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『給油法から恒久法へと戦争する国への流れを断ち切ろう!』 中北龍太郎(関西共同行動)

■麻生はタカ派である 
福田首相の政権投げ出しも、安倍首相と同様、海上自衛隊によるインド洋上での給油支援活動を目的とするテロ特措法延長問題に行き詰ったことが大きな要因でした。総選挙に向け自民党への人気取りのために行われた茶番劇の総裁選を経て権力を手中にした麻生首相は、今のところ本音発言は抑制しているため、そのタカ派としての本性が露わにはなっていません。しかし、過去の言動などを見ていくと、相当のタカ派であることは歴然としています。その幾つかを挙げておきます。
(歴史認識)「創氏改名は朝鮮人が望んだ」、「日本が植民地教育を行ったから、台湾は教育水準の高い国になった」。(靖国問題)「靖国に天皇陛下の参拝あれかし」、「中国が参拝を中断しろと言えば言うほど行かざるを得ない」、特殊法人国立追悼施設靖国社を提唱。(改憲問題)「占領体制に端を発する戦後体制が国家を弱体化し、歴史を否定し、日本人から誇りを奪い続けてきた・・・日本の歴史・伝統の上にたって日本のにおいがする日本らしい憲法を作る方向に議論を高めねばならない」。(小泉政権の評価)「小泉改革で歴史に残るのは自民党結党以来できなかった有事法制と国民保護法制を通したことだ」。
安保政策では、麻生は〇六年外相在任時に、ネオコンが対テロ戦争の対象地域とした不安定の弧とほぼ同じエリア内における「自由と繁栄の弧」戦略を打ち出しましたが、これはネオコンの戦略を補完し中国・ロシアの包囲網づくりをめざしたものでした。そして首相に就任するや、所信表明演説では、対テロ戦争支援を宣言し、日米同盟を不変の基軸としてその強化を第一とうたいました。そして、国連で演説するために訪れたニューヨークで、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈は変えるべきであると記者団に語っています。このように、米国属国化の誓約が麻生の初仕事だったわけです。

■給油法から恒久法へ
特措法延長問題は、民主党のこれまでの対決姿勢や公明党が衆院での再議決に否定的だったことから、麻生政権下でも鬼門になるとの観測が強まっていました。ところが、民主党が驚くべき豹変をしたことから、この十月中にも延長が決まりそうな国会情勢になっています(ニュース送付のころにはすでに延長されているかもしれません)。民主党は、昨年の国会では給油支援は違憲と猛反対し、徹底審議を要求して越年決着となりましたが、今回は早期採決を提案したのです。これを見た公明党は再議決に応じると態度を一変させました。かくして、米軍の不朽の自由作戦を支えるための給油活動続行の可能性が一気に高まったのです。
 民主党のこの豹変は、早く解散させたいという動機もさることながら、日米同盟の強化を第一の原則(小沢一郎代表)とし、日米同盟を日本外交の基礎とし、米国と役割を分担し責任を積極的に果たす(衆院選マニフェスト)といった党の安保政策にその根本的原因があります。こうした安保政策のアフガン支援バージョンが継続審議となっている「アフガニスタン復興支援法案」で、そこには、陸上自衛隊のアフガン本土派兵、武器使用基準の拡大が盛り込まれています。これらから、米国のアフガン戦争支援という点でも、自民党と民主党とは五十歩百歩といえるでしょう。十月中の特措法延長を可能にした民主党の安保第一主義は、選挙公約ではあいまいにされていますが、仮に同党が政権を奪取すればはっきりと全面的にその姿を現すものと考えて間違いないでしょう。
 政局がどうあれ、自・民両党とも恒久法の早期整備も掲げていることから、特措法の次に、衆院選後来年の通常国会に向けて派兵恒久法の制定に向けた動きが強まることが危惧されます。そうした政治動向の中で、福田―小沢会談で一旦合意を見た大連立政権構想が現実化するかもしれません。恒久法が制定されれば、日本は戦争する国へ大きく変貌を遂げることになります。そしてその延長線上で、いよいよ改憲の動きも本格化することになるでしょう。

■米一極支配終わりの始まり
 特措法延長→恒久法制定→改憲は、米国と共に戦う戦争国家づくりの道であり、日本の属国化を一層深めるばかりです。この道は、これからの世界の潮流に逆行するものであり、日本を世界から孤立させる愚かな政治選択です。そのことは、米国の戦争政策がイラクでもアフガンでも破綻をきたし、それも大きな契機となって米国が冷戦後めざした一極支配が失敗し、世界は無極化ともいうべき多数参加型の秩序形成に向っていることからはっきりしていることです。
 イラクでは、米軍の軍事作戦により多くの市民が犠牲になったことから、米政府の強い影響下にあるマリキ政権でさえ、他国の軍隊が駐留している事態は好ましくないと表明するような状況になっています。そのためもあって、今年末には、外国軍の駐留の根拠とされてきた国連安保理決議が失効することが確実視される中、政府も米兵の空輸活動を担ってきた航空自衛隊の撤収を決定せざるを得なくなりました。
 アフガンでも、空爆による市民の犠牲の増大で反米感情が高まり、それが原因で米軍の主敵とされてきたタリバンが勢力を増し、そのため米国の軍事介入が行き詰まっていますし、今やカルザイ政権はタリバンとの和解をめざすようになっています。アフガンの隣国・パキスタンは、アーミテージ国務副長官の「我々の側につくかそれとも空爆で石器時代に戻るか」と恫喝されて対テロ戦同盟国となったのですが、アフガン駐留米軍の越境攻撃に反発を強めており、米国と亀裂を深めています。
 イラク戦争は米国経済に総額三兆ドルの負担をもたらし(ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ著「戦争経済」)、その失敗によってイラクシンドロームが広がっています。これに金融破綻が重なって、米国の一極支配の野望は打ち砕かれてしまいました。多数参加型世界秩序やその下での多国間協調の対極にある同盟関係は、今後確実に廃れていく運命にあります。二一世紀の日本の希望のためには、安保第一主義の克服が何よりも求められています。
関西共同行動ニュース No48