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あいちトリエンナーレの 再開を!  【表現の不自由展実行委員会】 小倉利丸

名古屋県美術館など愛知県各地のアート関連施設などで開催されている「あいちトリエンナーレ 2019 」( 会期は 10 月 14 日まで ) に出展されている 「表現の不自由展・その後」が、たった3日で中止されてしまった。今回の展示では、日本の戦争の加害や戦争責任回避の姿勢への問いかけや、象徴天皇制のステレオタイプな神格化への懐疑を表現するなどが、どれほど多く検閲にあっているかを如実に示す展示になっている。現在の日本の表現の自由がいかに不自由なものでしかないかを改めて鑑賞する人々に問い、議論のきっかけを作ることが目的でもあった。今回はトリエンナーレ全体で億単位の予算が組まれる国際展ということもあって注目を集めたが、全国各地の自治体で相次いでいる自治体による市民の表現の自由への干渉、検閲、露骨な弾圧をもたらしている力学と共通して全国的に繰り返されていることであって、歴史認識と天皇制が現在の日本が抱えている構造的な表現弾圧の核心をなしていると思う。



中止の経緯は多くのメディアでも報じられているので、ここではその詳細は省略する。一言でいえば、トリエンナーレ側が右翼による抗議や脅迫に屈した、ということである。報道では、抗議・脅迫の苛烈さが強調されている。抗議・脅迫は愛知県の様々な施設にも拡大していったという。その実態がどうだったのかはわからないが、こうした広がりもまた展示中止の理由として利用された。しかし、こうした抗議・脅迫はやや誇張されて報じられてもいる。展示会場は連日満員で多くの来場者がありながら静穏な状態で、右翼の来訪があっても、ほとんど騒動と呼べるようなことは起きなかった。また、トリエンナーレ事務局 ( メイン会場となった愛知芸術文化センターにある ) にも直接来て抗議や脅迫を行う者もいなかった。街宣車が、全国から押し寄せて会場周辺が騒然となるといったこともなかった。また、私たち実行委員会への抗議・脅迫も目立ったものはなく、 ウエッブ、公表しているメール、ツィッターなども「炎上」することなく現在も正常に稼動している。もっぱら電話、ファックス、メールでの抗議・脅迫に終始したのが特徴だ。不自由展実行委員会は半年をかけて展示準備をし、警備についてもトリエンナーレ側とかなり前から協議し、少なくとも、私たちが直接管理できる展示空間やネット環境では、混乱が起きていない。こうした状況をみると、展示中止の判断はあまりにも早計だといえた。

展示中止を後押ししたのは、トリエンナーレ実行委員会の会長代行、河村名古屋市長が記者会見や市の公式ウエッブで「平和の少女像」と「遠近を抱えてPartⅡ」を名指しで批判したり、菅官房長官や松井大阪市長も批判を公言するなどがあるなかで、かなり強い政治的な圧力がトリエンナーレ実行委員会 ( 会長は大村愛知県知事 ) にかけられたのではないかと推測できる。結果として、トリエンナーレ事務局や愛知県の組織全体が、抗議や脅迫への対処を怠り、あるいはこれを口実として、「表現の不自由展・その後」の展示継続を忌避しようとしたのではないか。

展示中止に対して、トリエンナーレに出展している海外のアーティストたちの反応は早かった。韓国から招待された作家たちをはじめラテンアメリカからの招待作家など 12 名がボイコットを表明して、展示を中止した。この他大半の作家たちが抗議声明に名前を連ねた。展示中止によって、「不自由展・その後」の会場入口は高さ3メートルほどもある巨大な壁で閉鎖されている。この入口にあたる場所は、出展作家たちの提案でメッセージを残すことができるようになっており、壁面はメッセージで埋めつくされている。その他出展作家たちによる創意工夫の抗議の意思表示も様々に行なわれてきている。署名運動も複数あり、ネット署名は1ヶ月で2万7000を集めるまでになっている。

愛知県内では、「表現の不自由展・その後の再開をもとめる愛知県民の会」が結成され、毎日朝10 時から1時間、トリエンナーレメイン会場の芸術文化センター前でスタンディングが行なわれている。再開の要請書を県内団体を中心に181団体の連名で提出したり、質問状を提出、集会やデモなどの行動も行われてきている。この原稿を書いている 18 日現在では、 22 日に集会とデモの予定が告知されている。愛知県は、今回の事態を踏まえて外部の識者による「検証委員会」を設置し、現在まで二回の会議が公開で開催されている。

当事者へのインタビューなどを実施しているが、展示に批判的と思われる委員や慎重な委員が多数を占めていると思われ、内容に踏み込むと検閲とみなされかねないことから、抗議・脅迫電話などを「テロ」と誇張して「安全・安心」のリスク管理などを口実に展示中止を容認するような報告書がまとめられる危険性を感じている。 また、県は、二度にわたる公開フォーラムの開催を県民の意見聴取の場と位置づけているが、右翼側がこうした場を利用して、歴史修正主義や天皇の神格化を正当化する舞台になる可能性もあり、これを県側が展示中止の理由のひとつに利用することも危惧される。

不自由展・その後実行委員会は、二つのことに取り組んでいる。ひとつは、展示再開の仮処分申立てで、すでに審尋の期日なども決まり、展覧会会期中に裁判所の判断が出されると思われる。もうひとつは、〈壁を橋に〉プロジェクトである。プロジェクトは裁判とともに、9月 15 日に名古屋、17 日に東京で集会を開くなど、多くの市民やアーティストたちとともに表現の自由を闘いとる活動を今後展開してゆく。

あいちトリエンナーレは 10 月中旬まで開催されている。「不自由展・その後」の会場も、展示そのものは原状維持されており、いつでも再開できる状態にある。右翼の抗議・脅迫をはねかえして表現の自由を闘い、再開することはまだ十分可能なのです。是非「再開を!」の声をあげていただくようお願いします。


※【〈壁を橋に〉プロジェクト支援カンパのお願い】

中止発表以降の不自由展の保全活動を含む、再開のための様々な活動と、仮処分申し立てに関する費用がかなりかかります。全員東京在住のため新幹線だけでもすでに相当な金額になっています。
趣旨をご理解いただき、どうかご支援のほどよろしくお願いします。

●口座名「表現の不自由展実行委員会」

●郵便振替:10140‐9‐4898811

●ゆうちょ銀行 店番018 普通9489881

問合せ: info@fujiyu.net
ブログ: http://fujiyu.net/fujiyu/



関西共同行動ニュース No81