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●【巻頭言】反安保―沖縄連帯―反改憲三位一体の闘いへ! 中北龍太郎

■鳩山政権から菅政権へ
政権交代により登場した鳩山政権は、自民党の海外派兵・基地強化・改憲政策に対する批判的な民意に応えるかのように、日米同盟の対等化と沖縄県名護市辺野古への基地新設の見直しを掲げ、改憲政策を自制しました。鳩山前首相は、辺野古基地建設は自然への冒涜だと言い切り、普天間基地は国外、最低でも県外へと公言しました。ところが、鳩山政権は、アメリカの圧力に屈し、昨年の5・28日米合意により、自民党政権の辺野古への新基地建設計画に舞い戻ってしまいました。これは、沖縄県民の総意を裏切る民主主義と地域主権を破壊する暴挙にほかなりません。
  約9ヵ月間に及ぶ鳩山の迷走によって、アメリカは、日米同盟の深化つまり日米軍事同盟の強化路線に亀裂が入ったと深刻に受け止めていました。この亀裂の修復というアメリカの期待を担って登場したのが、菅政権です。菅政権は、アメリカの期待に応え日米同盟深化のための諸政策を着々と実行に移しています。

■菅政権の日米同盟路線
菅政権は代表選後再スタートするや間もなく、尖閣諸島(釣魚諸島)近くで起こった中国漁船の衝突事件で、日本国内のナショナリズムを煽り立てたうえに、アメリカから「尖閣諸島は日米安保の適用範囲」という言質を取るのに奔走し、日米同盟を後ろ盾にして中国に対抗しようとしました。
そして作年暮れには、中国への軍事的対抗を露わにした「防衛計画の大綱」を閣議決定しました。新防衛大綱は、自民党政権時代、76年に初めて防衛大綱が策定されて以来二度の改定でも維持されてきた、自衛隊の役割を専守防衛に限定する「基盤的防衛力」構想を投げ捨てています。そして新たに、「動的防衛力」構想を導入しました。
「動的防衛力」構想は、自衛隊を、米海兵隊のように、自ら攻め込んでいく態勢にし、地球規模の殴りこみ部隊にしようというものです。米軍と一体となって海外派兵を展開できる自衛隊の外征軍化が、「動的防衛力」構想の目的なのです。
その矛先は、中国に向けられています。新防衛大綱とともに政府が決定した中期防衛力整備計画に明記されているように、沖縄本島や先島諸島など南西方面への自衛隊増強がもくろまれています。その狙いは、自衛隊がアメリカの中国囲い込み戦略の一翼を担うことにあります。
このような対中軍事戦略は、昨年2月アメリカが発表した「4年ごとの国防政策見直し」(QDR)に盛り込まれた、空軍と海軍の共同作戦能力を強化するための「ジョイント・エア・シー・バトル作戦」に連動するものです。この作戦は、空軍が早期警戒態勢をとり、ミサイル攻撃を抑止しながら、米空母など洋上部隊を中国近海に展開するというものです。この作戦の一環として、海上自衛隊は潜水艦によって中国の潜水艦を抑え、航空自衛隊は警戒・監視の役割を与えられています。アメリカの新戦略をベースにして組み立てられた新防衛大綱は、中国との対決に備えて日米軍事一体化の一層の深化をめざすものにほかなりません。



■反基地=九条で安保に風穴を!
日米同盟の深化の最先端が辺野古新基地建設です。安保体制のさらなる深化、対中軍事戦略のための南西方面の重視にともなって、基地建設の圧力がますます強まろうとしています。こうした中、仙石官房長官の「辺野古移設甘受」発言、前原外相の「辺野古に新基地ができなければ普天間基地を継続使用する」との発言、この前原発言を追認する仙石発言と続きました。これら一連の発言は、菅政権の辺野古新基地建設への偏執の表われにほかなりません。
しかし他方、新基地建設反対、普天間基地の無条件返還が沖縄県民の総意であり、この総意は4・25/10万人県民集会、名護市長選で反対派市長の誕生、県議会の全員一致の決議、名護市議選で反対派が多数を占めたことなどを通じて、確固たるものになっています。仲井真知事も県外移設を公約しています。辺野古新基地建設をめぐる政府と沖縄県民の対立は、政府が県知事の公有水面許認可権を取り上げて強権を発動し、これに対して県民が抵抗に立ちあがるといった対決局面へと収斂していく可能性をはらんでいます。
米軍基地は、構造的暴力の故に地域住民に様ざまな基地被害を強いる存在であり、また侵略戦争の出撃拠点です。安保体制の諸悪を具現している存在が米軍基地なのです。政府は、諸悪が目に見える安保ともいうべき米軍基地を沖縄に集中することによって、本土において安保の実態を見えなくしてきたのです。問題を隠す政府のやり方は、安保改定時の「核持ち込み」「基地の自由使用」「朝鮮半島への自由出撃」「米兵の事件・事故に対する裁判権放棄」に関する密約、沖縄返還時における「核持ち込み」「戦争への自由出撃権」などの数々の密約にも表われています。政府は、基地の沖縄への封じ込めと密約による安保の危険な本質の隠ぺいによって、国民をだましだましして安保体制の継続・強化を図ってきたのです。
菅政権が自民党と競いあうようにして安保強化を進めている情況は、一種の安保翼賛体制が成立したものと評価されます。安保翼賛体制は戦争への道を急加速させる強力なエンジンになるでしょう。この安保翼賛体制の下で、安保強化としての辺野古新基地建設が推し進められ、こうした安保強化によって九条破壊が拡大しています。だからこそ、反安保―沖縄連帯―反改憲の三つの課題は一体のものなのです。
安保の暗闇が深まるにつれ、反基地の原点にある「命どぅ宝」の反戦平和思想は輝きを増しています。この思想は、憲法九条の思想とピッタリ重なっています。基地はいらないという沖縄県民の思いと、九条を守りいかしていこうという私たちの決意をきっちりとリンクさせて、安保翼賛体制を草の根の民衆の抵抗によって打ち破っていきましょう。





関西共同行動ニュース No55