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「安保法制」後の横須賀
イージス艦事故の背後に、過酷なミサイル防衛任務

【非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団】 新倉裕史


■相次ぐイージス艦の事故


18年4月4日の朝日新聞は、海上自衛隊の補給艦が、昨年5月から 12月にかけて、日本海でミサイル防衛任務につく米海軍のイージス艦に対して、17回、約5530キロリットルの燃料を補給したと報じた。 15年に成立した「安保関連法」のひとつ、改正自衛隊法百条の6を使っての新任務だ。「米艦防護」と同様、原則非公開、国会の承認も必要としない問題の任務だ。


日本海に張り付いている米海軍のイージス艦の多くが横須賀母港だ。この横須賀母港のイージス艦の事故が、昨年相次いだ。母港 11隻のうち6隻が事故を起こすという異常事態だった。

① 17年1月 31日「アンティータム」横須賀基地沖で浅瀬に座礁。

② 6月8日、「シャイロー」乗組員行方不明事故。1週間後、機関室に隠れていた兵士発見。

③ 6月 17日、「フィッツジェラルド」伊豆半島沖でコンテナ船と衝突。乗組員7名死亡。

④ 8月1日、「ステザム」で再び乗組員行方不明事故。

⑤ 8月 21日、「ジョン・S・マケイン」シンガポール沖でタンカーと衝突。乗組員 10名死亡。

⑥ 11月 18日、相模湾で曳航訓練中の「ベンフォールド」が民間のタグボートと接触事故。

事故は人的ミスが原因と米軍の発表があり、艦長等が解任された。衝突事故に関連し太平洋艦隊司令官が退役。第7艦隊司令官、第 70任務部隊司令官、第 15駆逐隊司令官も更迭、解任された。

過酷な任務と訓練不足

初歩的なミスの連続はなぜ起きたのか。 17年9月8日の時事通信は、第7艦隊所属の衝突事故が相次いだことに関して、米議会付属の政府監査院(GAO)高官が下院軍事委員会で行った証言を、次のように伝えた。

「7日、横須賀を母港とする第7艦隊所属艦の衝突事故が相次いだことについて (監査院高官が)下院軍事委員会で証言し、同艦隊の乗組員の4割近くが定期訓練を受けていなかったと明らかにした。任務が増える中で人員が減ったため、十分な訓練時間を確保できなかったとみられる。過度な負担や訓練不足が事故につながった可能性がある。監査院高官と並んで軍事委に出席したモラン海軍作戦副部長も、「任務の要求は増え続けている」と述べ、艦船や人員削減が派遣期間の長期化や訓練不足、艦船のメンテナンス不足につながっていると説明」


■増えた任務の正体

17年9月 15日の各紙は、海上自衛隊補給艦が、ミサイル防衛任務の米イージス艦へ洋上補給していたと報じた。

「政府関係者によると、海自補給艦「ましゅう」(舞鶴基地所属)などが日本海でミサイル警戒にあたる海自のイージス艦に補給した際などに、周辺の海域に展開中の米軍のイージス艦にも給油したという。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すことから、日米の艦艇は日本海に常時展開し、警戒を続けている。海自側から補給を受けることで、米艦が警戒中の海域を補給のために離れる必要がなくなる利点がある」(朝日、 17・9・ 15)

横須賀母港のイージス艦が弾道ミサイル防衛任務のため、日本海で定点活動を続けていることは、これまでも報じられてきたが、今回の報道によって、それが 24時間態勢(神奈川、 17・9・ 15)で行われていることが明らかになった。

横須賀母港艦船の多くは空母随伴艦として、当初は空母の護衛が主任務だった。 88年から始まった巡航ミサイル・トマホーク搭載によって、対地攻撃が新たな任務に加わった。新たな対地攻撃能力は、 湾岸戦争、 イラク戦争で存分に発揮された。二つの戦争は、横須賀のイージス艦がトマホークを発射する先制攻撃によって開始された。

そしてさらに、迎撃ミサイルの搭載とイージスシステムの進化により、「弾道ミサイル防衛」任務が加わり、今、 24時間態勢で日本海に展開する。横須賀を母港とするイージス艦の増えた任務の正体がこれだ。


■対地攻撃のミサイル

94年の「朝鮮半島危機」当時、巡航ミサイルを使った寧辺(核施設)破壊の計画があったことを、当時米国防長官だったペリー氏が証言している(朝日、 17・ 11・ 16)。
94年当時も、そして 18年の現在も、横須賀を母港とするイージス艦こそが、その任務を果たしうる存在として、 24時間態勢で日本海にはり付いている。

17年6月 25日、リムピースのウエブサイト「追跡!在日米軍」は、衝突事故を起こしたイージス艦「フィッツジェラルド」から、対地攻撃用巡航ミサイル・トマホークが降ろされたという記事を掲載した。トマホークは、横須賀基地で応急修理をするために「フィッツジェラルド」から降ろされた。ミサイル防衛任務のイージス艦「フィッツジェラルド」は、対地攻撃ミサイルを積んで横須賀基地を出港していたのだ。横須賀のイージス艦が、今すぐ北朝鮮を先制攻撃をするとは思わないが、この町のイージス艦が本来持っている軍事的な役割を、忘れてはならないだろう。

●関連パンフレットの紹介

▼「柳澤恊二さんが一番危険と指摘していた自衛隊法 95条の2の武器等防護」

▼「なぜ横須賀のイージス艦の事故が連続するのか」
―各二百円。ご注文はFAX 046-825-0157




関西共同行動ニュース No77