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「共謀罪」法案を廃案へ!政府の言うことは嘘だらけである

【参議院議員】 福島みずほ


共謀罪」法案が、4月6日審議入りした。この「共謀罪」は、過去3回提出され、3回共みんなの力で廃案になっている。小泉総理ですら、採決をさせなかったのである。「現代の治安維持法を成立させた人と言われたくないなあ」と言ったと伝えられている。
06年6月、当時の杉浦法務大臣が、「国対(国会対策委員会)から指示が出て、採決しないことになりました」と記者会見している。その「共謀罪」法案が、ゾンビのように復活した。何としても廃案に追い込もう!

【1】 テロ等準備罪は看板に偽りあり

政府は「共謀」を処罰する「共謀罪」なのに、「テロ等準備罪」と言いだした。そして安倍総理は、「この法律を成立させないと東京オリンピック・パラリンピックを開くことができない」とまで言った。これは全くの嘘である。
根拠となっている条約は、「組織犯罪防止条約」である。しかし、この条約は、テロ対策のものではない。00年イタリアのシチリア島のパレルモで調印された。そのため「パレルモ条約」と一般的に言われている。
なぜ「パレルモ」なのか。予算委員会で、岸田外務大臣に質問をしたが、大臣の答弁は「知りません」だった。この「組織犯罪防止条約」は、マフィア対策のものであり、マフィアなどの越境犯罪、国境を超えた犯罪を取り締まるものである。だから「パレルモ」なのである。
条約には、「金銭的利益その他の物質的利益」の取得を目的とした重要な犯罪と規定されている。しかし、政府の「共謀罪」法案には、この「利益を得る目的」など全く入っていない。「パレルモ条約」は01年9月11日事件以前に調印されたものなので、そもそもこの条約はテロ対策ではないのである。
それが証拠に、政府が閣議決定する直前に当初与党に示した法案には、一切「テロ」という言葉は入っていなかった。「テロ対策など嘘だ!」「テロ等準備罪など看板に偽りだ!」と野党は批判しました。その通り。法務省は、「パレルモ条約」と内容が合わなくなるので、「テロ」を条文に入れることはできなかったのである。
「テロ対策なんて嘘」という批判がこたえたのか、政府は急遽、閣議決定した法案に「テロ」という言葉を入れ「テロ等準備罪」としました。しかし、法案の1条の目的には「テロ」の文言はない。そして「テロリズム」の定義もない。この法案はテロ対策ではないのである。
「テロ等準備罪」のテロ「等」とは何か?と質問主意書で質問をしましたが、政府の答弁は、「テロ犯罪以外の組織犯罪」というものでした。テロ犯罪とテロ犯罪以外の犯罪になるのだから、これでは全部になるのではないか。
安倍総理は、「ハイジャック犯人がチケットを購入してもハイジャック法の予備罪が成立しないので、共謀罪を成立させる必要がある」と言い、政府は、そのことを紙にして、与党に配りました。しかし、法務省は、70年に国会で、「ハイジャック犯人がチケットを購入した場合、予備罪が成立する」と断言している。すでにこのケースでは「予備罪が成立する」と答弁しているのに、今、「共謀罪」法案を成立させるために、「予備罪が成立しないので、共謀罪が必要だ」と言っているのである。
デタラメもいい加減にしてもらいたい。ことの「予備」が罪にならないのに、その「共謀」が罪になるわけがない!

