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6/3目取真俊さん講演会より 辺野古新基地建設阻止に向けて ~現状と課題

報告:齋藤郁夫(関西共同行動)




〔安倍首相の九条改憲提言で、いよいよ真価が問われることになった「止めよう改憲!大阪ネットワーク」の第一〇回年次総会が六月三日に開かれ、続いて目取真俊さんの講演が開かれた。私の耳には目取真さんの口調が速すぎて、半分も聞き取れなかった。そのことを口実に、報告がやや主観的になることご容赦いただきたい。


私は目取真さんのことを、沖縄の芥川賞作家だということ以外はほとんど知らなかったので、作品を一つ読んでから講演を聞くことにして、芥川賞受賞作の『水滴』を初め何冊かの著作の中から『眼の奥の森』を選んだ。初版第一刷は二〇〇九年五月の長編の作品だ。この作品は、敗戦直後(八月一五日以後かどうか?)の離島で起きた米兵によるレイプ事件をめぐる島の人々の対応の違いや心の動きを描いている。過去と現在が複雑に絡み合いながら物語は進行していく。事件当時若者であった者たちが三、四〇十年後に生まれ故郷の島に帰ってきて、回想する中で問題が深まっていく。読後、理不尽なもの(それは強者だけではなくそれと妥協し自らを庇う者も含め)への目取真さんの強い怒りを感じた。人々は弱さや矛盾の中で生きているが、それが何かを契機に表に噴き出る。目取真さんは、それを沖縄のことばを使った独特のタッチで捉えている。私にはそのように思えた。


講演を聞いた後の感想は、読後に感じたこととそれほど離れてはいなかった。


目取真さんは、辺野古の海上での闘いのDVDを上映しながら話をした。―齋藤〕


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現在、辺野古の海は埋め立てに向け工事が続いている。翁長知事による埋め立て承認の取り消しを国が訴え、「不作為の違憲確認訴訟」を起し勝訴したので、翁長さんが埋め立て承認の取り消し処分を撤回したことで、昨年十二月末から工事が再開されたからだ。

埋め立てられようとしている大浦湾は海生動物 の宝庫で、新種もたくさん発見されている。つまり、ここにしか住んでいない生物が多い。現在は、外からキャンプ・シュワブの敷地を通って工事現場に工事資材が運び込まれている。四十五トンの重さのコンクリートブロックがダンプで運び込まれ、クレーンで海底に沈められている。我々は、カヌーで接近しながら、危険を冒してビデ撮影している(動画をビデオ撮影している人に対し「許可なく映像を外部に流さないでほしい」と注意)。キャンプ・シュワブの中に生コンをつくる設備ができれば、さらに工事は速くなるだろう。もともとは、砂浜に鉄板を敷いてなぎさ道を作ってから本格埋め立て工事をやるといわれていたが、基地側の岸からクレーンで網に入った石材を海に沈め傾斜堤護岸がつくられ、少しずつ海に向かって伸びている。政府は、この海域で珊瑚の占める部分は五%だから、支障はないのだと勝手に言っている。映像を見ると、網を下ろすとき砂煙が舞う。砕石の時にできた小粒の砂を水で流さずに海に沈めるから、きれいな大浦湾の海水がたちまち汚染される。陸上のゲート前から資材が運び込まれるのを見るのはつらい。止めたいが止めきれない。


海のブイは以前のものより大きくなって、一つひとつが頑丈なロープで結びつけられている。ところが自然の力はすごいもので、波は絶え間なく振動しているので、ブイも絶えず振動している。そうすると、ロープを結んでいる金具が切れる。だから防衛局の職員はカヌーに乗りながら、切れたところを補修していく。切れては直し切れては直し・・気の遠くなるようなことが続いている。このムダな作業は我々の税金でやられている。一通り直すのに二週間ぐらいかかる。その間は作業できない。我々のカヌーも中に入っていける。


最近ポセイドンという大型調査船がやってきた。海底ボーリング調査は二〇一四年に済んでいる。工事作業は、海底調査してから設計をするのが本来の手順だが、大浦湾は予想以上に海底が複雑で、ボーリングしても下まで届かないところとか海底洞窟、断層もあるようだ。沖縄の海底は琉球石灰岩だ。ポセイドンはそのことを調べているように思える。

大浦湾、特に長島周辺の海域は貴重生物が多い。 大浦湾の浜はウミガメの産卵場でもある。 政府は、岩礁破砕をやっているが、彼らで勝手に基準をつくり、サンゴも一メートル以上でないならいい、珊瑚の密集率が二〇%以下ならいいというように。貴重かどうかは大きさではない。岩礁破砕には県知事の許可が必要だ。会場を海保のボートが走り回ると、ジュゴン・ウミガメその他貴重な海生動物に悪影響を及ぼす。




海上の闘争でカヌーを操るのは少し難しい。でもあらかじめ基本訓練をして、救命胴衣を付けてやる。抵抗したら、簡単に逮捕される。(激しい海上の闘いの動画が流れる)カヌーから引きずり下ろされ、沖合で解放される。死にはしないが、ある程度の訓練が必要だ。キャンプ・シュワブゲート前では、座り込む人が多く(三〇〇人ぐらい)なると、向こう側は何もできない。機動隊には抵抗しなくていい。警察はごぼう抜きするだけで多くのエネルギーをさかれるから、その分、工事が遅れる。それが非暴力抵抗の目的だ。


しかし、工事が先に進めば進むほど元に戻すのが難しくなる。国は先手先手を打ってきている。漁業権の買い取りもそのひとつだ(もっとも、漁協の漁業権放棄と岩礁破砕は関係ない ) 。 知事は訴訟に持ち込み、撤回を考えているようだが、裁判に期待するのは危ない。知事の埋めたて処分撤回しかない!二十年間も闘っていると、あきらめるのではないけど、ついあきらめムードも顔をのぞかせたりする。これが現実だ。年に一回でも二回でもいいから、現場に来て共に闘ってほしい。これからも知事を下から支えて闘っていく。


(県民投票についての質問に)実施するとすれば準備に半年はかかるし、来年は名護市長選・県知事選があるから無理だと思う。




関西共同行動ニュース No75