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【巻頭言】民衆運動で原発と核兵器の廃絶を! 中北龍太郎

 東北関東大震災で日本は二度目の「敗戦」を喫しました。経済大国のための原発推進政策は完膚なきまでに敗北したのです。侵略戦争から敗戦に至る富国強兵政策、軍国主義路線の根幹には無責任体系と化していた権力構造があり、そしてその下での根拠のない過信と誇大宣伝がありました。原発政策も、巨大な政財官の癒着構造の下で、安全神話をあおり、起きては困ることは想定外ですませ、そして事故が起きても誤りを認めない無責任を決め込み、そうして過去の過ちをくり返しました。かくして、原発も、戦争と同じように、多くの住民に塗炭の苦しみを強いています。

 いうまでもなく二〇世紀は原子力の世紀でした。マンハッタン計画の下で核分裂を戦争のために利用して開発されたのが原子爆弾であり、この原子力を産業に転用したのが原発です。核兵器と原発は元は同じ原子の火であり、その出自からして同根なのです。しかも、小出さんが的確に指摘しているとおり、日本の原発政策の根底には核武装願望があり、日本国家はいつでも核武装できるようにしておくために、決して原発を手放そうとはしなかった。

 しかし、福島原発事故によって、原発政策は根本から転換されなければならないことは万人の目に明らかになりました。日本は、アメリカの原爆に敗れ、大震災でアメリカモデルの原発事故に敗れました。敗戦が富国強兵政策、軍国主義路線の根本的転換の契機であったように、大震災を契機に、軍事同盟の核の傘の下での原発政策をベースにした経済膨張主義から脱しなければなりません。安全神話が崩壊した今こそ、ヒロシマとフクシマを核の暴走の被災地として一体のものととらえ、核兵器と原発を同じ核廃絶の課題と位置付け直すことが求められています。

 この課題を達成する唯一の主体は民衆運動です。民衆が主体になり切れなかった戦後改革の反省をふまえて、核抑止にも原発にも頼らないという覚悟を国民的合意とし、民衆主導の本物の世直しをめざしたい。そうでなければ、私たちは3度目の原子の火を浴びる危険にさらされることになるでしょう。

 人間の一番大切なメッセージを持っているDNAを作り出す核の放射能は、人類と相容れません。また、核は自然界にない物質であるウラン235を原料とする点で、自然に逆らうおごりの産物にほかなりません。原発事故で多くの人びとがスローデスの恐怖を強いられているのは、こうした核の本質によるものです。

 いまわしい核の惨禍を経た現在、これまでの惰性の延長線上で復興できるわけがありません。核からの離脱は社会再建の必須の鍵です。被災地の人びとと連帯して、人間の命を大切にする核のない社会・世界に向かって進んでいきましょう。私たちの直面するこの課題は、人類共存、自然と人類との共生の二一世紀の地球文明の扉を開く世界史的課題につながっているはずです。





関西共同行動ニュース No56