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●「無印良品」がイスラエルへの出店計画を撤回を表明 日本におけるパレスチナ連帯のためのBDSのはじめての成果 【パレスチナの平和を考える会】 村田豪

05年にパレスチナの多数のNGOや市民グループは、世界中の市民と国際社会に向けて、イスラエルに対する「ボイコット・投資引き上げ・制裁」(通称:BDS)を呼びかけた。南アフリカの人種隔離政策に対して広範に取り組まれた連帯運動と同様に、ボイコットや制裁措置を通じて、イスラエルの人種差別的な体制を変えさせるよう、また、占領支配や入植活動を終わらせるよう、そして、パレスチナ人の人権と尊厳を回復するように強く求めるものだった。
この呼びかけを受けて、世界各地の市民によってさまざまな取り組みが行われて来た。パレスチナの平和を考える会でも、イスラエル産果物「スウィーティー」や入植地のコスメ企業「AHAVA」について取り扱い中止要請を、デパートやスーパーなどの小売り企業に訴えて来た。なかなかこれまで具体的な結果を引き出すことはできなかったのだが、しかし先日、小さいながらようやく成果らしい成果を、日本の取り組みとしては初めて上げることに成功した。その報告をさせていただく。
10年4月に「無印良品」を事業展開する株式会社良品計画が、イスラエルへの出店計画を発表した。即座に当会では良品計画に対して「ガザ戦争で多数の市民を一方的に虐殺し、戦争犯罪と国際法違反で非難を受けているアパルトヘイト国家に、なぜ進出しようというのか?」と疑問を投げかけ、出店中止の要請を行った。同時に、問題を広く世間に訴える「STOP無印良品キャンペーン」を開始した。とくに無印良品がもつ企業イメージを逆手にとって、無印の購買層からも共感を呼ぶように、同社のロゴや製品のデザインを彷彿させるようなメッセージカードやバッジ、Tシャツなど制作して、「イスラエル出店に反対しているのは、あなた方のユーザーなのだ」と訴えた。また、パレスチナ情報センターが立ち上げたキャンペーンウェブサイトでは、徹底して無印良品のイメージを踏襲し、パレスチナ問題に必ずしも詳しいとは言えない一般の市民にも、問題を受け止めやすいようなアピールを発信し続けた。


イスラエルによる隔離壁に見立てた、高さ2m×幅6mの横断幕を拡げる


キャンペーンをさらに促進する試みとして、7月末からはツイッター(短文でのウェブコミニュケーションサービス)を利用した関連情報の拡散を試み、あまり運動に直接かかわったことのない層の人々にまで、「無印のイスラエル出店」問題を周知させる流れを加速させた。9月からは無印店舗前での街頭抗議アピールを開始。東京では10月に、パレスチナ以外の運動圏の人も多く参加した「STOP無印良品 in 東京」が結成され、大きな行動を予告していた。同時期、韓国のパレスチナ連帯グループによる抗議行動があり、また日本での行動の様子をおさめたユーチューブ動画も多くのアクセスを集め、海外でもこの取り組みは知られるようになっていった。こうした盛り上がりを見せる中、12月1日に良品計画は、「イスラエル出店計画中止のお知らせ」をとうとう公表するに至った。日本での市民によるイスラエルボイコットの初「勝利」と言っていいだろう。■キャンペーンを通じて、おそらくかなり多数の人が良品計画へ中止要請や疑問の声を寄せたはずである。消費者からの失望や怒りのメッセージに直面して、同社は、自身の企業イメージが損なわれることに大きな脅威を感じたのではなかろうか。一つ一つの試みや行動は、非常に小さなものだったと思うが、各自や各グループが率先してキャンペーンに加わり、大きなうねりを生み出したことが、今回の「勝利」の一番の要因だったと私たちはとらえている。
ただし、これでパレスチナの現実がなにか変わったわけではもちろんない。今後の対イスラエルBDSの取り組みに展望を開き、本当の意味での「勝利」--占領終結、入植地撤退、パレスチナ人の主権と人権の回復--を勝ち取るためにも、今回の小さな成果を大切にしたい。


パレスチナの現状を訴えた路上パフォーマンス


関西共同行動ニュース No55