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●4.17イラク派兵違憲判決 山本みはぎ(自衛隊イラク派兵差止訴訟の会 事務局)

■画期的な4・17イラク派兵違憲判決
4月17日の、自衛隊イラク派兵差止訴訟控訴審判決で、名古屋高等裁判所民事第3部(青山邦夫裁判長、坪井宣幸裁判官、上杉英司裁判官)は、航空自衛隊のイラクでの活動は、イラク特措法2条2項同3項に違反し、憲法9条1項にも違反するという画期的な判決をくだした。裁判提訴から4年、弁護団は約90もの主張書面や証拠を裁判所に提出し、原告支援者も法廷外での集会・デモ、署名、講演会などなど裁判を広げる闘いを続けてきたこと、また、全国各地で様々な人たちによって取り組まれたイラク派兵反対の活動が、この判決を引き出したといえる。それにも増して、2003年3月のイラク攻撃開始以来のイラクの凄まじい現実と、政府が進める派兵国家化に対する、司法の危機感とがこの判決を書かせたのではないか、と思う。
判決全体を評価し展開する能力も紙面もないが、ポイントを言えば、判決文はまず、「当裁判所の判断」で、「本件派遣の違憲性について」を展開している。「自衛隊は多国籍軍に参加」と認定し、多国籍軍はイラクの主権回復後も占領軍として駐留していること。そもそも、アメリカのイラク攻撃は「大義がなかった」し、そのアメリカ軍は、ファルージャをはじめイラク各地で「掃討作戦」を行い、それによって多くの市民が殺されている、と認定している。更に、航空自衛隊が活動をしているバグダッドについてもアメリカは大規模な掃討作戦を展開し、とりわけ空自が活動を開始した2007年からは掃討作戦や空爆がより激しくなっているとしている。バグダッドは戦闘地域であり、「航空自衛隊の活動は多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っている」のであり、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力行使を行っている」としている。つまり、日本は、今、「戦争をしている」と認めているわけだ。裁判所が認定したこの事実は非常に重い。
更に、平和的生存権についても「すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である。単に憲法の基本的精神や理念に留まるものではない」として平和的生存権を憲法上の法的な権利として認めている。平和的生存権が侵害されてと裁判所に法的保護・救済を求められるケースとして、判決文で例示している内容は、「憲法9条に反する国の行為、すなわち戦争の遂行、武力の行使等や、戦争の準備行為等によって、個人の生命、自由が侵害されまたは侵害の危機にさらされ(以下略)」としている。湾岸戦争以来、海外派兵に対する違憲裁判が、常に平和的生存権は抽象的なものであるとして門前払いをされてきたことを考えれば、この判決が示した基底的権利としての「平和的生存権」が今後の運動にとって大きな価値のあるものに思える。

■ 政府は裁判所の判断を
真摯に受け入れるべし
一方、この判決内容に対する、政府関係者の反応は、田母神統合幕僚長の「そんなのかんけいねえ」はじめ、福田首相の「傍論だ。判決は国が勝った」などと一様に判決を軽視・無視するものであった。
政府関係者からのこのような発言は、法の支配を無視し、三権分立に反する暴論である。この国は、憲法を基礎に法律が定められ、それが守られることを前提にした立憲民主主義国家を前提にし、権力の暴走を止めるために裁判所に違憲立法審査権を与えている。政府は憲法や法に従わなければならないのは当然であり、憲法99条で憲法尊重擁護義務を課している。決して「傍論」でもなく、「関係ねえ」ことでもない。このような政府関係者の対応は厳しく批判されなければならない。

■4・17イラク派兵違憲判決を活かし、イラクからの撤兵、派兵恒久法阻止の闘いを
判決後に行った訴訟の会の第5回総会で、上告はせず、今後はこの判決を活かし、更にその意義を広める中で、派兵恒久法の阻止と来年7月で期限切れを迎える前にイラクからの撤兵を実現するまで会の活動の継続を確認した。
弁護団を中心に、各地での学習会や報告会の呼びかけを行っており、すでに全国各地130箇所にも上る報告会や学習会が実施ないし予定されている。また、秋の臨時国会に向け、「4・17イラク派兵違憲判決に従いイラクから、航空自衛隊の即時撤退」を求める署名活動をはじめ、判決文全文を掲載してパンフレットもすでに1700部を送付している。
判決文には今後に活かすことのできるものがたくさん含まれている。ぜひ判決文を丁寧に読み、各地で判決学習会・報告会を開き活かしてほしい。撤退要求の署名も多く集め、提出行動につなげていきたいと思っている。
この判決を勝ち取ったのは、一人名古屋の訴訟の運動だけでなく、今のこのすさまじい改憲状況に対して、全国の様々な反戦・不戦・反改憲運動の闘いの成果だと思う。また、この5年間、ますます深刻化するイラクの現状がこの判決を書かせたものだとも思う。この判決を活かし、イラクからの撤兵と派兵恒久法・改憲阻止を実現させるのは私たちの今後に課せられた課題である。
学習会の申し込みや署名用紙は以下の訴訟の会のHPを参照ください。
http://www.haheisashidome.jp/index.htm
関西共同行動ニュース No47