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●反改憲のうねりで 派兵―改憲の策動をつぶそう! 中北龍太郎(関西共同行動)

福田政権は、超低空飛行からダッチロール状態に入ってもなお派兵恒久法をあきらめてはいない。福田首相は年が明けるや年頭記者会見、施政方針演説、衆院予算委などで熱心に恒久法制定を訴え、これを受けて自民党は4月中旬党内に恒久化法制定プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、その後福田―太田(公明代表)会談を経て5月23日には与党恒久法検討PTが発足しました。与党PTは、今通常国会中に週2回のハイピッチで会合を開いて法案のたたき台づくりを主目的に活動してきました。
恒久法制定をそんなに急ぐのは、インド洋での給油支援活動は来年1月、イラクでの空輸支援活動は来年7月が期限で、おまけに、多国籍軍がイラクに駐留できる根拠となっている国連決議が今年12月に切れるという難題も持ち上がっているだけに、その前に特措法の改定によらないで両活動を継続できる法的根拠を整備しておきたいといった思惑があったからです。急いできたのはこうした事情があるからですが、現状の派兵継続は恒久法の射程範囲のごく一部に過ぎず、その本命はいつでもどこへでも海外派兵ができる体制をつくりまた武力行使の範囲を広げることにあります。与党PT第1回会合で配られた「恒久法の主要な論点」と題されたペーパーには、検討項目として、自衛隊の海外活動の新メニューとして「警護活動」「治安維持」「船舶検査」が取り上げられ、また、任務遂行のための武器使用など武器使用権限の拡大が挙げられていました。
新メニューはどれも強制措置をともなう活動であり、そのための武器使用が許されるとなると、イラクで日夜米軍が行っている掃討作戦類似の活動が展開できることになります。それはまさに憲法が禁じる海外での武力行使に道を開くことにほかなりません。憲法破壊の恒久法制定は、自衛隊が対テロ戦争での治安維持作戦や非正規戦争で軍事作戦を展開する米軍とともに戦うことを求める米国の圧力にひれ伏すものです。これにより、日本は地球規模での日米共同作戦に突き進み、米軍とともに戦う集団的自衛権の行使へ踏み込んでいくことになります。
恒久法制定は立法改憲であり、これを明文改憲への決定的な一里塚にしようというのが権力者たちのプランです。安倍改憲政権の挫折、ねじれ国会そして福田政権の低迷といった自民党政権の三重苦もあって、安倍政権が改憲原案づくりのためにしゃかりきで作った憲法審査会は、今通常国会では完全に活動停止においやられました。改憲派はヤッキになって審査会の規則制定の働きかけなどをして審査会を動かそうとしましたが、今のところ思うようになっていません。改憲派は、改憲投票法を作ってみたものの改憲実現への道は遠いと思い知っただけに、より一層、恒久法制定を改憲への布石と位置づけ力こぶを入れてくるでしょう。
恒久法制定が改憲への近道と意味づけられる理由は、自民党と民主党の意見が他の法案に比べて一致を見やすいからです。昨年の福田―小沢会談で恒久法制定が合意されたことは未だ生々しく記憶に残っているところです。また、民主党の給油新法案には恒久法の早期整備が盛り込まれていますし、またなんらかの国連決議さえあれば陸上自衛隊の派兵、海上阻止活動への参加も可能という内容も含んでいます。小沢代表がアフガンのISAF(アフガン国際治安支援部隊)への参加を打ち出し、これに悪乗りした福田首相はアフガンへの自衛隊の派遣を検討すると発言し、そのためのアフガン調査団を現地に派遣しました。「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も恒久法案づくりを進めていますが、これには自・公だけでなく民主党議員も参加しています。
こうした動きを見ると、自・民対決のねじれ国会であっても、恒久法についてはその制定気運がいつ高まって不思議はなく、いつ安保翼賛国会に逆戻りするかわからない情況だといわざるをえません。そして、明文改憲を先取りする立法改憲が実現されると、それが改憲への自・民の接着剤となり改憲機運が熟していく危険が一杯です。そうはさせず、恒久法案を対決法案にするには、派兵―改憲反対の声を高めていくしかありません。
派兵―改憲の危機が続く中、反改憲運動にとって有利な様ざまな動きが起きてきています。その筆頭が名古屋高裁イラク派兵違憲判決です。私たちは、湾岸戦争への軍事協力やPKO派兵に対し全国規模で市民平和訴訟を展開し、法廷で平和的生存権の確立を訴え、派兵や軍事協力の違憲確認を求めてきました。こうした平和と権利のための無数の闘いが違憲判決を引き出すベースとなったのです。9条世界会議も予想を超える成功を収めました。改憲の旗を振ってきた読売新聞紙上で今年5月3日に発表された世論調査で改憲反対が改憲賛成を上回る結果が出、93年以降の構図が逆転しました。市民社会では国会とは大きく違った風が吹いています。
こうした民衆サイドの頑張りもあって、与党PTは今国会中の法案づくりに失敗し、また福田政権も今秋の臨時国会での法案提出を断念し、来年い持ち越すということなりました。私たちは、反改憲この風を追い風に、改憲派がダッチロールしている情勢をチャンスとして、反改憲のうねりを強めましょう。そのために、反派兵恒久法に取り組み、恒久法を作らせない運動に勝利しましょう!
関西共同行動ニュース No47