集会・行動案内 TOP
 
【巻頭言】オスプレイの配備を許すな! ―普天間基地の無条件返還を実現しよう! 中北龍太郎

■オスプレイの普天間配備問題
 米国防総省は今年6月5日、12年後半から、現行のヘリコプターCH―46Eにかえ、MV―22Bオスプレイの米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)への配備を開始すると正式に発表しました。
 オスプレイはミサゴ(全世界に分布するタカに似た渡り鳥で、空中に静止するホバリング(空中停止)飛行の後急降下し獲物を捕獲する)を意味しています。オスプレイは、世界初の実用ティルトローター(垂直離着陸のための手法の一つで、プロペラに似た回転翼のローターを機体に対し傾ける回転翼)を装備した航空機です。ティルトローター機は、ヘリコプターの利点である垂直離着陸・ホバリング・超低空での地形追従飛行と、高速移動や航続距離の長い通常の固定翼機の優れた面とを兼ね備えた航空機として開発されました。 
 米軍は、第2次世界大戦直後から両者の利点をあわせ持った航空機を欲しがり、50年代半ばからそのための開発を進めたものの試験飛行段階にとどまっていました。イーグルクロー作戦(80年イラン米大使館人質事件で人質の救出のために行われた作戦で、ヘリコプターのトラブルにより失敗した。)の失敗が契機となって、米4軍は急ピッチで開発計画を進めるべく、82年に合同垂直離着陸機(JVX)開発計画を発表しました。96年からV―22の量産体制に入るようになり、海兵隊には00年以降(MV―22B)、空軍には05年以降(CV―22B)に配備されるようになりました。
 現段階での導入計画機数は、海兵隊408機(現在までの調達数は155機)、空軍51機、海軍48機(HV―22B)となっています(陸軍は導入断念)。海兵隊への導入機数が増えるにつれ、普天間基地のオスプレイも増えていくということになります。
 オスプレイの普天間基地への配備が、侵略力の強化拡大、墜落事故の危険や騒音被害の深刻化をもたらすことは必至です。

■侵略力の強化拡大
 オスプレイの最高速度は約555km/毎時、米軍の輸送用ヘリと比べても2倍以上の高速です。航続距離も長く、空中給油をした場合最大で約3700kmも飛行できます。固定翼を併用しているために、回転翼機よりも高い高度に上ることもできます。また、海兵隊使用の強襲揚陸艦に搭載できるようになっています。こうしたオスプレイの高機能化について、米国防総省は「世界のどんな場所にも迅速に展開できる」と自賛しています。
 オスプレイの主な用途は、海兵隊の場合、揚陸強襲・地上作戦活動の維持、空軍では長距離特殊戦活動・不測事態作戦、海軍では戦闘捜索・救難などです。海兵隊と空軍ではオスプレイの部隊配備が始まっただけでなく、すでに実動作戦に投入されています。
 07年10月から開始されたイラクでの【イラクの自由作戦(OIF)】にMV―22Bが12機投入されました。OIFにおけるオスプレイの主なミッションは、航空強襲、襲撃、戦場監視、兵員輸送などでした。ヘリコプターCH―46Eの活動範囲約14万kmに対し、オスプレイは24名を乗せて約60万kmと、大幅な展開能力の向上に貢献しました。
 また、アフガニスタンでの【不朽の自由作戦(OEF)】にも、MV―22BおよびCV―22Bが参加しています。
 兵器として極めて高性能になったオスプレイはすでに侵略戦争に投入されており、普天間基地への配備は沖縄基地の侵略力の強化拡大をもたらすことは確実です。

■危険なオスプレイ
 JVX開発計画は遅れに遅れ、初号機が初めて試験飛行したのは89年でした。オスプレイは試作機段階で2件の大きな事故を引き起こしました。第1回目の事故(91年)は、高度約4.5mでホバリング中にエンジンなどが地面に接触し落下炎上し乗員2名が負傷。第2回目の事故(92)では、エンジンが正常に機能しなくなって火災が発生し、川に墜落し、乗員7名全員死亡しました。初期生産段階でも2回重大事故が発生しました。00年4月の事故は、着陸段階で墜落し、乗員9名全員が死亡。同年12月の事故は、着陸進入中に墜落し、乗員4名全員が死亡。このように初期段階で4件の事故が起き、20名が死亡しています。
 最近では10年4月に、アフガニスタンでの作戦に従事中のCV―22Bが墜落し4名が死亡しました。この事故の原因は今もって確定されておらず、欠陥隠しだとの指摘もなされています。
 オスプレイの開発に長年携わってきた米航空専門家は、エンジンが停止しても安全に着陸するためのオートローテーションがなく、米航空連邦局の安全基準を満たしていないと指摘しています。
 このように、オスプレイは欠陥機であり、その危険性は測りしれません。
 騒音問題も、深刻化することは避けられません。オスプレイの着陸時の最大騒音値は83デシベルで、CH―46Eの79デシベルを上回っており、オスプレイの騒音は地下鉄車内のそれに匹敵するといわれています。

■普天間基地の現状
 普天間基地は米軍の「銃剣とブルドーザー」によって建設されました。基地は市の中心部に位置し、面積は約4.8kuで、宜野湾市の面積の約32%を占めています。普天間基地は、岩国と並ぶ海兵隊航空基地で、2700mの滑走路を持ち、ヘリコプター56機、固定翼機15機が常駐しています。基地周辺には住宅が密集しています。これは、戦争が終結し避難先や収容所から戻ってくると、元の住居地には基地が建設され立入り禁止区域になっていたために、基地周辺に張り付くように住宅を建てなければならなかったという歴史的事情によるものです。
 住民の生活領域と基地が接近しているため、住民は騒音と墜落事故の危険にさらされてきました。騒音による難聴・高血圧・不眠症、精神的被害、生活・睡眠妨害などの被害は甚大です。住民約400名が起こした訴訟で福岡高裁那覇支部は10年7月多額の損害賠償を認めました。
 裁判所は判決の中で、「普天間基地は世界で1番危険な基地」と指摘しました。ラムズフェルド米国防長官(当時)も同様の発言をしていました。そのとおりで、航空機事故は復帰から02年12月末時点で77件も発生しており、04年8月には沖縄国際大学にヘリコプターが墜落したことは記憶に新しいところです。
 世界1危険で、深刻な騒音問題を引き起こしている普天間基地に、オスプレイを新たに配備することなど許されていいはずがありません。

■普天間基地の無条件返還を実現しよう!
 人間と命を大切にしようというのなら、不可能に等しい辺野古新基地建設を条件にせずに、普天間基地は閉鎖し早期に返還すべきです。原発と同様に、米軍基地は重大事故の発生が不可避です。原発政策が破綻したように、安保政策もそう遠くない時期に破綻することが目に見えてくるようになった現在、基地も安保もいらない、戦争はあかん!の私たちの声を、民衆運動を大きく広げよう!



04.08.13沖縄国際大にヘリ墜落


関西共同行動ニュース No57