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安倍政権下で進められる民意と乖離した憲法審査会の議論 【許すな!憲法改悪・市民連絡会】 高田健




【両院で憲法審査会が再開】
安倍政権のもとで憲法審査会が3月13日(参議院)、14日(衆議院)、21日(衆議院)4月3日(参議院)、4月4日(衆議院)と開かれ、衆議院は11日にも予定され、さらに会長職など幹事会の主導権を握る自民党は今後、毎週開催するよう提案している。自民党としては参院選前に日本国憲法のレビューを終え、その後はいよいよ改憲案の審議に乗り出したいと考えているようだ。
憲法審査会の会議は比較的ひんぱんだが、議論の内容や出席率など中身はお粗末だ(例えば@14日の衆院での審議の途中、自民党の委員の出席が半分以下にまで減り、たまりかねた保利耕輔会長が特別に発言し、「少々空席が目立ちますので」と注意をうながしたほどだ。A4日の会議では、「首相公選」の主張を繰り返す維新の会とみんなの党の委員に、自民党の委員がその具体化の案について質問すると、「わが党はまだ議論を通じて自民党のように立派な詳細な案を持っていないのでお答えできない」と逃げる始末だ。用意してきた原稿を読むしか能力がないからこうなってしまうのだ)。
総選挙の結果、衆院憲法審査会の会長は民主党から自民党の保利耕輔氏に代わり、委員50人中、改憲を主張する自民党委員が31人(うち会長を含め審査会の運営を決める幹事は10名中7名)になり、あらたに「日本維新の会」が委員6名(うち幹事1名)を占めた。これに「みんなの党」の委員2名を加えると、委員の約8割が改憲を標榜する政党になった。他には民主党が委員6名(うち幹事1名)、公明党が幹事1名、委員3名(うち幹事1名)、生活の委員が1名だ。一方、社民党は委員の割りあてを失い、護憲を主張する政党は共産党の笠井亮議員1名(幹事会ではオブザーバー)のみとなった。
衆院憲法審査会はまさに改憲のための審査会の様相になった。

【3月13日の参院憲法審査会は
2院制維持が多数意見】
 議論のテーマは、「2院制の在り方について」で、共産党の井上哲士委員が「憲法調査会の時代には2院制への批判は主として『参院は衆院のカーボンコピーだ』というものだったが、いまは『衆参ねじれ国会』批判が主流だ」と、問題点を指摘した。「カーボンコピー」論(「衆議院と同じ内容では参議院は必要ない」という)と「ねじれ」(「決められない政治」はよくないという)批判はまったく相矛盾する口実だ。改憲派はまず改憲ありきの立場で「2院制」をあれこれと批判し、ご都合主義で改憲の主張のためにする。
1院制を主張する党は「みんなの党」と今回から初登場の「日本維新の会」で、みんなの党の江口克彦委員は「1院制にすれば迅速で効率的な意志決定ができる」とか、「院の維持にかかる諸経費も不要になる」(!)などと主張した。自民党も衆議院側では1院制論が少なくないが、参議院では自民党の委員も2院制維持論が多い。参議院は4月3日に再度「2院制について」審議したが、今後は「新しい人権」などを取り上げて行く意向だ。

【衆議院は改憲論が圧倒的】
衆院憲法審査会は昨年すでに第4章までの検討を済ませたのだが、総選挙を経て新たに議員になった委員が多いとおさらい的な審議を行うようにした。3月14日は「憲法第1章、2章について」。21日は3章と4章、4月4日は5章、11日は6章、18日は7章、25日は8章、5月2日は9章から11章をまとめて審議するというのが自民党の提案だ。
第1章の討議では自民党の船田一幹事が自党の改憲草案を解説して、「現行憲法の第3条『(天皇の国事行為は)内閣の助言と承認を必要とし』としているのは天皇陛下に礼を失するので『進言』に変えた」と得々として説明し、「自民党は『天皇を戴く国』にするという復古的な思想に染まりきっている」ことを示した。首相公選論の維新の会の馬場伸幸委員は「日本は天皇を元首とする立憲君主国だ」と述べた。みんなの党も天皇を元首にして首相公選だと主張した。
第2章では、自民の中谷元委員が「国防軍明記」を主張。維新の馬場委員は「いま広がっている領土への不安の根本原因は9条にある」と9条改憲を主張。みんなの党の畠中光成委員は「2年間の国民的議論を経て9条改憲へ」と述べ、3党がそろって9条改憲論を展開した。
しかし96条改憲から始めて、「9条改憲で国防軍」という憲法審査会での議論は、世論調査で「9条支持」が多い民意との乖離もはなはだしいものだ。
21日の衆院審査会の第3章の討議では自民党の保岡興治氏が「(現行憲法下で)基本的人権を尊重するあまり、自分勝手、利己主義が広がった」として、「公の秩序」を基準に人権を制限し、義務を明記するよう主張。第4章の討議では最高裁が指摘した「1票の格差」是正についての議論があり、地方選出の自民党議員などから「人口比による選挙区割りだけでなく、面積も考慮すべきだ」等の反発が相次いだ。

【日本維新の会とみんなの党が先兵になり、
自民党と改憲で協力する体制】
憲法審査会では、みんなの党と維新の会が繰り返し、改憲の発言を行い、自民党の中の「96条議連」や、復古主義的なウルトラ右派改憲派が自民党改憲草案(天皇を元首に戴いて、人権を抑圧しながら国防軍で戦争をする憲法)を掲げて、これに呼応する形で議論が進められる。
この中で日本維新の会やみんなの党などの右翼改憲政党が、「96条研究会」を結成するなど、憲法審査会やマスコミなどの場を通じて、先兵の役割を果たしている。これにつられて休眠していた自民党、民主党などによる96条改憲議連も復活することになった。維新の会の橋下代表は3月16日、「首相は自民党内のTPP反対派に『いざという時は維新と組む』との考えを表に出して党内が収まった」と語り、「憲法96条改正でも、公明党が連立を組んでいるが、維新は首相の決断を応援する」などと、自らが改憲の先兵になり、自民、維新・みんなの改憲派連合を形成する決意を語っている。
憲法審査会を活用しながら永田町での改憲暴走が始まった。私たちは全力をあげてこれに反撃しなくてはならない。 







関西共同行動ニュース No62