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【巻頭言】 安倍政権の戦争への暴走をとめよう! 中北龍太郎

■はじめに

 安倍政権は2015年、衆院選でアベノミクスと消費増税延期を最大争点に押し上げて奪取した議席をフルに悪用して、「戦後レジームからの脱却」という名の下、憲法に基礎をおく戦後平和・民主主義を破壊し、戦争する国づくりを強行せんとしています。まず、戦争しない国から戦争する国への決定的な大転換を狙った集団的自衛権行使容認の閣議決定を法律化する(安保法制)準備が、第3次ガイドラインづくりと同時並行で、統一地方選後の国会上程に向けて着々と進められています。安保法制の制定に続いて、16年7月の参院選で改憲国民投票を同時に実施する企みなど、猛スピードで改憲暴風が押し寄せてくる危険も強まっています。沖縄では、集団的自衛権行使の軍事拠点としての辺野古新基地が、沖縄の民意や自己決定権を踏みにじって力づくで建設されようとしています。まさに県民と民主主義に対する暴虐です。憲法破壊や沖縄の軍事要塞化と同時進行で、敗戦後70年の今年安倍政権は、植民地支配と侵略を認めた村山談話や日本軍「慰安婦」問題で軍の関与と強制性を認めた河野談話を骨抜きにする新談話の発表など、歴史偽造の動きを強めています。憲法破壊と歴史偽造は「戦後レジームからの脱却」の2大支柱であり、戦争への道を敷きつめる最悪の組み合わせです。戦争への道を断固として阻止しましょう!本号では、沖縄基地問題と歴史認識問題は他の執筆者に委ね、憲法破壊と憲法改悪の動きを中心に提起します。

■第3次ガイドライン

 14年末までと合意されていた第3次日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の最終報告は、安保法制の国会上程が統一地方選後に先送りされたため、その内容と調整する必要があるとされ今春まで先延ばしされました。昨年10月に発表された中間報告の最大の特徴は、日米軍事協力の範囲を世界規模に広げ、世界のあらゆる地域で米国の戦争に日本が加担できるようになっている点です。日米同盟の範囲拡大は、地理的拡大だけでなく、平時から戦時まで切れ目のない軍事協力、武力行使との一体化禁止原則や後方支援は非戦闘地域に限るとの歯止めの撤廃、武器弾薬の提供、発進準備中の米戦闘機への給油など際限なく広がっています。武器使用の範囲も拡大されています。最終報告が、米国と肩を並べて武力を行使し、他国との戦闘に突き進む危険を飛躍的に高める内容になることは必至です。

 米ソ冷戦が激化していた78年につくられた第1次ガイドラインでは、対ソ戦のための極東有事における日米軍事協力がうたわれました。冷戦後の97年の第2次ガイドラインは、アメリカのアジア・太平洋地域における攻撃的な軍事戦略にもとづいて、周辺事態における日米共同作戦に踏みこみました。第3次ガイドラインのキィーポイントは、地球規模の日米軍事協力と集団的自衛権の行使です。

 こうした日米同盟の大転換は、13年10月の日米安全保障協議委員会2+2(米側国務長官・国防長官+日本側外相・防衛相)の合意文書「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」において決定済みのいわば既定方針でした。そこでは、第3次ガイドラインの策定、辺野古新基地建設が唯一の解決策、国家安全保障会議の設置、集団的自衛権の行使など、この合意後具体化されていった諸政策がすべて盛り込まれていました。

 いうまでもなく,日米安保条約が定める日米軍事協力は、日本国の施政の下での日米いずれか一方に対する武力攻撃があった場合に限られており、日本国外における共同軍事行動は認めていません。ガイドラインの定める軍事協力の地理的範囲は、明らかに安保条約を逸脱しており、条約に足場がありません。条約改正無き安保の実質改定という法治国家ではありえない国会無視の異常事態が,日本の政治の日常風景なのです。そして、ガイドラインが更新されるごとにその異常性がどんどんエスカレートしています。

