集会・行動案内 TOP
 
護憲意識を固める入門書 「今こそ平和憲法を守れ」中北龍太郎 著 を評す 【ルポライター】 鎌田 慧

 「海賊退治」を名目とした海外派兵によって、武力行使の危険性がたかまっている。「イラク派兵」では幸いなことに交戦はなかったが、航空自衛隊による米兵や兵器の輸送、ペルシャ湾での海上給油など、公然と支援を名目にした戦争への加担は拡大されつつある。
 これからは、集団的自衛権の解禁、米軍再編に呼応した自衛隊の軍隊化など、実質的改憲が周到に狙われている。「政権交代」によって、これらのキナ臭い動きをどれだけ阻止できるか、自民党がすすめてきた九条改憲の野望を完全に封じこめられるか、新政権成立後も監視・抑制しつづけることが肝要だ。
 著者の中北さんが人権派の弁護士であるだけに、この本での憲法論議はきわめて実践的である。九条改憲にむかってきた自民党の策動を暴露し、「押しつけ憲法論」を粉砕するために、制定当時の状況がコンパクトに整理され、きわめてわかりやすい。
 そもそも、平和にむかう動きを「押しつけ」とし、戦争にむかうことを押しつけてきた米国の動きにたいして、「自主的」といいくるめようとしているのだから、権力者の言葉は大衆欺瞞である。平和憲法を「押しつけ」というなら、だれにた
いしての「押しつけ」なのか、と著者は問いかけ、「押しつけられた対象は政府つまり権力者たちである」と答えている。
 敗戦直後の政府は、あたらしい憲法を、天皇主権の「帝国憲法」の修正でとどめようとしていた。それを平和、人権、民主の憲法にしようとするせめぎ合いこそが、「押しつけ」などではなく、欧米の市民革命の成果、ポツダム宣言、国連憲章、そして戦火への反省を集約したものだ、と著者は力説している。
 武力によらない平和構想の具体論としてあげられているのは、中米のコスタリカの「非武装憲法」である。米国の裏庭にあってなお、毅然として武装放棄したのは、「内戦の反省」からだ。それでもコスタリカは、米国の圧力に屈して「イラク戦争支持」の有志連合に名前を連ねたのだが、学生や弁護士たちが「憲法違反」と訴えた。
 これにたいして最高裁憲法法廷は、違憲と判断、大統領の支持発言を無効とした。日本政府ばかりか、日本の裁判所の憲法無視は糾弾に価する。そのまま黙認しているのは恥ずかしいかぎりだ。「政教分離の緩和―戦死のススメの制度化」の章は、靖国神社批判である。首相や閣僚の靖国参拝は憲法違反であり、憲法改定の重要なターゲットにされている。が、反対の世論が強まった結果、今年は麻生首相(当時)は参拝できなかった。
 このように、憲法は闘うものであり、それをささえるのは国民の意識の高さである。この本は、護憲意識を鍛える実践の書であり、運動に参加するための明快な手引き書であり、実践の現場で役立つ貴重な入門書である。




関西共同行動ニュース No51