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●巻頭言 海兵隊は日本から撤退せよ! 中北龍太郎

基地押しつけ―異常な対米従属

政府は、またもや普天間基地(沖縄県宜野湾市)の代替基地を沖縄に押しつけようとしています。鳩山政権が現在有力視している二段階方式の移設案は、いずれの段階でも県内の基地たらい回しに外なりません。第一段階は、@普天間基地を二〇一二年配備予定の最新鋭の垂直離着陸機MV22オスプレイの離着陸用に残しながら、A米海兵隊キャンプ・シュワブ陸上部(名護市)に五、六百mのヘリ離着陸帯(ヘリパッド)を建設し、B「普天間の基地機能の五割以上を県外に移す」として、徳之島(鹿児島県)などにヘリの訓練や固定翼機を移転するというものです。第二段階では、ホワイト・ビーチ(うるま市)沖合(勝連沖)に大規模な海上新基地建設を建設し、普天間基地を含め沖縄の基地を集約するというのです。
基地たらい回しの押しつけに対し、沖縄県民の怒りは沸点に達しようとしています。すでに名護・那覇・うるま市などの各議会が反対意見書を可決しています。名護市では、現行案以上に爆音の被害や墜落の危険が増大するシュワブ陸上案に対し怒りが充満しています。うるま市では、「日本一の生産を誇る沖縄モズクの生育場を破壊する」(五漁協の嘆願書の一節)巨大基地建設案に対する抗議の声が一気に広がっています。このように、島ぐるみ闘争に向かって闘いのボルテージはどんどん上がっています。また徳之島でも、四月十八』日に島民人口約二・六万人)一・五万人が参加した反対集会が開かれました。
沖縄そして徳之島の民意が移設反対であることは明らかであり、民意にそった政治をというのなら、普天間基地の無条件返還が唯一の選択肢です。市民の意思を踏みにじって何が何でも米軍に基地を差し出さんとする政府の対応は、主権国家とは信じがたい異常な対米従属です。

海兵隊基地はいらない

沖縄基地問題は、海兵隊問題だと言っても過言ではありません。在日米軍約三・五万人のうち海兵隊は約一・五万人で、海兵隊が最大の兵力数を有しています。沖縄県内にいる海兵隊員は約一・二万人で、固定翼機部隊以外の大部分が沖縄に配備されています。在沖米軍のうち海兵隊は六割弱を占めています。
海兵隊の全体数は約一八・七万人で、三つの遠征軍からなり、第一、第二遠征軍は米本土内にあり、沖縄にいる第三遠征軍は唯一海外を拠点にしています。海兵隊の日本配備は朝鮮戦争勃発によるもので、一九五〇年に山梨・岐阜の両県にやって来ました。その後、本土での反基地闘争の激化により、五六年米軍政下にあった沖縄へ移されました。
沖縄における海兵隊の基地は、普天間基地をはじめ、第三遠征軍の司令部のあるキャンプ・コートニー(うるま市)、キャンプ・シュワブ、県内最大規模の実弾演習が行われているキャンプ・ハンセン(金武町など)、キャンプ瑞慶覧(北谷町など)、牧港補給地区(浦添市)にわたっています。その活動は、沖縄県内外での訓練が主で、その回数は年七〇回を超え、同盟国(日本の外、韓国・タイ・オーストラリア・フィリピン)と合同演習を重ねています。訓練先へは米海軍佐世保基地(長崎県)に配備の強襲揚陸艦で移動します。
海兵隊は、米本土防衛を任務とせず、世界中のどこへでも緊急に展開して、空・陸の戦闘能力を駆使して上陸作戦(水陸両用作戦)を実行する外征専門部隊で、そのため「殴り込み部隊」と呼ばれています。沖縄の海兵隊は、アフガン・イラク戦争の最前線に投入され、フィリピンにも派遣され対テロ戦争を遂行しています。アフガン戦争でアメリカの戦死者は今年に入って千人を超えましたが、千人目の戦死者は沖縄・第三遠征軍の所属でした。このように、海兵隊は侵略部隊であり、県民に多大の犠牲を強いてきた沖縄基地は侵略の拠点でもあったのです。
沖縄海兵隊は日本の安全を守る抑止力だと宣伝されています。果たしてそうでしょうか?アメリカの軍事戦略のかなめが対テロ戦になっている現在、テロのような非対称型攻撃(国家間の交戦ではなく、弱者が強者の強みを避け、その弱みを狙って予測できない従来型でない方法で攻撃すること)には「抑止」の概念が通用しないようになっています。また、海兵隊はアジア・太平洋の広い地域でローテーションを組んで移動する態勢を常態としており、沖縄の海兵隊基地はそれ自体では大した意味を持っていません(屋良朝博著「砂上の同盟」)。かくして防衛官僚からも、緊急展開部隊である海兵隊は沖縄にいなくても、万一の日本有事の際にも駆けつけることができるし、沖縄と米本土との距離・時間差を問題にするほどの軍事的必要性はないといった意見が出ています。米国内でも、九五年の少女暴行事件後沖縄海兵隊の撤退論が盛んに研究されました。
このように、抑止力論には明確な根拠もなく実態もなくなく、限りなくあいまいで、基地を維持するための方便と化しています。こう見てくると、グアムに沖縄海兵隊の司令部機能を移した後もその戦闘部隊を沖縄に残そうとしている本当の理由は、沖縄とその周辺に海兵隊を維持することによって、アジア・太平洋における米軍の軍事拠点を確保して覇権を維持するためだとしか考えられません。

海兵隊の撤退を求めよう

九五年の少女暴行事件を契機に、沖縄県民の「基地のない島を」という声は大きくこだまし、その結果日米両政府は、世界で最も危険とされる普天間基地の撤去を打ち出さざるを得なくなりました。しかし、安保体制の深化をめざす路線を根本のところで変えようとはしない両政府は、普天間基地の代替基地を名護市辺野古につくると決めました。しかしその後の十数年間、反対運動と県民世論に阻まれ辺野古の海に杭一本打つことができませんでした。鳩山政権の基地たらい回しの押しつけも、相も変わらない安保絶対視の政治方針によるものです。安保強化の枠内での「負担軽減」が如何に欺瞞であるかは、もはや明らかでしょう。
今年一月名護市長選で移設反対派市長が誕生し、そして二月には沖縄県議会は県外移設を求める意見書を満場一致で可決しました。沖縄県民の「基地のない島を」という願いは揺るぎのない確固たるものになっています。この願いの実現を遠ざけているのが、安保体制を絶対化して日本の自発的属国化を進め、沖縄を国内植民地扱いにしている本土の政治だということは明白です。私たちは、この本土の政治を、反戦平和、反基地の闘いと民主主義の抵抗力によって変えていかなければなりません。そのために、「普天間基地をすぐ返せ 新基地建設を許さない!4・27大阪集会」を成功させ、海兵隊を日本から撤退させる運動を本土でも大きく広げ、盛り上げていきましょう。そして、4・25県民大集会、5・16普天間基地包囲ヒューマン・チェーンに参加し、沖縄との連帯・絆を強めていきましょう。






関西共同行動ニュース No53