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 『粘りづよく続く民主主義をつくる闘い、これ以上の岩国基地の機能強化を許さない』 湯浅一郎(ピースデポ副代表)

 二〇〇六年五月、日米両政府による在日米軍再編の最終合意が結ばれてから一年半、この国では、自治体と住民の意志をふみにじる暴政が続いている。広島の近くでは、米海兵隊岩国航空基地への厚木の空母艦載機部隊などの移駐が合意され、自治体の首長が反対しているにもかかわらず、国の姿勢は一向に変わることなく、むしろ米軍再編推進特措法を使って、金で釣る政策が横行し、民主主義のあり方をめぐって、きわめて重大な課題となっている。岩国では、〇六年三月の住民投票で、市民の絶対過半数が米軍再編に反対の投票をし、それを根拠に井原市長は、「これ以上の機能強化に反対」を貫いている。これに対し、政府は様々な圧力をかけ、その極めつけが岩国市庁舎建設への補助金三五億円のカットである。これを理由に市議会多数派は、「市長が米軍再編に反対しているせいで、補助金がカットされ、もらえるものももらえなくなったのだ」と批判し、〇七年度予算にことごとく反対し、市の予算案は何度も否決され市政の空転が続いてきた。
 〇七年十二月二六日、市議会十二月定例会の最終日に、井原市長は時間的にもこれが最後だと念を押し、とうとう五度目の補正予算案を提案した。井原市長はこの予算提案に際し、「今回が最後の機会だ。端的に申し上げる。私のクビと引換えに、大切な予算をぜひとも市民のために通していたただきたい。」と辞職と引換えでの予算の承認を求めた。
 もしこの議会で予算が可決されなければ、国へ要請している今年度中の合併特例債借入は不可能になる。この財源を全て一般市費で賄うことになれば、数百億円分の事業も不可能になる。しかしあくまで「艦載機移転」を容認し、国からの振興策を眼目に置く賛成派議員らは聞く耳を持たず、補正予算を審議した委員会はその議案を「否決」した。その後、舞台は本会議に移り、ここで財源の大部分二七億円を合併特例債として残した上で、国からの補助金を幾らか計上した妥協案が賛成派から出され、市長提案の原案が否決された一方、当面の財政運営が可能となる修正案が成立した。こうして一年間続いた庁舎財源問題は終息した。
 そして、今、二月十日投票の出直し市長選挙の真っ最中である。議会と市長のネジレ現象を解決するために、まず市民の艦載機反対の意思を市長選挙に向け集中せねばならない。しかし、財政を悪化させたのは現職市長であるという宣伝が行われ、楽観できない情勢である。「防衛・外交は国の専管事項」を盾にして、地方自治や民主主義を破壊する行為が国によって行われ、地域の対立をあおっているという全く許せない構図がある。防衛省の守屋前事務次官の贈収賄や毎年数兆円の調達に伴う疑惑が問題になっている中で、岩国では、たった数十億円をめぐって自治と民主主義の破壊が行われているのである。
 正直なところ、運動側の決め手は見あたらない。が、米軍再編に反対し、これ以上の機能強化に反対する説得力を持つためには、現状の基地による生活破壊や人権侵害に対して、敏感に反応し、批判的に行動する世論は不可欠である。そこで、現在の基地による様々な問題を、改めて告発することに力を注ぐべきであるとの議論が起こってきた。
 そこで、まず米軍や自衛隊基地による騒音問題を取り上げる準備が進んでいる。岩国では、全くこの種の裁判が提起されてこなかった。国はこうした市民の足元を見て、今回の様な再編案を岩国へ押しつけてきたと言っても過言ではない。厚木や嘉手納など全国の基地の町で航空機の爆音に対し訴訟を提起し、「うるささ指数」七五を基準に過去分の損害補償を勝ち取ってきた経緯がある。個人住宅の防音工事補償区域に住む住民の提訴に、国は確実に補償を続けなければならない。これは、司法が、「航空基地周辺は違法状態にあることを法的に認めている」という意味で大きな意義がある。それを明らかにするためにも、騒音訴訟は重要である。岩国基地周辺でも該当する騒音区域に住む住民の訴訟提起が提起されれば、今進む国の策略に大きな一石を投じる意義がある。できるだけ早い内に提訴できる体制を急ぎたいと準備を進めている。
 他方で、米軍再編のもう一つの側面は、米軍と自衛隊の一体化、自衛隊の海外派遣の本務化にある。参議院の与野党逆転を踏まえて、旧テロ特措法は、期限切れとなったが、内容が何も変わらない給油新法が上程され、参議院の否決にもかかわらず、衆議院の三分の二の多数による再議決が強行され、成立するという暴挙が行われた。給油は、二月半ばにも再開されるという。そうなれば呉も再び動き始めることになる。海外派遣・派兵を自衛隊の主任務にしてしまうための海外派兵恒久化法案がこの通常国会にも出てくるかもしれないという情勢もふくめて、海上自衛隊は、その文脈の中で、これまで以上に海外に向けた軍事拠点としての性格を強めつつあることを再度問題にしていかねばならない。

関西共同行動ニュース No46