 まさに、密室において米国主導のもとでつくられた2+2合意やガイドラインが、日米安保体制の実質的な中身を決定し、日本の国のあり方を根本のところで支配しているのです。こうして、日本の対米属国化は極限まで進んでいます。国内およびアジアに対しては敗戦を否認するがゆえに自らを支えてくれる米国に対しては盲従を続ける「永続敗戦」の構造(白井聡)からの脱却こそが求められています。



■安保法制の動向

 安倍首相は、切れ目のない安全保障法制を整えていく責任を果たしたいと言明しています。法制の中身は4つの分類に従って検討が進められています。主な内容をいくつか挙げると…①自衛隊が武力を使うケース―他国の戦争状態でも、政府が国の存立を脅かす事態(存立事態)が生じたと判断すれば武力行使できるようにする。②「グレーゾーン事態」への対応―現段階では不明。③参戦している米軍などに対する後方支援―多国籍軍の一翼として戦闘現場近くで兵たんを担う。④国際貢献活動―自衛隊の武器使用基準を緩めて、派遣地域や活動内容を拡大。

 四類型とは別に、自衛隊派兵の恒久法、自衛隊法の武器防護の規定を米軍の防護に転用することなども検討されています。どれをとっても、自衛隊が他国の人びとと戦火を交え殺し殺されるようになるのは必至です。

■明文改憲の動向

 明文改憲の動きもひたひたと進んでいます。昨年6月改憲手続法(国民投票法)改定案が可決成立しました。最低投票率の規定がなく、国民投票運動を不当に制限している改憲手続法の根本的な欠陥の改正を棚上げしたまま、投票年齢だけを引き下げています。この改定には衆参両院で議員の9割超が賛成しており、船田自民党憲法改正推進本部長は「憲法改正の土俵づくりができた」と高く評価しています。

 安倍首相の長年にわたる靖国・反東京裁判史観などの「政策的ブレーン」である日本会議の提唱で、すでに24府県議会で「憲法改正の早期実現を求める」意見書や請願が採択されています。昨年10月には、日本会議が中心となって「16年7月に実施される予定の参議院選挙で憲法改正国民投票の実現と、過半数の賛成による憲法改正の成立をめざす」ことを目的とした「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が結成されました。このように、草の根右翼の改憲策動が次第に強まっています。

 こうした動きに呼応するかのように、第3次安倍内閣発足後安倍首相は、「憲法改正は歴史的なチャレンジだ」などと改憲策動を加速する発言をくり返し、衆参両院で改憲勢力が3分の2を確保することと、国民投票での過半数支持獲得に向けて国民の理解を深める努力を進めると述べています。具体的手法として、安倍政権は、改憲を容認する7党で改憲の作業チームを立ち上げ、参院選までに国会発議の改憲案をまとめることや、緊急事態条項の新設などから始めて段階的に本丸である9条を攻め落とすことなどを検討しています。

 安保法制の制定は、解釈改憲をギリギリまで推し進めて、憲法9条は現実に合わなくなったとしてその力をそいだうえで、明文改憲に攻め込むための陰謀でもあることも無視できません。



■私たちの闘い

 私たちは非常に厳しい情勢の真っただ中に立たされています。しかし、諦めたら敗北しかありません。持続する抵抗が勝利の鍵です。悪政が極まれば極まるほど、抵抗の輪がきっと引き戻せるギリギリのところで大きく広がると確信しています。私たちの平和の訴えは市民多数と確実に共鳴しているからです。安倍の政策のほとんどは市民の意見と大きく乖離しています。選挙政治は確実に民意とかけ離れたシステムに堕しているのです。私たちの直接民主主義による政治参加が真価を発揮することが、平和保障の根源的な力です。安倍は「国民投票によって否決されたら一巻の終わりになる」と語っています。国民投票すれば負けだと安倍に思わせる空気を、私たちの実践でともに創っていきましょう!







関西共同行動ニュース No67