集会・行動案内 TOP
 
●グァムにも米海兵隊基地はいらない 【チャモロネーション】 ビクトリア・レオン・ゲレロ

私はチャモロの草の根の団体、「イ・ナシオン・チャモロ」、チャモロ・ネーションを代表してここに来ました。チャモロ・ネーションは、グアムの先住民であるチャモロの人々の民族としての存在を宣言するために、1991年に設立されました。
チャモロ・ネーションは、私たちの島におけるチャモロの人々の4千年の歴史を誇りとし、私たちの島、私たちの水、空気、精神性、言語、文化、人権を守ることを誓っています。
日本とアメリカ合州国とグアムを結びつけている歴史について話すのは、簡単なことではありません。それはグアムの人々にとって、今も忘れられない災いの苦痛に満ちた記憶で彩られています。
一つの民族が、自分たちが起こしたのでもない戦争の犠牲になり、しかもそのことについていまだに歴史の教科書にも記述されず、犠牲に対する補償も受けていないのです。しかし、私は、この歴史は語られなければならないと思っています。それは私個人にも非常に関わりのある歴史でもあります。(ここでゲレロさんは、第二次世界大戦中に自分の祖先を含むチャモロの人たちが米国と日本の政府・軍隊から受けた不当極まりない扱いについて詳しく述べ、そのことが今日の問題を理解する上で重要だと訴えましたが紙面の都合上割愛します。―星川)
グアムにおける米軍の存在は、核廃棄物やそのほかの発癌性廃棄物による私たちの土地と周囲の海の汚染をもたらし、その結果チャモロの人々の間で癌の発生と癌による死亡の数が増えています。
また、米軍基地への依存を強制されているために、他の経済的な選択肢がほとんど残されておらず、その結果チャモロの人々の息子や娘たちは生まれ育った土地を離れることを余儀なくされます。チャモロの若い人たちには、まともな収入を得られる仕事が足りないため、米軍に志願する人が一部にはいます。軍に入れば明るい将来があると勧誘されるからです。しかし、第二次大戦以降アメリカが闘ったすべての戦争、つまりベトナム戦争でも、湾岸戦争でも、現在の「テロとの戦争」でも、チャモロの人たちの戦死数は、人口比ではチャモロ以外の人々を上回っています。
ここで、あなたがたの税金が何のために使われるかについてお話ししておきましょう。この軍事基地拡張計画の重大さを、よりわかりやすく説明するためです。アメリカはすでにグアム島の約3分の1を占領していますが、さらに2014年までに沖縄からグアムに1万7千人の海兵隊とその家族を移転させることを計画しています。さらに、この計画のほかに、アメリカ海軍はその関連施設、兵站能力、上陸施設の拡張を開始しています。海軍基地への核兵器搭載空母や戦闘用資材輸送艦、潜水艦、水上戦闘艦、高速輸送船の寄港を支援するためです。アメリカ空軍は、アンダーソン空軍基地における全地球規模の情報収集、監視、偵察のハブとしての機能を強化するために、戦闘機、爆撃機、空中給油機、無人偵察機などあらゆる種類の航空機を配備することを計画しています。陸軍は、グアムに弾道ミサイル防御タスクフォースを配備することを計画しています。
グアムでは、今後5年間に、1万9千人の兵士と2万人の家族、2万人の外国人契約労働者がやってくることになります。グアムの人口は現在、17万3千人ですが、今後5年間に合計5万9千人、つまり34%の人口増加となります。このように人口が急増すると、6万2900人のチャモロ人は、私たちの生まれ育った島で、少数者となってしまいます。それでなくても私たちは現在、アメリカの教育方式を強制され、チャモロの言語や歴史よりも英語とアメリカの歴史を勉強するよう強制されており、私たちはそれに対して私たちの文化と言語を守るために闘っています。
グアムの軍事化の目的の一つに日本人や沖縄の人々に対する米軍の負担を軽減することがあります。それならば、グアムにも同じような敬意が払われるべきです。しかし、グアムはいまでもアメリカのものであり、私たちがアメリカへの依存をやめ、自分たちの文化と言語を守るための経済的、社会的な基盤を作り出していく権利は、意図的に無視されているのです。グアムの社会での軍事基地の負担は数倍にも増大するでしょう。
国防総省もグアムの政府も、この島のインフラは軍の増強に伴うニーズの拡大に対応するには不十分であると言っています。たとえば、島の中心部の下水道システムについて言えば、すでに多くの開発事業が実施されていますが、処理能力の限界に達しています。昨年行われた議会の公聴会で、グアムの知事はインフラの整備のために61億ドルが必要であると証言しました。この費用は、国防総省が算定した基地内部における計画に必要な150億ドル、つまり日本の国会が一部負担を決定した費用には含まれていません。
海兵隊が沖縄から追い出されるのは、その存在が良い影響をもたらさなかったからです。グアムでならよいことがある、ということがありえるでしょうか? 私は皆さんに、皆さん の政府がこの動きを支持することに反対するよう訴えます。皆さんには発言権があり、皆さんの政府はそれを聞かなければなりません。この計画を止めるのに、まだ遅すぎることはありません。私たちは協力して、チャモロの人々と日本の人々が、この協定に反対して闘う必要があります。私たちが、私たちの共有する歴史から何かを学んだとすれば、それは、戦争と軍備拡張がすべての人々を傷つけるということです。この歴史を繰り返してはなりません。(訳―世界社会フォーラム・喜多幡)






09 年12 月10 日毎日新聞朝刊



関西共同行動ニュース No52