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●2010年に1991年、1965年を重ねると−「朝鮮学校外し」「朝鮮籍除外」を評す−
【定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワーク・共同代表】 田中 宏


初の本格的政権交代が実現し、新政権の打ち出す政策の一つに「高校実質無償化」がある。そこに“朝鮮学校外し”が出てきたのである。「外国人地方参政権法案」の方は、当初の動きとは違って、提出が遠のいたようだが、民主党が08年5月にまとめた「永住外国人への地方参政権に関する提言」には、「その対象者は、当分の間我が国と外交関係のある国(日本政府の承認した国)の国籍を有する者、もしくはこれに準ずる地域を出身地とする者とする」とある。すなわち、「朝鮮籍」除外である。「朝鮮学校外し」と「朝鮮籍除外」に通底するものは何だろうか、それはどう考えた
らいいのだろうか、少し整理してみたい。
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高校無償化は、小・中は義務教育などで公立学校は授業料不徴収であるが、それを高校レベルまで引き上げることを意味する。その場合、公立高校の授業料は不徴収とし、私立高校生には、授業料相当額を「就学支援金」として支給する。ほかに「高校に類する課程」を有するとして文部科学省令で定める「専修学校」および「各種学校」をもその対象としたのである。
民主党は野党時代の06年5月、政府の教育基本法全面改正に対抗して「日本国教育基本法案」を議員立法として衆議院に提出した。その解説には、「あえて”国民“とせずに”何人“もとしました。ともに生き、新しい文明を創造するためにも、日本で生活する外国籍の子どもたちにも、同じように学習権を保障します」とあった。それに、09年3月に民主党が参議院に提出し可決された高校無償化法案(衆議院で審議未了)も今回同様に「専修学校および各種学校」を対象としていた。専修学校は「外国人をもっぱら対象とするものを除く」とあるため、外国人学校に拡げるためには、各種
学校も対象とせざるを得ない。
ところが、中井拉致担当大臣の”朝鮮学校外し“の要請が伝えられ、それが川端文科相や鳩山首相にまで一定の影響を与えたようだ。4月1日に、法律および同施行規則が公布施行されたが、そこでは「各種学校であって、我が国に居住する外国人を専ら対象とするもの」に関する「告示」はまだ何一つ公布されておらず、”朝鮮学校外し“が確定したわけではない。
朝鮮学校の処遇といえば、やはり65年末の文部次官通達にさかのぼらざるをえない。いわく「民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は・・・各種学校として認可すべきではないこと。・・・なお朝鮮人を含めて・・・外国人をもっぱら収容する教育施設については・・・新しい制度を検討し、外国人学校の統一的扱いをはかりたい」と。そして認可権を知事から文相に移し、規制一本やりの外国人学校法案が登場した。規制条項はあっても、大学入学資格付与や私学助成の対象とするなどの保護策は皆無だった。朝鮮学校敵視策というほかなく、反対運動の中で同法
案は結局廃案に終わった。
68年、美濃部東京都知事は、通達にもかかわらず、法に基づいて朝鮮大学校を各種学校として認可した。今ではすべての朝鮮学校が各種学校として認可されており、通達は死文化したといえる。「朝鮮学校外し」が実行されれば、65年段階に戻ることになろう。
文部次官通達の出た65年は、日韓法的地位協定が締結された年であり、翌年1月から5年間のうちに申請すれば、より安定した「協定永住」が許可されることになった。それが、「韓国民」を申請の前提としたため、在日コリアンの中に「38度線」を持ち込む結果となった。
47年5月2日(新憲法施行の前日)に最後の勅令として公布施行された「外国人登録令」で、在日コリアンは突然外国人登録を義務づけられた。通常、外国人は旅券を持って入国し、外国人登録の国籍欄には所持する旅券の国名が記入される。しかし、突然、登録を求められた在日コリアンで旅券を持つものはいない。法務省は外国人登録の国籍欄に「朝鮮」と記入する措置をとった。すなわち「朝鮮籍」の誕生である。従って「韓国」が韓国国籍を示すのに対し、「朝鮮」は単に朝鮮半島出身者を意味するのみで、決して朝鮮民主主義人民共和国の国籍を示すものではない。しかも政府は、共和国を認めてはいないのである。
民闘連(民族差別と闘う連絡協議会)が88年に発表した「在日韓国朝鮮人の補償・人権法案」では、朝鮮半島の南北、台湾の別なく、旧植民地出身者およびその子孫は一括して「特別永住者」とすることが提案された。91年の日韓外相間の「覚書」をうけて、同年に制定された「入管特例法」でようやく「特別永住者」が生まれ、南北朝鮮、台湾の別なく、旧植民地出身者およびその子孫は、一括して「特別永住者」とされ、在日コリアンにおける「38度線」が解消されたのである。
外国人地方参政権付与に当たって、もし「朝鮮籍除外」が盛り込まれるとすれば、20年前の91年より前の時代への“逆走”を意味することになる。しかも民主党が野党時代に国会に提出した同法案には「朝鮮籍除外」のものはなかった。ただ当時与党だった公明党が00年1月と04年2月に国会に提出した法案に「朝鮮籍除外」が盛り込まれていただけである。
10年は、日本による「韓国併合」百年に当たる。そこに姿を現した「朝鮮学校外し」なり「朝鮮籍除外」の問題は、日韓条約締結の65 年、そして入管特例法が制定の91年がそれぞれどういう年であったか、それと重ね合わせて考えると、今回の動きの時代錯誤性がくっきり浮かび上がってこよう。
(なお、『世界』10年4月号と5月号に、参政権および無償化についての拙稿あり。ご参考までに)




■去る4 月7 日。右翼と警察の怒号の中、静かに「従軍慰安婦」への謝罪を求めるアピールが読み上げられる。


関西共同行動ニュース No53