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『安倍改憲と日本会議の正体』

【関西共同行動】 齋藤郁夫


とめよう改憲!大阪ネットワーク主催で一一月二六日、『安倍改憲と日本会議の正体』と題する青木理さん(フリージャーナリスト)のインタビュー形式の講演があった。前段の話『安倍三代』は興味深かったが割愛し、テーマに関する部分を紹介します。

■ 安倍政権に対する日本会議の関与

日本会議に関する本が今年たくさん出て、日本会議に入りたいという人が増えたという。日本会議は会員三万八千人、支部づくりや地方議員の組織化を懸命にやっている。地方議員は一七〇〇人、支部は三〇〇ぐらいあるという。決して小さい組織ではないが、それほど影響力があるとは思えない。せめて、九条の会ぐらいになりたいというのが、彼らの希望だ。

日本会議そのものより、むしろ神社本庁・神政連(神社政治連盟)が影響力を持っている。神政連は一〇万から二〇万票を持っているといわれる。山谷えり子が推薦議員だ。日本会議国会議員懇談会には二八一人が参加しているが、名簿を出さない。民進党議員も少数だが入っている。谷垣、岸田、野田聖子なども入っているので、一色ではない。今は安倍政権なので、日本会議は元気になっているといえる。日本会議の実質上のキーパーソンは椛島有三(日本会議事務総長)だ。彼にインタビューしたら、以前は阻止や反対活動(女性天皇、夫婦別姓、戦後五〇年談話、天皇訪中などについて)ばかりだったが、安倍政権になって政策提言ができるようになったという。

■ 改憲に向けての日本会議のスタンス

日本会議の琴線に触れる問題は、皇室尊崇・憲法改正・国防充実・愛国心教育・伝統的家族観の五点だ。でも彼らが選択的別姓にどうして反対なのか理解できない。かれらの出版物でみると、ソ連は伝統的家族の解体から始まったので、選択的でも別姓を認めるとやがて社会が共産化すると危惧しているようだ。長谷川三千子などは、夫婦別姓を認めると、女のわがままを許すことになり、女のこらえ性がなくなるからだという。意味が分からない。

日本会議は改憲を共通の目標にしてできた団体で、現在が戦後最大の改憲チャンスと考え、地方にキャラバン隊を派遣している。地方議員を動かし、地方議会で意見書を採択し、その数の多さで国会議員を動かすという戦術だ。国民投票に向け、一〇〇〇万人署名運動をやっている。神社でもやっているが、大きな有名神社ならともかく、財政難をかかえている地方の神社ではいやがられている。

改憲といっても、現憲法の破棄と明治憲法への復帰・その後の改憲、自主憲法制定、現憲法の改憲というように、日本会議の中にも違いがある。本気でやろうとすると簡単ではない。共同通信の世論調査では、憲法改正賛成が六〇%だが、同時に、安倍政権下での改憲には反対が六〇%だという。

■ 日本会議の宗教心はどの程度か

日本会議の源流は生長の家だ。これは新興宗教だが、悩み相談などで伸びてきた出版宗教の走りだ。戦前戦争賛美で伸びてきた。一九六〇年代に全共闘運動に対抗したこの教団の学生会員が卒業後日本青年協議会をつくった。椛島有三、安東巌、高橋史郎、百地章などの面々。また日本政策研究センターの伊藤哲夫。彼らは表に出たがらない。彼らが生長の家という宗教関係者だと分かると、それがダメージになるからだろう。でも、彼らが日本会議を牛耳っているのは間違いない。しかし、本家の生長の家は脱政治宣言をして現在は、エコロジー運動に重点を移している。三代目で完全に方針転換した。

日本会議の生長の家系のメンバーは、ある種宗教心で献身的に活動しているのだろう。資金はない。資金力や動員力は神社本庁や他の宗教団体が受けもっている。村上正邦(元自民党参議院議員会長、生長の家)によると、日本会議は、宗教右派の統一戦線だという。



■安倍政権のマスコミへの介入

さすがに政権による直接の介入はないだろうが、でも間接的には確実に起きている。メール・抗議ファックス・電話・ツイッターの数がものすごいし、しつこい。スポンサーまで届く場合もある。みんなかつかつで仕事をしているので、これらの抗議に応えるとなると大変だから、先に自粛してしまう。番組や記事が良かったら、良かったと言って応援してほしい。

■安倍政権はなぜ支持率が高いのか

安倍政権は時期も運もよかったうえに、安倍自身も勘がいいし、要領もいいところもある。第一次安倍内閣は一年でつぶれた。安倍は、官僚につぶされたと言ったそうだ。今は官僚をうまく使っている面もある。支持率は五〇%少しで、低くはない。でも、世論調査で最も多いのは、【他に適当な人がいないから】が30%だ。代わる者がいないのが大きな理由だ。だから積極的支持ではない。安倍本は売れないというのが通説だ。本人にはあまり興味が無いのではないだろうか。憲法改正をどの時点で発議するのか。党内でも温度差があるし、公明党との違いもある。日本会議とのすりあわせはできるのか。極右に担がれた政権で、いとも簡単に長期政権になったが、でも強いとは言えない。

■ヘイトクライム・その他に関して

公に在特会などのヘイトクライムを支持はしないだろう。自称右翼でない日本会議には、反米とか日米関係見直しという考えはない。右派の人に聞いたら、右派の中でまとまるのは、昔は反共だったが今は反朝日新聞ぐらいだと言っていた。

■私たちへの提言はないか

最近石破元防衛相と同席をしたとき、南スーダンで自衛隊が死んだら政権は持たない、と彼は言っていた。私はそうは思わない。戦死者が出たら、死を無駄にするな、もっと武器を持たせろという風潮が強くなるのではないか。安倍はトランプにあったことを宣伝している。だからむしろ、五輪でもテロが起きる可能性がある。そうすると本質的な論議に向かわずに、テロに屈するな、治安強化をという雰囲気が強くなりがちだ。それをどう防ぐかが重要だ。





関西共同行動ニュース No73