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 『国民投票に勝つために、意見広告運動の成功を!』 中北龍太郎(関西共同行動)

 〇八年は、五七年ぶりの衆院再可決=国民主権蹂躙の暴挙による給油新法の制定というきな臭い動きから明けました。この強行突破は、日本を米国と共に戦う戦争の国に仕上げるところまで対米戦争協力―海外派兵政策を押し進めていくための号砲であり、これにより派兵恒久法から明文改憲に至る動きが一気に加速しようとしています。
 自・民大連立騒動の中でクローズアップされた派兵恒久法制定の動きは、恒久法の早期整備を盛り込んだ民主党の給油新法の対案が衆院で継続審議となったことにより、いよいよ本格化しようとしています。
 派兵恒久法はいきなり降って湧いたのではなく、米日軍事同盟強化の一連の流れの中で課題として持ち上がり、着々と制定に向けた準備が進められてきました。自民党サイドの恒久的海外派兵体制づくりの準備は、〇二年福田官房長官の私的諮問機関「国際平和協力懇談会」による恒久法制定の提唱から始まり、翌年から法案化の作業が開始され、〇六年八月に「国際平和協力法案」の発表に至っており、万端整っています。そして、福田首相は一月十八日の施政方針演説で、恒久法制定を打ち出しました。
 他方、民主党小沢代表は、旧自由党時代の〇三年に、国連決議を条件として武力の行使をともなう国際安全活動への積極的協力をうたった「安全保障基本法案」を国会に提出しています。国連協力の名による武力行使正当化論は小沢の持論で、恒久法の早期整備をうたった民主党対案は、この小沢の持論が民主党全体の政策になったことを意味しています。
 恒久法制定の動きの背後に米国がいることもまぎれもない事実です。〇七年二月に発表された第二次アーミテージ報告は「日本軍の海外配備の道を開く」恒久法案づくりの動きを絶賛したうえ、「短い予告期間で部隊を配備できる安全保障のパートナーの存在を願っている」として制定に圧力をかけています。こうした外圧が、自・民両党の垣根を越えた米日軍事同盟基軸論の支配する安保翼賛体制の下でいとも簡単に受容され、恒久法制定の動きとなっているのです。
 自・民どちらの案にせよ、派兵恒久法ができると、海外での武力行使禁止原則は空洞化し、自衛隊が他国の民を殺傷し自らの血を流すようになっていくことになります。こうした派兵恒久法の制定は立法改憲にほかなりません。そして、その既成事実をバネにして、この法律に合うように憲法を変えなければならないといった改憲の圧力が一層強まることは必至です。
 安保翼賛国会の下で、自・公・民は恒久的海外派兵体制づくりは必要という点では一致団結しており、後はその中味のすり合わせであり、それは権力獲得ゲームの帰趨如何によって決せられることになりそうです。そんな情況下で大連立構想が浮上してきたのです。大連立の動きがまとまっていけば、派兵恒久法の制定は必至です。そして、その動きが改憲へと直結していることはいうまでもなく、むしろそこに本命があるといって間違いないでしょう。
 憲法上改憲案の発議には両院とも総議員の三分の二以上の賛成が要件となっており、改憲の課題はそれだけの頭数をそろえる必要からも、法制定以上に大連立形成のモチーフになりやすいのです。しかも、抽象的に改憲に賛成する議員数が三分の二を超えていても、政党間対立が激しく発議する対象となる改憲案がまとまらなければ国会発議は頓挫するということになりますから、それだけの賛成を得る改憲案をまとめなければならす、そのためにも大連立が期待されています。大連立とまではいかなくても少なくとも改憲のための大連合を形成することが課題だ、と権力者たちは考えているはずです。
 自・民両党が一時、改憲手続法について十分協議して両党合意の上で制定して、そこで敷かれた協調体制の下で改憲案のすり合わせをしようと合意をしていたのもそのためです。いいかえれば、改憲のための協調体制の究極のかたちが大連立政権だといえるでしょう。民主党枝野憲法調査会会長(当時)が、民主党と協議をしないで自分達だけで改憲案を練っている自民党は究極の護憲政党だという発言はなんとも象徴的です。
 ところが、改憲協調路線は、安倍改憲政権が極右カラーを丸出しにし強権路線を遮二無二に押し進めたため破綻しました。福田内閣の民主党と協議したいと繰り返す低姿勢には、改憲協調路線の復活の狙いも込められています。これからの改憲の動きは協調路線の軟着陸を画策する方向で進められると予想されます。だからといって、改憲勢力にとって安倍政権がマイナスだったというわけではありません。安倍改憲政権は、改憲のための置き土産を残していきました。それらは改憲推進のために活用されることになるでしょう。その一つが改憲手続法です。手続から内容へというのが改憲派のゴールへのめざし方であり、改憲手続法の制定は改憲の動きを確実にステップアップしました。もう一つの置き土産である安保法制懇は、集団的自衛権の行使の部分的解禁を企図した最終報告を間もなく出そうとしています。この文書が今後究極の解釈改憲に活用されないという保障はありません。これらの安倍改憲政権の「成果」の上に、派兵大連立あるいはその崩れ型の派兵大連合が形成されると、いよいよ改憲発議―国民投票の日が迫ってくるということになります。
 私たちは現在、改憲に向う危険な動きに抗して、大阪・関西を中心に、改憲反対の意見広告運動を展開しています。この運動を成功させ、改憲国民投票で勝利し九条を守りきるための草の根の反改憲運動の基盤を作りたいと願っています。是非この運動に共鳴していただいて、自ら賛同人になりまた賛同人を広げてくださるようにお願いする次第です。
関西共同行動ニュース No46