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【巻頭言】戦争法―辺野古基地建設― 憲法改悪を全力で阻止しよう! 中北龍太郎

■ 安倍演説と第3次ガイドライン

 安倍首相は4月29日、歴代首相としてはじめて米議会上下両院合同会議で演説をしました。日米同盟の強化、辺野古基地建設、T P P の早期妥結等の日本売り渡しのご褒美が合同会議演説の機会だったのです。演説の中で「安保法制をこの夏までに必ず実現する」と約束しました。法案を国会に提案すらしていない段階でその成立をアメリカに約束するのですから、国会軽視もはなはだしく、対米従属極まれりというしかありません。

 45分間の演説における最後の締めくくりは、「希望の同盟― 。一緒でなら、きっとできます。」というものでした。「希望の同盟」、実に美しい言葉です。果たして日米同盟はそんなに美しいものでしょうか? 安倍は以前、日米同盟を「血の同盟」にしなければならないと書いていました。「血の同盟」とは、一緒に血を流して戦争をする軍事同盟ということです。何のことはない、血生臭い軍事同盟の強化が「希望の同盟」の美名で飾り立てられているだけのことです。「一緒でなら、きっとできます。」というのは、ありていに言えば、日米両国が一緒に戦争すればうまくいくというようにしか聞こえません。

 この演説の2日前の27日、日米両政府は第3次日米防衛協力指針( ガイドライン)をまとめています。第3次ガイドラインは、まさに日米同盟を「血の同盟」にせんとするものです。そのキィーワードは、グローバル化とシームレス化です。日米両軍が、世界のどこででも、切れ目なく一緒に戦争するということです。切れ目なくとは、平時と戦時に切れ目をつくらないこと、言いかえれば、普段からいつでも戦える戦争国家にしようというものです。また、米軍と自衛隊との間に切れ目をなくす、つまり日米軍事一体化をより強固にするということです。そうなると、自衛隊は、米軍の指揮の下で米軍の1 部隊として活動するということになります。しかも、いかなる状況でも米軍を支援する態勢を整えなければならないという課題まで押し付けられることになりました。

 昨年7月1日の閣議決定に続く第3次ガイドライン合意によって、専守防衛の原則は捨て去られ、日本は集団的自衛権行使などアメリカとともに戦争を仕掛ける国へ大転換を遂げることになりました。安倍首相が米議会演説で何度も強調していたように、その旗印が積極的平和主義です。

 平和のために積極的に武力を行使するというこの積極的平和主義は、武力によらない平和を核心とする憲法9条を根底から否定するもので、憲法9条とはその精神・指針が真逆です。安倍の唱える積極的平和主義によれば、戦争をすればするほど世界は平和になるということになってしまいます。つまるところその本質は積極的戦争主義にほかならず、平和の美名で戦争に突き進む危険極まりない旗印です。

■ 戦争法案

 5月15日安倍政権は、戦争法案を国会に提案しました。8月ころまで会期を延長して、2法案を一括して強行採決しようと企てています。「切れ目のない対応」の名のもと、これまで禁じられてきた海外での軍事活動を幅広く解禁し、自衛隊の活動範囲を大幅に拡大させる内容になっています。例えば― ① 日本に武力攻撃が発生していない「重要影響事態」(日本の平和と安全に重要な影響を与える事態)、「国際平和共同対処事態」(国際社会の平和と安全を脅かす事態)における、危険な「戦闘地域」での米軍をはじめ他国軍に対する武器・弾薬の提供や輸送。②「存立危機事態」(日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)における集団的自衛権の行使。その中には、ペルシャ湾ホルムズ海峡における石油確保のための機雷掃海も含まれます。アメリカが先制攻撃の戦争を起こし、相手国から攻撃を受けた場合にも集団的自衛権の行使が容認されます。③ 国際平和活動の一環として、治安維持活動、駆け付け警護ができるようになっています。④ 任務遂行のための武器使用も認められています。

