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『自衛隊派兵恒久法に反対する』 半田滋・講演要約(東京新聞編集委員)

 【十月五日の「戦争あかん!基地いらん!」集会への事前学習会として、九月三日、東京新聞社編集員の半田滋さんの講演会が開催されました。以下講演内容を要約します。文責・古橋】

 ■自衛隊の現在
 今日、福田康夫首相が辞任しました。そしてこの日には防衛省で自衛隊高級幹部に対する年一回の首相訓示を受けるための会合が予定されていたのですが、出席しなかった。自衛隊法上の最高指揮官たる首相が、その責を放棄し、代理人もなく、自衛隊始まって以来の出来事ではないでしょうか。

 この自衛隊は現在どのような組織としてあるのか。半世紀ほど前に米軍の要請で、ソ連牽制ため「最低限の実力装置」として発足した「警察予備隊」は、世界第五位の軍事費を使う軍隊になりました。イージス艦含め護衛艦が六十隻あります。戦闘機は三百機あります。陸上自衛隊員は十六万人、戦車八百輌の堂々たる軍隊です。その自衛隊の役割が九一年のソ連崩壊で変質します。そのことでアメリカのジャパンパッシング(日本無視)がはじまり、ために同時に起こった湾岸戦争で日本政府のアメリカに対する軍事的貢献策を打ち出す結果となりました。

■テロ特措法の現在
 それがペルシャ湾への掃海艇の派遣であり、カンボジアPKO派兵につながっていきます。モザンビーク、東チモール、ゴラン高原など過去五回にわたって法律化され、「国連の要請の下で」実施されました。しかし、今実施されている「インド洋上での給油活動」はそうではない。〇一年九・一一同時多発テロが起き、アメリカはアルカイダを犯人と決め付け、それを支援していたアフガニスタンのタリバン政権に対し空爆を開始します。日本はすぐに「テロ対策特別措置法」という法律をつくり、自衛艦を送り出して多国籍軍の「海上阻止活動(=武力行使)」には参加できないかわりの後方支援を開始しました。

 法律が適応されて二日後にはタリバン政権は崩壊します。にもかかわらずその後七年にもわたって給油活動が続いているのはなぜでしょうか。昨年九月、福田元首相は特措法制定の理由を「アメリカの戦争協力のため」とはっきりと答え、そして高村外務大臣(当時)は「崩壊後はカルザイ政権の許可の下で継続している」と答えている。さらに事実としてはどうなのか。実際に私はインド洋に行ってみました。そしてそこのアメリカ指揮官に聞くと「今実施しているのは海上警備活動にすぎない」と答えました。まるで内容が変質しているにも関わらず、同じ法律が適応されているのは問題ではないでしょうか。そもそもアメリカは「これは自衛戦争である」と国連に報告していますが、その意味は緊急避難的に許された戦争行為としてでしかなく、七年も要する説明にはならない。また、アフガニスタンには平和維持軍として現在五〇数カ国が参加していますが、タリバンの復活でイラクより危険な事態になっています。アフガニスタンの平和のために日本は何ができるのか、私は再考すべき時期にあると考えます。

■イラク特措法の現在
 〇三年にアメリカは「イラクが大量破壊兵器を持っている」ことを理由に、アルカイダを支援することを恐れ、攻撃を開始します。(今はそうした事実のないことが明らかにされているが)小泉首相(当時)は、世界に先駆けて「アメリカ支持」を表明しました。その結果「陸上自衛隊」の派遣を断れなくなりました。同年七月、「イラク特措法」ができます。何を支援するか考えたあげく道路建設・飲料補給・医療支援をすることにします。「非戦闘地域」と言われるサマワで、何回もの攻撃を受けながら要塞を作って2年半常駐して帰ってきました。かかった費用が七百億円です。
 今は航空自衛隊が、五月の名古屋判決で「違憲」と指摘されたように、クェートの米軍基地から米兵をバグダットまで運んで戦闘行為をさせています。そこは「戦闘地域」であり「米兵の輸送」は「イラク特措法」では想定されていません。

 一方で自衛隊の武器使用基準がどんどん緩和されているという事実があります。自分を守るため以外に隣の米兵を守るための武器使用は可能とされ、すでに国際的基準に遜色なく使用できます。

■米軍再編の現在
 「在日米軍の再編」の意味は、米軍再編=合理化・効率化の結果であって、その際、アメリカは「日本には米空軍を置く必要はない」と判断しました。その意味は「日本には差し迫った脅威は存在しない」と判断しているからに他なりません。そうすると日本は、外交安全政策だからと米軍に毎年思いやり予算として5千億円ものお金をなんのために出しているのか、という問題になる。

 在日米軍は、日本を守るためにではなく「拠点」として日本にいるに過ぎません。にもかかわらず日本はこの再編に要する費用三兆円を負担することになっています。そうすると、年間防衛費から四千億円もの支出が発生します。その意味は年間防衛予算で人件費・後年度負担費・基地交付金などを省くと残りません。つまりこれまでのように災害派遣ができなくなります。

 また、日米軍事一体化の中でミサイル防衛がありますが、その費用は年間千五百億円と言われており、完成するまでに何兆円かかるのか見えていません。そして自衛隊法の改正により海外派遣が正式に本隊任務となり、米軍の後方支援部隊として「中央即応集団」という組織が発足しました。
 こうした既成事実の結果として、憲法九条の改正が必須とされ、再編問題に歩調を合わせるがごとく自民党の「自衛隊を自衛軍にする」という改正案が出てきたことに注意を要します。

 小沢民主党は、福田首相との話し合いで「テロ特措法の延長」では一致しなかったものの「自衛隊派兵恒久法」制定では意見の一致を見ました。その意味は政権が民主党に代ろうとも、結果として憲法改正が必須のものとして出てこざるを得ないだろうということです。
そうした時に、そうさせないために何ができるのか。そのためにこそ皆さんの日頃の活動が意味をなしてくるのではないか。こうした事実をさらに知らしめて行くことに意味があると考えます。



関西共同行動ニュース No48