振興会は市長に、 「イージス・アショア配備問題にかかわる要望書」 を提出した。地区住民が抱く疑問、不安等を具体的に列記し、今、米朝に和解の動きがあり情勢が変化してきている。戦争が勃発すれば地上イージス秋田基地は確実にミサイル攻撃の標的となる。核爆発が起きれば勝平地区だけでなく秋田市全域が廃墟となる。

▼臨時理事会で「反対」を決議

7月 25 日、この時点ではイージス・アショアについての詳細な報道はなく、国・県・市も態度を明らかにしていない。情報不足と態度保留の町内会も一部あったが、 「住宅密集地にイージス・アショアはいらない」と反対の決議をしている。その後、勝平振興会に呼応して豊岩地区振興会が賛同書を、柳町町内会(秋田市大町)が反対の決議を、保戸野金砂町東部会(秋田市)も反対の意見書を提出した。

▼現地調査結果

新屋演習場への配備に問題はないとした調査結果であった。防衛省は改めて知事・市長に「安全に配備・運用できる」との考えを示し、海側の県有地を取得して住宅から700mの緩衝地帯をとると発言。

▼代替地と仰角の間違い

防衛省は県や市の要請に応じて、他に青森、秋田、山形の国有地を調査しいずれも配備に適さないと報告した。9か所はミサイルを探知・追尾する際、 遮蔽物が周囲にあるため不適となっていた。しかし、仰角に大きな間違いが発見された。何故このようなデータが記載されたのか?

防衛省は「パソコン上で、距離と高さの縮尺が異なる断面図を印刷し、定規で測って角度を求めた。縮尺の違いに気づかなかった」と説明している。

▼丁寧な説明、地元の理解

開催予定日の6月8日は地域の鹿島祭りの前日で各町内会役員は鹿島船の作成で参加できない旨防衛省に伝え、日程の調整を申し出たが、一顧だにされず開催された。

説明会は冒頭から進行に意見、「不十分なものを訂正表一枚出して進めるやり方は、丁寧に説明するという考えに反しているのではないか」と。振興会会長は「何故ここなのか。説明を受けただけで納得できるものではない。ずさんな調査は重大な問題だ。一から出直してほしい」と。 「あなた方にとっては、どこか遠い国の出来事みたいな感じかもしれないが、われわれは毎日、ここに住んでいる。あなた方全員、勝平に引っ越してきてください。」 「どれだけ時間をかけて作ったかわからない資料だが、ミスがあった。どれだけ信用すればいいんですか」 「後ろの席のあなた、 居眠りしていましたね。何を考えているんだ。われわれは人生が懸かっているぞ」と。この居眠り映像が全国に流れ、新屋勝平地区住民の思いが広がっていった。更に、取材がひっきりなしに入り、それが活字や映像となって更に全国に広がっていった。



▼参議院選挙から流れが変わった

19 年参院選挙は事実上自民党現職と新人共闘候補との一騎打ちであった。共闘候補は「県民は新屋の人々の不安や不満に寄り添わなければならない」と、イージス・アショア配備反対を訴えた。選挙戦終盤、自民党候補の応援に安倍、菅、その他大勢が応援演説に来たが、これが悪かった。2万票の大差で新人が勝利した。

19 年 10 月 27 日に「県民署名スタートの会」が発足、僅か3カ月、冬の季節、4万2千筆を超える反対署名が集約された。

20 年2月、自民党秋田県連会長が河野防衛大臣に「新屋には無理がある」との要望書を、知事・市長も河野大臣に新屋反対の姿勢で会談を申し入れる。秋田市2月議会において、これまで継続審査としてきた大会派の保守秋水会が配備反対へ動き出し、3月6日本会議ですべての請願・陳情が採択された。しかし、県議会はあくまで防衛省の再調査の結果を待って結論を出すとのこと。

▼再調査結果はどうなるか

ゼロベースで秋田、青森、山形の国有地が再調査されているが、当初3月目途は天候不良で調査出来ず、河野防衛大臣は現地を見て判断すると言ったがコロナで来秋できず5月末まで延期されている。そうした中で「新屋断念」のニュースが流れたのだった。




関西共同行動ニュース No83