 こんな戦争法が成立すると、自衛隊が、米軍の戦争支援のためにいつでも地球上のどこにでも派兵され、戦闘活動を行い、武力行使に踏みこむ危険が飛躍的に高まることになります。イスラム国との地上戦、南シナ海での中国との紛争への介入やアフガニスタンにおけるタリバン政権との戦闘への参加、こうした参戦の現実が一気に近づいてくるでしょう。

 しかも, 戦争法には歯止めがないどころか、積極的平和主義の旗印のもと、どんどん拡大解釈されるようになることは必至です。戦後70年一度も戦争をしてこなかった日本はいま、安倍首相の血塗られた手で、他の国の人びとを殺し殺される戦争の道を突き進もうとしているのです。



■ 辺野古基地建設

 第3次ガイドラインや安倍演説の中にも辺野古基地建設が盛り込まれています。辺野古基地は日米共同戦争の巨大軍事拠点であり、戦争する国づくりのうえでなくてはならない要と位置づけられています。そのために、その建設が、対米公約・国策として,沖縄県民の基地反対の民意を踏みにじって強行されているのです。基地が完成すれば、辺野古基地は真っ先に軍事攻撃の対象として狙われ、沖縄は再び戦争の最前線に立たされることになります。

 沖縄は52年のサンフランシスコ講和条約によって日本独立後も米軍占領下におかれ、銃剣とブルドーザーで米軍基地がつくられていきました。72年の復帰後も対米従属の安保体制によって、沖縄に米軍基地が集中しました。沖縄に基地を集中させればいいというハレンチな政策によって成り立つ安保体制のもとで、沖縄は様ざまな重大な基地被害を被り、戦争の危機に直面し続けてきました。そればかりか、辺野古基地建設によって、基地集中の構造的沖縄差別は永久化されようとしているのです。


52年 単独講和阻止を闘う学生デモ


■ 憲法改悪

 安倍首相は、戦争法制定に続いて、来年7月の参院選後にも憲法を改悪せんと画策しています。自民党がつくった日本国憲法改正草案には、全面的な集団的自衛権の行使、海外派兵、徴兵制につながる国民の国防義務、戦時に内閣に立法権限を与え、政令で人権の制限をできるようにする緊急事態条項などが盛込まれています。この改憲案の狙いは、戦争する国づくりの完成にあります。

 安倍政権は、軍国主義と戦争の反省に立って生まれた平和・人権・民主主義を原理とする憲法を根こそぎ破壊し、その廃墟の上に、国民を国家のために命を投げ出させる憲法をつくろうとしているのです。自民党改憲案は、平和、自由・人権のために政府を縛る最高規範が憲法だという近代立憲主義から完全に逸脱しています。自民党改憲案は全く憲法という名に値しません。

 改憲は、安倍首相の唱える戦後レジームからの脱却のための最大の課題と位置づけられています。この戦後レジームからの脱却とは、戦前レジームへの回帰にほかなりません。

■ 私たちの闘い

 戦争法の制定をなんとしてもとめましょう。戦争法をとめれば、7・1閣議決定も第3次ガイドラインも実行できず、戦争する国づくりは立ち往生することになります。全力で戦争法を阻止しましょう。

 辺野古基地建設に反対する島ぐるみ、オール沖縄の闘いは、東アジアの軍事緊張を解き、憲法9条を実現する橋頭保であり、平和運動の中の平和運動です。今年は、基地の島沖縄を変えるのか、それとも強権によって反対運動がつぶされるのか、まさに決定的な年になっています。本土での沖縄反基地運動への支援・連帯が問われています。今こそ、支援・連帯行動に全力投入しましょう。

 改憲の国民投票を実施すれば反対が賛成を上回るという世論・状況をつくりだせば、安倍政権は改憲を断念せざるを得なくなります。改憲阻止に全力を尽くしましょう。

 ともに、安倍首相の戦争法― 辺野古基地建設― 憲法改悪の暴走をとめ、武力によらない平和のアジアをめざしましょう。



関西共同行動ニュース No68