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「もう動かすな原発!福井県民署名」へ向けて 【大飯原発差止訴訟原告団長、原発反対福井県民会議代表幹事】中嶌哲演

めざましい、骨太い、福井地裁の「判決」
5月2日、福井地方裁判所は、大飯原発から二五〇キロメートル国内に住む原告一六六名の請求に応じ、被告の関西電力に対して、「大飯原発3、4号機の原子炉を運転してはならない」という判決を言い渡した(ただし、二五〇キロメートル圏外の原告23名の請求は棄却。)。
福島原発震災以後、初めての判決主文で、「二五〇キロメートル圏内」を明言した意義は限りなく大きい。判決理由の冒頭、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼ」したフクシマやチェルノブイリの過酷な現実を、樋口裁判長たちが深く、真摯に認識していたことが、以下の判決理由からも明らかである。「原子力委員会委員長が…住民に避難を勧告する可能性を検討した…二五〇キロメートルという数字は緊急時に想定された数字にしかすぎないが、だからといってこの数宇が直ちに過大であると判断することはできないというべきである」と。つまり、大飯原発だけでなく、国内の全原発に波及する司法からの重大な警告である。
原発の再稼働・延命ありきで、せいぜい30キロメートル圏内の住民の防災・避難計画が云々されている現状の空しさを喝破していよう。
「…そもそも大電力消費圏による過疎地域への原発群の押し付けという差別的な構造を温存したまま、原発の再稼働や延命を容認することはもはや許されない」という「福井から原発を止める裁判の会」の原告団声明の一節は、上記の骨太い司法判噺と照応し合うものではなかろうか。

「福井から原発を止める裁判の会」の
原告団声明
少なくとも「大飯原発3・4号機運転差止請求事件判決要旨」(15ページ)のすばらしい全文を精読していただくことを期待しつつ、ちなみに前記の原告団声明を以下にかかげておきたい。
「…同判決は、原発の『必要神話』や『安全神話』の理不尽な復活と『フクシマ』の意図的な風化に対する『頂門の一針』であり、司法の面目をほどこした英断である。また、世界一の原発密集地帯の福井県において、その地元裁判所によって言い渡された本判決の意義ははかりしれない。とくに、『本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国士とそこに根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である』という本判決の指摘は、高い倫理性を表明していて感動的である。
『フクシマ』がまざまざと実証しているように、未来世代にまで及ぶ『人格権』と『環境権』を侵害し、『健康で文化的な最低限度の生活』(憲法25条)や『生命・自由・幸福』(同23条)を奪い尽くす原発が本質的に違法的な存在であることを、わたしたち原告は訴え続けてきた。
さらに、累計50万人をこえた被曝労働者の存在、使用済み核燃料・『死の灰』の増加と後世代へのツケ回し、わが地震列島の動乱期にともなう『第二・第三のフクシマ』連発の可能性などを無視し、そもそも大電力消費圏による過疎地域への原発群の押し付けという差別的な構造を温存したまま、原発の再稼働や延命を容認することはもはや許されない。原発の海外輸出にたいする倫理的責任も問われている。
ほとんど失われていた司法への信頼に大光明を点じた本判決に励まされ、喜びを分かち合いながら、『住民・地方自治と国民主権』(憲法の眼目)の本領を取り戻して、立法や行政に強力にはたきかけるとともに、地元の原発関連の雇用や経済を転換し、真に安全安心な自然環境と生活が保障される『原発ゼロ社会』を、国内外の広範な市民と連帯しつつめざしていきたい。」

福井県下17市町で、西川知事に「再稼働反対」を迫る署名のとりくみ
また、脱原発弁護団全国連絡会は、この判決をうけて次のような『行動提起』をおこなっている。
「①この判決を支持し、関西電力に判決に従うことを求め、もし関西電力が控訴するならば、全力で控訴審を当弁護団と共に闘い、この判決を守り抜く。
②原子力規制委員会に対して、福島第一原発事故という現実を見つめ直し、この判決の具体的な指摘を正面から受け止め、再稼働のための適合性審査を中止し、耐震設計、基準地震動、耐震重要度分類、共通原因故障などの諸点について、根本的な再検討を行うようもとめる。
③政府・国に対して、この判決の指摘を受け、地震国日本における事故リスクを避けるため、脱原発のため、再稼働を断念し、原発政策を根本から見直し、脱原発のための政策に舵を切るよう求める。
④全国の電力会社、そして原発立地周辺の地方自治体に対して、この判決を機に原発推進・依存から早期に脱却し、再生可能エネルギーを中心とするエネルギー政策への転換と環境重視の地域経済を目指すことを求める。
この判決以前から、福井県内では、原発反対福井県民会議第38回総会でのアピール、3・11メモリアルアクション福井県集会でのよびかけなどを経て、西川知事に「再稼働反対」を迫る「もう動かすな原発!福井県民署名」にとりくもう―という計画が進行している。県下17市町に署名を進める母体(広範なネットワーク)をつくり、各市町の首長や議会にも迫りつつ、西川知事へ署名を集中する一というとりくみになろう。前記声明の「住民・地方自治と国民主権の本領を取り戻す意欲的な実験でもある。
それはまた、原発の再稼働・延命の反対にとどまらず、原発依存の若狭・福井県から脱却する方途を、行政・議会・住民もろともに探究することにもつながるであろう。しかし、今回の判決にかんがみ、二五〇キロメートル圏内(外)の住民にも広くよびかけるべきではないか、という提案も出されている。現在進行中のこの計画に、とくに若狭の原発群の「消費地元」たる関西広域圏のみなさんの積極的な意見や連携、協力も期待したいものである。


 ◆編集後記「・・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。・・・われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と憲法前文にあるが、極右安倍政権は、憲法9条を排し政府の決意によって再び戦争をするべき時と宣言した。問題は戦争によって誰が血を流すのか、流さずして戦争が出来るのか。嗚呼、心ある者は起て、失うものは鉄鎖のみ。
地を這うようにして安倍を打倒せよ!(古橋)


関西共同行動ニュース No65