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日本製鋼所は艦載砲の米国輸出をやめろ! ~「死の商人国家」にさせない動きをともに~ 杉原浩司  【武器取引反対ネットワーク[NAJAT]代表】


2019年末、重大な武器輸出案件が発覚した。鋼材と機械のトップメーカーとされる日本製鋼所が生産する艦載砲の米国輸出である。勝股秀通(元読売新聞防衛担当記者)が月刊誌『Wedge』2020年1月号の連載コラムで明らかにした。
それによれば、「英国の大手防衛装備品メーカー」(注:BAEシステムズと思われる)の関連会社(米国)からライセンスを得て生産している5インチ砲の構成品で、米海軍のイージス艦などに搭載するためだという。実現すれば、2014年4月1日に安倍政権が「武器輸出三原則を撤廃し「防衛装備移転三原則」を策定して以降、本格的な武器輸出の初ケースとなる。しかも、年明け1月中には輸出商戦の結果が出るというのだ。
 日本製鋼所は原子炉容器の世界トップシェアを誇っていたことでも有名だが、元々1907年に艦載砲や榴弾砲など兵器の国産化を目的に誕生した「国策貢献企業」である。同社特機本部の中西清和副本部長は「将来的には、米国から複数の友好国への輸出も見込まれ、装備移転が増加する道も開ける」と述べており、武器輸出に弾みがつくことが懸念される。NAJAT(武器取引反対ネットワーク)は1月14日に東京・大崎にある本社への抗議行動を行った。 



■進行する武器輸出案件

 安倍政権が原発輸出とともに「成長戦略」の柱の一つに位置付けた武器輸出は、5年以上経っても実績はほぼゼロに留まっている。フィリピンに中古の海上自衛隊練習機TC90を無償譲渡したくらいで、完成品の輸出は難航中だ。
 一方で、確実に進展しているのは武器の共同開発だ。武器輸出解禁の直後に認可された三菱電機が参加する戦闘機用新型ミサイルの日英共同開発は、2023年度にも英国で実射試験を行い、2020年代後半にも、F35などの戦闘機に配備予定だと報じられている。F35は日本が147機も購入予定だが、米国やイスラエルを含む多くの国が導入しており、新型ミサイルが戦争犯罪で使用されることが危惧される。これに対しては有効な取り組みができておらず、今後の重要な課題となっている。
 武器輸出に話を戻すと、冒頭で紹介した新たな案件以外にも、進行中の動きが複数存在している。一つは、川崎重工製の軍用輸送機C2のUAE(アラブ首長国連邦)への輸出だ。UAEはサウジラビア主導の連合軍に参加して、イエメンへの無差別空爆を行っている。国連人権理事会の専門家グループは、2019年9月3日に公表したイエメン内戦に関する報告書で、米英仏など第三国による内戦当事者への「合法性の疑わしい」継続的な武器輸出が、「紛争と人々の苦難を長引かせている」と厳しく批判した。紛争当事国UAEへのC2輸出は、まさしく戦争犯罪への加担であり許されない。
 今までのところ、C2は整地されていない地面での運用能力を持たないため、輸出商戦では苦戦していると言われている。ただ、防衛装備庁は2018年、2019年と続けてUAEのドバイ航空ショーにC2の実機を出展し、デモフライトまで実施している。断念に追い込むための更なる働きかけが求められている。
 さらに、喫緊の課題は、三菱電機製の防空レーダーのフィリピンへの輸出の動きだ。最初は軍事政権下のタイへの輸出を目論んだものの、2018年にスペイン企業に敗北。懲りずに対象国を変えて働きかけを行っている。この結果も遠くないうちに判明すると見られるが、この間、報道は一切ないままだ。フィリピンも国内の武装勢力に対する「掃討作戦」などが国際人道法の観点などから問題視されており、武器輸出などあってはならない。また、戦闘機用ミサイルの日英共同開発への加担も含め、武器輸出へ前のめる三菱電機に対する抗議も強めなければならないだろう。
 加えて、やはり水面下で進行しているのが、F35を大量購入するための原資に充てるとして、近代化改修できない旧型のF15を米国に輸出するという構想だ。米国は日本から輸入したF35を東南アジアなどに輸出することも検討しているという(2018年12月24日、日経)。これは米国を通じた迂回輸出に他ならない。これまた情報が表に出てこないが、確実に進展していることは間違いないだろう。日本初の公然たる戦闘機輸出の前例をつくらせるわけにはいかない。



■軍産複合体との対決を

 最後に、11月に幕張メッセで開催された日本初の総合武器見本市「DSEI Japan」の展示から見えた武器輸出の動きにふれておこう。国内軍需最大手の三菱重工は、開発中の装輪装甲車「ミツビシ・アーマード・ビークル」の現物を初展示した。地雷を踏んでも壊れず、乗員を守る衝撃軽減シートを搭載。「開発ノウハウの蓄積のために自主開発した」としているようだが、輸出や海外派兵もにらんでいるのと思われる。また、ドローンの離着陸がパネルでの遠隔操作で可能となる監視システムも展示。こちらは沿岸警備用に東南アジアへの輸出を見据えているという。
 DSEI Japanでは、日本企業が軍事を前面に出すことをためらう一方で、海外勢の日本市場開拓への貪欲さが露わになった。イスラエルの軍需大手「ラファエル」は最新ミサイル「スパイク」や、ドローンを無力化する「ドローンドーム」などを展示し、「(性能は)戦場で実証済み」と誇ってみせた。既に日本の警察がドローンドームの導入を決めたとの報道もある。
 DSEI Japanに対しては、410人がダイ・インや人間の鎖で抗議した。2021年5月には幕張での再開催も予告されている。武器見本市への反対運動を発展させるとともに、米国はじめ、イスラエルや英国などの軍産複合体による日本への武器売り込みや共同開発の動きに抗する取り組みも強化していきたい。



武器見本市に抗議して会場前でダイ・イン

(撮影 金浦蜜鷹さん)




関西共同行動ニュース No82