集会・行動案内 TOP
 
ハシモトの違法を告発する 【大阪労働者弁護団】 北本修二

◆労使関係条例・職員政治活動規制条例の成立
憲法28条により、労働組合は労働者の権利を守るための社会の基本的な装置として保護されている。職種に応じ異なる制限を受けてはいるが、地方自治体職員も憲法28条の保護を受ける労働者であることは疑問の余地はない。

橋下徹大阪市長は11年12月の就任以後、憲法を無視した激しい職員・労働組合攻撃を続けている。公務員と労働組合攻撃による人気取りを意図したものであり、そして自ら公言するところであるが、大阪市の労働組合が市長選挙において対立候補を支援したことに対する報復であり、極めて政治的な動機に基づく。

12年7月27日、大阪市会は、労使関係条例、職員の政治活動規制条例を可決した。既に成立した職員基本条例と共に組合の基盤を奪う条例であり、職員を強権的支配・統制しようとしている。橋下市長は労働者の自発性を全く理解せず、職員は自分に隷属すべきものと考え、そうさせようとしている。

労使関係条例は、労働組合の交渉権に大幅な制約を加える上に、労働組合に対する一切の便宜供与を禁止している。附則において労働協約に基づくものについては有効期間中は維持するとはしているものの、早晩、協約を終了させ、便宜供与を打ち切ろうとしている。正当な理由無く一律に便宜供与を禁止するものであって、違憲・違法の疑いが濃い。

日本の労働組合の大多数は企業内組合であり、労働組合事務所の供与、チェックオフ、一定範囲の有給・無給の組合活動承認などは社会常識である。橋下市長は、労働組合が獲得し定着した権利を剥奪する攻撃に出ているのである。

政治活動規制条例は、大阪市職員の政治活動を国家公務員並みに規制するものである。既に国家公務員に対する政治活動規制を定める人事院規則14―7の矛盾が指摘され、これを違憲とする東京高裁判決が出ている。にもかかわらず、職員の市民的・政治的自由を奪い、労働組合の政治活動を抑圧する条例を敢えて制定したのである。

◆橋下市長の職員・労働組合攻撃の理由
11年12月28日、橋下大阪市長は、就任後最初の施政方針演説において、大阪市役所の組合を徹底的に是正、改善して日本全国の公務員の組合を改めていくと述べ、12年1月4日、年頭あいさつにおいて、労働組合の活動を「適正化」するための条例案を提案すると表明した。そして、同日、大阪市庁舎から労働組合事務所の退去を求めると発表した。

橋下市長は、就任直後から「(労働組合が)政治に足を踏み込んだ以上は、選挙結果によって政治的リスクは負ってください」と市長選挙において労働組合が対立候補を支援したことに対する報復を口にしてきた。しかし、労働組合が選挙においてどの候補を推薦するかは自由であって、市長が干渉するべき事柄ではなく、報復は許されることではない。

橋下市長は、組合支部における物品置場提供の打ち切り、本庁舎組合事務所退去、チェックオフ打ち切り、職員強制アンケート、メール調査、入れ墨調査、市従環境事業支部のビラ配布に対する処分の恫喝など次々と報復的な暴挙を続けている。



◆労働委員会、裁判所でのたたかい
12年2月10日、橋下市長は、大阪市職員に対し、「業務命令」として、職員アンケートを実施し、政治活動、組合活動に対する関わりについて回答を命じた。勤務時間の内外を問わず政治家の応援活動をしたことの有無、労働組合活動参加の有無、誰に誘われたかなど機微情報を答えさせ、今後の活動を萎縮させるものであった。

2月13日、大阪市役所の関係労働組合で組織される大阪市労連は構成組合と共に大阪府労委に対し、アンケートの中止を求め不当労働行為救済と実効確保の措置を申し立てた。また、日弁連、大阪弁護士会や法律家団体が相次いで、アンケートを批判する声明を公表した。

2月22日、大阪府労委は、迅速に実効確保の措置を決定し、大阪市の責任で調査を凍結するよう勧告した。大阪市は、職員アンケートの凍結・廃棄を表明せざるを得なくなり、最終的にはマスコミを集めてデータを廃棄した。不当労働行為救済申立と実効確保措置が暴走にブレーキをかけたのである。

なお、職員アンケートについては、組合員個人と関係労組が損害賠償請求訴訟を提起している。公権力である大阪市長が職員に対し強制的に回答させるアンケートの違憲性を明らかにする重要な憲法訴訟である。

橋下市長は、労働組合の政治活動を理由に組合事務所を退去させた。しかし、労働組合は政治活動の自由を有することは最高裁でも承認されている。使用者が組合の自主的な政治活動に介入することは許されない。3月16日、労働組合は本庁舎内の組合事務所退去について労組法7条3号(支配介入)の不当労働行為として大阪府労委に救済を申し立てた。また、組合事務所退去問題に関する団交申し入れ拒否についても救済を申し立てている。

4月19日、労働組合は本庁舎内の組合事務所使用不許可処分に対する行政訴訟を提起した。公務員労働組合の団結権を確立するための重要な訴訟である。

チェック・オフは組合費を給与から控除しまとめて労働組合に引き渡すという日本の労使関係において定着した制度である。その打ち切りは、組合・組合員にとって大きな打撃を与える危険があり、合理的な理由のない廃止は不当労働行為にあたることは、判例法理として確立している。今回、大阪市は、チェック・オフ打ち切りを通告してきたが、労働組合は、チェック・オフ廃止に対する救済を申し立てている。

橋下市長の公務員と労働組合に対する攻撃は大阪市だけの現象ではなく、また公務員だけの問題でもない。攻撃は、新自由主義に基づく労働組合否定であり、たちまちのうち全体に波及するおそれがある。全労働者、労働組合総体の連帯による反撃が望まれる。


          

関西共同行動ニュース No60