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裁判上の和解であって、国と沖縄の真の和解ではない 辺野古埋め立て工事中断から断念への闘いへ
【衆議院議員】 照屋寛徳


 辺野古新基地建設に関連し、国と沖縄県が代執行訴訟で和解した、とのビッグニュースに接したのは、米軍キャンプ・シュワブゲート前の座り込み闘争現場であった。

 その日(3月4日)はウチナーの「さんしんの日」。シュワブゲート前では、連日にわたる警視庁機動隊の凶暴な暴力行為や沖縄県警による不当弾圧・規制・逮捕等に抗って「非暴力抵抗闘争」が展開されている。その仲間たちが、ゲート前に集い、さんしんの大合奏会をやる、と聞き及び、私も激励に駆け付けていた。

2016.03.05 毎日


 さんしん(三線)は琉球舞踊と並び、ウチナーを代表する古典芸能の一つであり、琉球王朝いらいの「非武の文化」「非武による外交・安全保障」の象徴でもある。

 「さんしんの日」の正午の時報を合図に、琉球放送(RBC)ラジオの電波に乗って、「かぎやで風」節の大合奏が流れた。神奈川、福岡のヤマト社会、移民の多いハワイやブラジルでも、県人会有志らを中心にさんしんの調べを奏でた。

 シュワブゲート前では37人の仲間たちがさんしんを爪弾き、アンマー(母親)たちが舞った。実に感動的であった。

 3月4日で607日目を迎えた座り込み闘争現場では、機動隊に蹴散らせられながらも歌、さんしん、踊りでもって互いを鼓舞し、不屈に闘い続けている。だからウチナーの闘いは強い、くじけない。勝つまで諦めないのだ。

 私が、国と沖縄県の電撃和解の報せを受けたのは、辺野古の名物オバー島袋文子さんと並んでパイプ椅子に腰掛け、さんしんと舞を楽しんでいる時だった。

 名護市在住の70代の女性がスマホを差し出し「代執行裁判の和解が成立したらしい」と告げた。驚いて、スマホでネットニュースを確認すると、本当だ!

 ちょうど激励挨拶を頼まれたところだったので、集まっていた約300人の市民に「皆さんの闘いが、国をして和解に応ぜざるを得ない状況に追い込んだ。一定の成果を得て闘いは前進したが、まだまだ道半ばだ。工事中断ではなく、断念に追い込むまで創造的な闘いを続けよう!」と呼びかけた。

 ネット社会である。その頃には、現場に結集した多くの市民がすでにニュースに触れ、歓喜のカチャーシーを踊り、互いに涙して抱擁し、ゲートに向かって拳を突き上げていた。

 ゲート前闘争を指揮・指導してきた山城博治さんも涙を流して喜んでいる。無理もない。2度も不当逮捕され、昨年4月には悪性リンパ腫で現場を離れての療養を余儀なくされた。

 激励挨拶を終え、博治さんに握手を求めると、いきなり抱きついてきた。彼なりの、精いっぱいの連帯表現だろうと直感し、しばし二人で抱き合った。

 翌3月5日の地元二紙は、代執行訴訟関連の和解をめぐる記事でてんこ盛り、見出しも圧巻だ。「辺野古訴訟和解」「工事を中止 再協議へ」「首相、移設先を変更せず」「県主張沿い『勝訴』」「和解 国は譲歩演出」「根本的解決見えず」「代執行訴訟 国幹部は『不戦敗』」(沖縄タイムス)
 
 「新基地工事中断」「代執行訴訟 県と国、和解成立」「訴訟全て取り下げ」「知事『信念持ち阻止』」「首相『辺野古が唯一』」「国、敗訴を回避」「県、阻止へ攻勢」(琉球新報)

 地元二紙の大見出し、小見出しを一読するだけで、今回の和解に至る国の思惑、和解の内容、意義などが理解できよう。

以下、国と県の間で成立した和解条項の内容を記す。

 1.国は代執行訴訟、行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申し立てを取り下げ、埋め立て工事を直ちに中止する。

 2.国は県に対し地方自治法245条7の是正の指示を出し、県は不服があれば1週間以内に国地方係争処理委員会へ審査を申し出る。

 3.係争委の審査の結果、訴訟になれば、国と県は確定した判決に従う。

 4.国と県は判決が確定するまでの間、円満解決に向け、協議する――。

 成立した和解の受け止め方は、様々あるだろう。3月5日付沖縄タイムスの記者解説には「裁判での県側の主張に沿った形の和解で、県首脳は『事実上の勝訴』と宣言し、政府幹部は『不戦敗』と認めた」と記してある。私の弁護士的感覚からすると、沖縄県にとって「勝訴的和解」だと思慮する。

 私には「勝訴的和解」と考える根拠がある。実は、去る1月29日の代執行訴訟第3回口頭弁論において、裁判所は原・被告双方に和解案を提示し、和解を勧告していた。だが、裁判所の意向で詳細は公表されず、代理人弁護士も厳に口止めされていた。

 和解成立によって、裁判所の和解勧告全容が判明した。私は和解勧告全文を精読して、沖縄県の「勝訴的和解」を確信するとともに、国は敗訴による影響を回避するために渋々和解に応じたな、と直感した。
 
 裁判所の和解勧告文は冒頭、「国と地方公共団体が対等・協力の関係となることかが期待された平成11
年地方自治法の精神にも反する」旨を述べ、国が沖縄県を訴えたことを暗に批判している。そのうえで、「仮に本件訴訟で国が勝ったとしても、さらに今後、埋立承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要となったりすることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性があり、それらでも勝ち続ける保証はない。むしろ、後者については、知事の広範な裁量が認められて敗訴するリスクは高い」と鋭く指摘する。

 稲嶺名護市長、翁長沖縄県知事は、一貫してあらゆる行政上の権限を行使して辺野古新基地建設を阻止する、と公言している。

 裁判所も和解勧告文で指摘するように、国が次々に裁判闘争を仕掛け、訴訟合戦を続けても、ウチナーの民意に支えられた稲嶺名護市長、翁長県知事の決意が揺るがない限り、辺野古新基地建設は実現不可能である。

 安倍総理は、和解を受託した後も「辺野古移設が唯一の解決策だ」と寝ぼけたことを言っている。沖縄への差別と犠牲の強要に奔走する独裁者・安倍総理は、ウチナーとウチナーンチュは、そのうち屈服するとでも思っているのだろう。どっこい、そうはいかないぞ。

 辺野古・大浦湾海上、キャンプ・シュワブゲート前での「非暴力抵抗闘争」は一層強まり、これまで以上に創造的発展を遂げていくだろう。名護市長と沖縄県知事の「行政抵抗」も同時並行で続く。
 
 今度の代執行訴訟和解成立は、裁判としては沖縄県の「勝訴的和解」であり、広く辺野古新基地建設反対闘争としてはウチナーの「暫定的勝利」である。

 私たちは、和解による埋め立て工事「中断」にとどまらず、新基地建設「断念」に追い込むまで日米両政府の権力者らを相手に闘っていこう。

 そのためにも、ウチナーとウチナーンチュの闘いに、同情ではなく真の自立する連帯を!今すぐに。

(3月7日)

2016.03.05 毎日



関西共同行動ニュース No71