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■関西共同行動 連続講演会 第7回(11月9日) 要旨
安保法制制定後の自衛隊、日米安保の現在
お話し 【明治大学特任教授】 纐纈 厚



中北龍太郎さんがあいさつで、「自衛隊は専守防衛から脱皮を遂げつつある」と指摘し、第4次アーミテージ・ナイレポートに言及。それを受けて纐纈さんは、「自衛隊は米国の第五軍(陸海空海兵の次)になった」と述べた。以下、その講演要旨です。(文責 齋藤郁夫)

 今米軍は、アジア地域では有事の時のみ紛争地域に出動展開する戦略(オフショアー)に転換し、韓国軍・自衛隊は米軍の代替軍として位置づけられている。自衛隊には、武器もPAC3、軽空母(いずも等)、F35、離島防衛と称し水陸両用戦車、陸上イージスなどの外征系の武器が装備されつつある。この自衛隊を憲法九条に明記することは、このような自衛隊を憲法として認めること。それは新軍部の成立へと向かうだろう。

陸自の再編の一例としての陸上総隊。これは、現在の五方面隊の上位部隊として海外展開できる部隊を編成することであり、それは旧軍の参謀本部に当たる。今、若手幹部自衛官はイージスやオスプレー、F35関係の軍事技術を学ぶため、米国ネバダで訓練している。米国の“雇い兵”になっており、意識は“尊米隷属”だ。自衛隊は頭でっかちで、その変貌は明らかだ。

自衛隊の前身は七万五〇〇〇人の警察予備隊、朝鮮戦争時の極東特別予備隊と呼称される植民地軍だ。日本にとっては文字どおり「押しつけられた軍隊」だ。ここから戦後の再軍備が始まる。自衛隊は国民との乖離が埋まらず、組織拡充に伴い、国民ではなく国家・政府・米国に従属する偏狭な自立志向が醸成された。現在、自衛隊規模は二四万人、年間予算は五兆三〇〇〇億円、軍人恩給を加えると六兆三〇〇〇億円だ。ドイツやイタリアでは軍人組合があり、軍を監視する第三者機関がある。ドイツ軍やイタリア軍は冷戦後は縮小したが、自衛隊はそうなっていない。今なぜ、自衛隊の軍縮は話題にならないのか。中国は脅威なのか。そうではない。

 欧米や中ロのような、議会統制・党権力統制ではない日本型文民統制では、軍事と民主の上下関係で下克上が起きている(河野統幕長発言)。国民の中には自衛隊への期待感(災害出動)と不安感(戦争巻き込まれ論)との複雑な感情が交錯している。旧軍は天皇の命令のみに従う存在と自己規定し、政党や議会の介入を排除した。戦後の文民統制は、首相が最高指揮官であるという形式になり、戦前と同様に政党や国会の介入を排除する傾向が露骨化している。戦前の日本の統帥権独立制度が軍部の政治化を促したように、文民統制が自衛隊制服組の軍事化を誘引している。

自衛隊の暴走を止めるには、誰から何をどのようにして守るのか、なぜ守るのかという問題を論ずる過程で文民統制を俎上にあげるべきだ。文民統制は、自衛隊の最高指揮官(文民)に直接統制されることを担保した制度であり、その間に存在する防衛官僚(文官)への従属は、文民統制の主旨に反するという論理が顕在化している。文民を広く捉え、国会が統制することで、民主主義を破壊する可能性の高い実力組織を常時統制する、つまり民主統制・文民優越の論理の再検証と再確認が必要だ。



関西共同行動ニュース No79