【2】 共謀罪は、刑法を壊す



犯罪は、「共謀」、「予備」、「未遂」、「既遂」と進行をする。犯罪が成立するためには、原則として、犯罪が「既遂」になる必要がある。「未遂」、「予備」は極めて例外的である。
刑法の中にある「予備罪」は7つしかない。殺人予備、強盗予備、放火予備、内乱予備、外患予備、私戦予備などである。極めて例外的なのである。特別刑法をいれても犯罪の対象は37しかない。それがなぜ277もの対象が「共謀罪」になるのだろうか。
まだ何も法益侵害は発生していない。まだ誰も傷つけていないにもかかわらず、この「共謀罪」により、あまりに早い段階で犯罪が成立してしまうことになる。
また、「共謀」、「計画」の段階では、犯罪要件がまだはっきりしていない。「あんなのいなくなればいいのに」「やっつけちゃえ!」なんて話をすることが、どこまでが本気で、どこまでが願望で、どこまでが冗談なのか。大阪弁護士会が作ったポスターに「「あいつしばいたろか」「いてもうたろうか」という何気ない大阪弁でも犯罪に?」というものがある。
その通り。人は、とんでもないことを考えたり口にしたりする。でも、どんなに不謹慎なことを考えても、いやらしいことを考えてもそれは自由である。発言も名誉毀損やヘイトスピーチではない限り自由であるはずだ。人が思い、人がコミュニケーションを持つことをなぜ犯罪の対象とするのか。
そして、「共謀罪」が成立すると、捜査の方法が一変する。今までは、法益侵害が発生し、被害届けなどが出され、死体が発見されて、捜査が開始された。しかし、「共謀罪」が成立したら、「何か共謀しているのではないか」という観点から、捜査が始まる。
金田法務大臣は、「ラインや一斉送信メールも対象になりうる」と答弁。「ラインもできない共謀罪」「メールもできない共謀罪」である。「共謀罪については、盗聴も可能かどうか検討する」というのが、これまた金田法務大臣の答弁です。
そもそも「共謀」をラインやメール上でやっていてそのことがどうしてわかるのか。これは盗聴をするしかない。将来、警察が屋内盗聴も可能とする社会になるのではないか。すさまじい監視社会になる。
また、「共謀罪」は早く既遂になる。逃れるには警察への自首しかない。自首すれば刑が減免される。これでは密告社会となり、隅々にスパイが送り込まれることにもなりかねない。

【3】 誰だって対象になりうる

組織犯罪集団に限定はない。組合も市民団体も「共謀」をして「共謀罪」が成立した可能性があると考えられれば、その段階で組織犯罪集団となる。

【4】 沖縄から見た共謀罪



沖縄の高江・辺野古新基地建設反対のリーダーである山城博治さんへの3つ目の被疑事実は、16年1月の辺野古のゲート前にブロックを積んだということである。これが威力業務妨害罪とされ、11月に逮捕勾留となり、12月に起訴された。
「共謀罪」が成立したら、ブロックを積もうと話し合い、下見でもしたら、それで、組織的威力業務妨害罪が成立する。トラックの前で、座り込みをしようと話し合い、第3者を誘うなどしたら、これまた組織的威力業務妨害罪が成立し得る。また、組織的逮捕監禁罪、組織的強要罪、建造物損壊罪などの罪状でこれまでの組合活動も狙われるのではないだろうか。
京都のXバンドレーダー基地をマイクロバスで出かけたら、白バス行為で捜索が入った。関東では、埼玉の人たちが、福島原発に行き、ガソリン代などを折半した行為が、白タク行為とされ、逮捕された。山城さんのことで言えば、なぜ1年近く過ぎての威力業務妨害罪で逮捕だったのか。とにかく立件できそうなことを探していたのではないだろうか。
「共謀罪」の適用範囲は広範囲にわたり、また「計画」なので、摘発対象なのかどうかがはっきりしない。逆にそのことは、広範囲であるがゆえに法に引っ掛けて、一網打尽に捜査し得るということでもある。そうなれば捜査されるだけでも大打撃となる。

【5】 何をするか

安倍政権は、なぜ今、「共謀罪」の強行なのか。「秘密保護法」、「戦争法」、「盗聴法」の拡充の次に、「共謀罪」を成立させ、声をあげる人々を弾圧し、声をあげられないようにし、戦争のできる社会にするためである。憲法改悪はその総仕上げである。
わたしたちは、声のあげられる自由な社会にすみたい。とにかく声を上げ、みんなの力で、廃案にしていこう。
安倍内閣と「共謀罪」を共に葬っていこう!



関西共同行動ニュース No74