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 『福田政権はより巧妙な「改憲」政権である!派兵恒久法づくりへの反撃を!』 天野恵一(「反派兵」運動通信・事務局)

 「反改憲」運動通信の第三期の定期購読のお願いの文章は、このように書き出されている。――五月十四日、改憲手続き法は参議院本会議でついに可決・成立した。二〇〇〇年に憲法調査会が衆参両院に設立されてから七年、任期中に「新しい憲法」をつくることを公言した安倍内閣の下で、ついに憲法改悪が具体的に政治日程にのせられることになった。――
 一年を一期として、三年目へ向かっての昨年の呼びかけ文は、教育基本法を国家主義的な方向へねじまげる方向で改悪をしてしまった極右天皇主義安倍政権が、さらに憲法改悪のための手続き法である国民投票法づくりを現実のものとしてしまう。このプロセスへの緊張感にみちた抗議の声として発せられている。
 そこには、ハッキリとした明文改憲へ向かってフルスピードで進みだしたこの政権に対する危機感がみなぎっているのだ。
 他方、安倍政権は小泉政権のアフガニスタン戦争(占領)、イラク戦争(占領)というアメリカを中心とする侵略行動への軍事加担(自衛隊派兵)を持続しつつ、アメリカの要請に突き動かされ、自衛隊の集団的自衛権の行使を合憲とする憲法(あるいは自衛権の)解釈変更を正当化するための首相の私的懇談会(「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」)を座長柳井俊二以下、首相好みのメンバーをずらりとそろえてつくりだした。解釈改憲による平和憲法破壊も加速し続けたのである。
 この明文改憲と解釈改憲を車の両輪とする安倍「改憲」政権に、私(たち)が強い危機感を持ったのは、あたりまえのことであった。ところが、この、極右天皇主義イデオロギー(靖国神社〈大東亜戦争肯定〉史観、皇軍の神聖化)を強化しながら、軍事的・政治的にアメリカ帝国への追従(従属)をさらに強める(アメリカこそ大東亜戦争の相手国であった!)といった、原理的な矛盾を公然化した、安倍政権は、その矛盾ゆえに失速していく。そして、強行採決をくりかえしたこのファッショ的政権は「消えた年金」、官僚の「汚れた金」問題や「政治的暴言」があいつぎ、人気は急速にダウンし、参院選で惨敗(小泉から引き継いだ構造改革=「格差」拡大政策への批判も噴出し、ここに批判を集中した民主党が大勝)。参院は民主党中心の野党が多数、衆院は自民党が圧倒的数という「ねじれ国会」がうみだされることになった。
 こうした国会状況は、与党「公明党」の安倍自民党への強い反発をもうみだし、アメリカの強い要請をうけた、インド洋・ペルシア湾岸での給油の継続のための「テロ特措法」延長(あるいは新テロ特措法づくり)が困難になる。参院で三分の二で再可決という方法が実現できず、安倍は政権を放り出してしまう。この"自爆"劇の混乱の中で福田康夫政権がスタートする。この政権は一転して、「国民生活」重視を強調、「改憲」・「集団的自衛権」の行使といったハードなイデオロギー問題には、ふれないスタイルを示した(成立した国民投票法に基づく憲法調査会もスタートさせなかった)。この時、改憲へのスピードがダウンしたことを実感した、私(たち)は、一時的にホッとした気分におちこんだ。そして、「ねじれ国会」では、アフガニスタン戦争用の給油が、アメリカのイラク戦争にも転用されているのでないかといった疑惑の追求もはじまり、反戦・反改憲運動の中にも野党民主党の動きにも期待を持った気分が出てきた。しかし私たちは、この気分は危険だと考えた。〈民主党も、もう一つの「改憲政党」であることを忘れるな、福田政権とくんで、より巧妙な改憲策動が隠然と進められる可能性は高い。政局は大きく変わって、いろいろな活用すべきチャンスもうまれていることはたしかであるが、民主党には幻想を持つべきではない〉。これが私たちのスタンスであった。
 そしたら、福田首相(自民党)と小沢一郎民主党党首との「大連立」構想の浮上である。裏の仕掛け人は『読売新聞社』のドン渡辺恒雄と元首相・中曽根康弘。精力的に改憲のために動いてきた人物である。ナベッツネは森喜郎、中川秀直、青木幹雄、武部勤などの自民党の大物の賛成を組織し、「大連合」のための両者の会談の舞台を準備した。この会談は、小沢の「国連承認」による恒久派兵体制づくり(武器使用する自衛隊が常に海外派兵できる体制)での「合意」を軸に、両者の間では成立した。ところが小沢は根回不足で、民主党執行部の強い反発にあい挫折。辞職表明、すぐ涙の復帰という茶番劇が展開されることとなった。しかし、この「改憲翼賛国会」づくりに向けた「大連立」の合意は死ななかった。
 その事は、福田政権が、なんとか公明党を説得して、かかえこみなおして、半世紀ぶりの衆院三分の二の再可決という異例の方法で、成立させてしまった(一月一一日)「新テロ特措法」にぶつけた、民主党の対案(昨年一二月二一日提出)を検討してみればよく分かる。
 そこには、自衛隊の武器使用を前提とした派兵恒久法づくりの必要が力説されているのだ(福田政権も恒久法整備に着手しだしている)。
 侵略占領加担法である「新テロ(給油)特措法」を成立させ、派兵恒久法づくりへ向かう福田政権。それに表面的には対立しつつ、裏で共同歩調をとっている民主党(これは小沢一郎が衆院本会議での差し戻された「新テロ特措法」の再可決の投票を棄権し、自民党が民主党の「対案」を継続審議することに賛成したという「ねじれ」現象がこの事実をハッキリと示している)。福田政権は、「明文解釈」のテンポはダウンさせ(「改憲」というイデオロギーを隠し)、民主党を巻き込んで平和憲法破壊の「解釈改憲」をスピードアップさせているのだ。
 安倍政権とはちがってより巧妙な政治の改憲政権。これが福田政権である。
 安倍政権の"自爆"は改憲の動きの"自爆"だったわけではない。福田政権の派兵恒久法づくりに正面から対決する「反改憲」運動へ向けて、安倍政権に対する緊張感(危機感)以上のそれを持って、私たちは動きださなければならない。
関西共同行動ニュース No46