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『<シンポジウム報告>憲法改悪とどう立ち向かうか』 古橋雅夫(関西共同行動)

 第21回参議院選挙も終り、自民党の歴史的大敗北、民主党の大躍進という結果が、今後の国会動向に如何なる影響を与えるのか・・・そうした興奮の覚めやらぬ中、市民レベルでの反改憲に向けた運動が再開された。その第一弾が8月2日に開催されたこのシンポジウムだ。
 参院での与野党逆転にも関わらず、民主党は改憲派が多数を占めるという危機感。安倍改憲路線はいささかの停滞を余儀なくさる。その改憲反対の声を広げるチャンスをものにすべしと言う意見。ここにきて公明党も「九条改憲」については自民党に真っ向から異を唱え始めた。より政治的には、改憲論議をしにくくするようなアプローチを市民運動側から民主党支持基盤に対し積極的にすべし・・・という情勢判断もあるだろう。
 また、選挙結果はどうあれ、既成事実として「改憲手続き法案」は可決成立しており、そのための憲法審査会設置が予定されている。即、民主党の政治姿勢が問われる事になる。もとよりこの法案は次国会で廃案にされるべきものと考えるが、改憲発議をさせない世論つくりを行い、最後には国民投票で「改憲反対」の1票を投じることしか私たちには残されていない。 そうした「反対」票はどこから生じるものなのか。
この日のシンポジウムは、こうした事態を受けてあらためてその原点を確認するために開催された。ために、異なる立場で日々自らの課題を実践しつつ、かつ改憲反対の声をあげている4人の方々をパネラーとしてお迎えした。
 報告内容は都合要旨ゆえ、了とされたい。

●松浦悟郎さん・・・大阪宗教者九条の会・呼びかけ人。カトリック教会の司教
 最近の動きで特徴的なことは、全国各地でキリスト者に限らず、仏教会・新宗教者間で多くの「宗教者九条の会」が作られ、またその宗派の違いにも関わらず、互いの交流が深まっている現状です。
その中で私が今やろうとしている事は「ピースナイン○○の会」という3人〜5人を単位とするグループづくりです。○○の部分は各グループの自由ですが、3人あればすぐに会が出来てしまいます。その結果、現在千ぐらいの会が出来ています。何よりも3人という単位は個と集団という関係性の中で「自立」を保証し得る範囲であるという理解です。その自立性は、日常何かしても、また何もしなくても構わず、唯一、「九条を守る」という意思表示が必要な場合にそれを行使するという一点で繋がっています。憲法12条に書かれた「自由の権利」は、一人一人の「普段の努力」によってのみ担保された権利であり、その行使のチャンスをいまこそ発揮すべきと考えるからです。

●永久睦子さん・・・アイ女性会議(旧日本婦人会議)・大阪代表
 社会的弱者の立場、中でも女性の立場からの発言が私に求められていると思います。そこで、憲法九条と共に憲法24条(両性の平等)について意見を述べたいと思います。自民党の中では九条以上に改憲課題として取り上げられていますが、その背景は、家父長制の復活であり、男を戦場に駆り立てるための内助の功としての女性像の復活を望んでいるからです。改憲派が問題視する以上に改憲反対運動の中でのこの問題についての認識が少し弱いように思います。これは「あたらしい教科書を作る会」や「拉致被害者を救う会」などが、自治体の「男女共同参画条例」制定に反対していることと軌を一にする動きでもあります。そうした動きをひろく知らしめるキャンペーンなどを中心に今動いています。
また、私は長く自治体労働者として組合の職にもあり、その中で「市役所内の玄関に憲法九条のタテカンを立てる」ことを運動として追求してきました。その看板は、今でも掲げられています。自分の足元で出来ることを考える事が大事です。既に定年退職していますが、日常的に、部落・障害者・在日など差別と戦う人々との出会いの中で、自分の視座を定めつつ憲法問題に取り組もうと思います。こうした問題意識で、これからも自分の地域で出来ることから運動を広げていきたい。

●楠 敏雄さん・・・障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議・議長
 私は両方の目が見えない全盲の障害を持っています。2歳の時に医療過誤で失明してから60年以上、この障害と共に生きてきました。私が若い頃から理屈抜きで抱いてきた原点が三つあるます。一つは「障害を理由にした不当な扱いを許さない」こと。もう一つは「戦争による被害への憤り」があります。三つめは、イデオロギーとしてではなく、「天皇制が作り出す差別構造を認めない」ということです。
現憲法下で天皇制が認められている事には賛成しないが、今ここでそれを言うつもりはありません。しかし、1959年の現天皇の結婚をめぐるミッチーブームは特に腹立たしく、こんなお祭騒ぎが許されるのかという怒りで一杯でした。その後、私が障害者運動を始めたのもこうした反戦・反差別・反天皇制(反優勢思想)の思いからでした。76年に「全国障害者解放運動連絡会(=全障連)」という組織を作って長年やってきました。今は「DPI(障害者インターナショナル:NPO法人)」というものができていますが、その中でも反戦の声を広げていきたいと思います。

●金麻紀(キム・マキ)さん・・・在日韓国青年同盟大阪府本部組織部・部長
 在日韓国青年同盟は、日本の学校を卒業した在日コリヤン同胞が、母国語を学んだり自らの歴史を学んだりする場所としてあります。今日は、在日の立場から憲法との関わりについて発言させていただきます。
 現在、朝鮮籍・韓国籍を持つ在日コリヤンは60万人ですが、さらに父母のどちらかが在日である、また帰化したコリヤンを合わせると百万人いるといわれています。その8割近くが日本名を使って暮らしています。その存在が日本人には見えていないのではないでしょうか。国籍による就職差別が大きな影を落としています。本名を名乗るか名乗らないかは本人の「勇気」云々ではなく、社会の問題です。特に安倍政権下での北朝鮮バッシング、朝鮮総連への弾圧が激しく、中でも万景峰(マンギョンボウ)号の入港禁止は、年配の人々のささやかな希望の拒絶であり、朝鮮学校の生徒たちの祖国訪問の道を閉ざす事に他なりません。そしてそれに歩調を合わせるように、在日への嫌がらせがエスカレートしています。問題の本質はそれを許している日本社会にあることは明らかです。九条は、そうした中で最後のストッパーです。改悪の結果は見えています。
 参政権が無く、そこで意志を表明できない私たちに出来る事として、「日朝国交正常化」の早期実現を目指して署名活動をやっています。北という仮想敵国は、日本に戦争を受け入れさせるための口実です。対話の場を作り出す努力こそが拉致問題も含めた平和への解決策だと考えます。
(止めよう改憲!おおさかネットワーク・主催)
関西共同行動ニュース No45