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『3/28 憲法(改憲手続き法案)地方公聴会(大阪)報告』 星川洋史(関西共同行動)

 最初から不思議だった。他の3人の意見陳述者はどの政党の推薦かは想像がついた。しかし、今井一さんは、どの政党の推薦で発言するの分からなかった。その今井さんが最初の陳述者だった。今井さんはのっけから言った。「国民投票において最低投票率は設定すべきではない」と「何故なら、50%と設定すれば、反対のものがマイナスの意味しか持たない棄権を呼びかけるから」と。そういうことはあるだろう。しかし最低投票率設定には、有権者の20%以下の賛成でも憲法が変えられる危険を防止するという面があるではないか、と反発を感じながら聞いた。3月28日の改憲手続き法案をめぐる憲法に関する調査特別委員会(衆議院)の地方公聴会(大阪)でのことである。傍聴席は少し空き席があったがほぼ満杯だった。
 さらに、今井さんは、国民投票の対象を憲法にとどめないで国政の諸課題にまで拡大せよとの民主党案に賛成だが、諮問型に限定すべきでなく拘束型にすべきだとした。最後に今井さんは国民投票法の成立を止めるべきでないと強調した。後で、今井さんが与党枠での発言であったことを知った。そういうことになっていたのかと思ったが、これまでの今井さんの住民投票などでの活動や平和に対する考え方を少しだが知っているものとして、「それはないだろう」と思った。
 新時代政策研究会の中野寛成さんは、公聴会をセレモニーに終わらせるなと主張し、情報公開とフリーな国民参加が必要だと訴えた。中野さんはまた、安倍首相のいう戦後レジュームからの脱出は戦前への回帰を意味しておりきわめて危険だと指摘した。現在安倍内閣がやっている「何月何日までに投票法の成立を」というやり方は政府の不当な干渉であり拙速や党利党略はやめるべきと主張した。
関西大学教授の吉田栄司さんは、憲法学者として、憲法学会の見解を紹介しながら自らの意見をのべた。「総理大臣は憲法を守ることを義務づけられており、政府には改憲の発議はできない。一括投票か個別投票かでは個別投票が学会の多数の意見である。最低投票率では80%と設定すべきだ」と述べた。また公務員や教員の改憲手続き法案への運動の参加の制限、罰則について反対の意見を述べ、国会発議から60日後に投票日が設定できることにも十分な討論を保証しないものとして反対した。
 中北龍太郎さんは、@憲法「改正」手続き法案の政治的意味A投票法案の問題点の二つについてのべた。(中北さんの陳述については本ニュースの2〜3ページに詳しく掲載されているので参照)
 これらの意見陳述者の発言の後、船田元(自民)、枝野幸男(民主)、赤松正雄(公明)、笠井亮(共産)、辻元清美(社民)、糸川正晃(国民新党)の各衆議院議員から意見陳述者日の質疑がなされた。質疑の中では、「手続き法と改憲の内容は分けて考えるべき」(自民、公明、民主、今井)と「関連付いている」とする(社民、共産、中北、吉田)の対比が明らかになり、拙速を戒める意見(国民新党、共産、社民、中野、吉田、中北)が多く出された。

◆今井意見に異議あり!改憲反対運動と住民投票運動に「かけはし」を
 
 公聴会を締めくくった中山太郎団長の発言は、おざなりなものだった。そのおざなりさのむこうに、「なんとしても5月3日までに改憲手続き法案を通したい」という安倍政権の意図を見たような気がした。やはり、彼らにとっては公聴会は国会での採決のための儀式のようなものなのだと。もっとも、だからといって、意見陳述人の意見を、儀式のためのお供え物として切って捨てていいわけではない。教えられることも多かった。ここでは、4人すべての意見に感想を述べる余裕はない。私が一番多くの引っかかりを感じた今井さんの意見を検討してみたい。
 今井さんは、これまで、住民投票運動に熱心にかかわってきた。おそらくその運動の延長線上に「国民投票法」を位置づけているのだろう。私たちの周りで、いろいろな課題で協同している人々、とりわけ草の根・市民派地方議員に今井さんと一緒に「国民投票法運動」にかかわっている人が多い。私は、改憲につながる国民投票法制定の運動には賛成しないが、今井さんたち住民投票運動をやり、よりよい国民投票法をめざして運動している人たちと改憲反対運動の間に積極的関係を作る可能性を探るためにも今井さんたちの企画に幾度か参加してきた。しかし、今回の公聴会で、それがきわめて難しいとを感じた。少なくとも今回の今井さんの意見との間では。
 たしかに、最低投票率をクリアさせないために改憲反対派が棄権を呼びかけることは積極的行動とはいえない。しかしまた、「全有権者の20%にも満たない賛成で、憲法九条が変えられる」危険性については、今井さんも考える必要があると思う。私は、憲法について、賛成が全有権者の50%に満たない場合は「96条のいう過半数」とはいえないとするのも、公聴会で吉田さんのいった最低投票率を80%にというのも一つの案だと思う。しかし、今井さんは、反原発やダム建設反対での住民投票の経験から、それでは積極的な課題に反対の勢力が投票を失敗させるために棄権を呼びかける危険性を阻止できないという。
 私は、今井さんが、国政の一般的課題での国民投票と憲法改正のための国民投票を一つのものとして考え、「国民投票法反対に反対」ということに疑義がある。もし、国民投票の可能性を最重要視して多少の危険性はあっても、と考えているとしたらそれには絶対に反対である。一般的国民投票法と憲法改悪手続き法としての国民投票法は峻別して対処すべきだと思う。
 公聴会で中北さんも言ったように「立法行為は、政治的目的を持った行為」であり、今の法案は、安倍首相のいう任期中に改憲するための法案である。今、私たちは、日本を戦争する国にするための憲法改悪の攻撃にさらされている。私たちは、この攻撃を打ち返すために全力をあげるべきときだと思う。改憲のための利用されうるあらゆる危険性に立ち向かうべきだと思う。「運動に優劣・順位をつけるな」といわれるのは覚悟の上で、今は、改憲手続き法をはじめとするあらゆる改憲策動反対に力を合わせて立ち上がるときだと思う。「戦後レジュームからの脱却派」・右翼政権の戦争策謀・改憲策謀を打ち破った後、国民投票法の制定に力を合わせて向かうべきだと思う。そして、憲法改悪に反対するものは、これまでの不十分性を反省しあるいはこれまで以上に住民投票運動や一般的課題での国民投票法制定運動に協力すべきだと思う。
 私は、今井さんがよく「憲法九条を変えさてはならない、解釈改憲の現実をそのままにしておいてはいけない」といっていることをその通りだと思う。それが、住民投票運動成果の上に国民投票制定をめざしている人々の心だと思う。憲法改悪反対運動と「国民投票法」運動にかけはしを架けるための積極的論議と共同行動が求められている。
関西共同行動ニュース No44