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『アンフェアーな改憲手続法案を葬ろう!』 中北龍太郎(関西共同行動)

3月28日、今国会で審議中の改憲手続法案に関する衆議院大阪公聴会が開催され、私は、四人の意見陳述人の一人として、改憲手続法の危険な本質、重大な欠陥を訴えました。この時の意見をまじえて、「反則勝ちを狙う改憲手続法案を廃案に!」と訴えます。

■法の狙い―戦争をする国づくり
   
改憲手続法案の制定を正当化するために、政治的に中立な手続法だと強調されています。しかし、これはでたらめです
改憲を最大の政治課題に掲げる安倍首相は、05年10月発表の自民党新憲法草案の作成に深くかかわり、そして今、「私の内閣として改憲をめざしたい、そのために、今国会で改憲手続法の制定を期待する」と力説しています。この経過・発言からも、安倍政権が自民新草案に沿って改憲するために、改憲手続法を作ろうとしていることが明らかです。
いうまでもなく、新草案の最大のターゲットは、九条を変えて、外征軍を設置し、自由に海外派兵できるようにすること、つまり戦争をする国づくりにあります。九条改憲のための改憲手続法が、決して中立的な法である訳がなく、高度の政治性を帯びていることは間違いありません。
 60年間改憲手続法が作られなかったのは、自民党などが目論んでいた改憲を市民が支持していなかったからです。今国会で改憲手続法が急浮上してきたのは、国会内を自・公・民の改憲大連合が席巻しているからです。改憲大連合の上に乗っかっている権力者たちは、数の力にものを言わせて、市民が権力者たちにかけた「政府の行為によって再び戦争の惨禍を起してはならない」とのしばりを解こうとしているのです。

■憲法改正国民投票のあるべき姿
   
憲法で国民投票において過半数の承認を得なければ憲法改正できないと定めているのは、憲法が、主権者である市民が、市民の福利と平和を保障させるために、政府に権限を与え、かつ政府の権力行使をコントロールするための法であることによるものです。すなわち、憲法は、市民が自ら、市民の手で、市民のために、国のかたちを決めるためにつくるものだからです。したがって、国民投票手続はこうした近代憲法における普遍的な立憲主義、国民主権・民主主義の原理にかなったものでなければなりません。
具体的には、第一に、市民の大多数の承認が必要です。そうでなければ、多数決原理や多数の主権者の意思が踏みにじられ、国民主権・民主主義の原理に反し、市民が作る憲法ということになりません。第二に、市民の意思が正確に反映されるように、投票対象が明確でなければなりません。第三に、市民の自由な討議と公正なルールの保障が欠かせません。第二と第三の要件が不備なまま投票が実施されれば、権力者たちの決定を追認するだけの投票に堕し、ナチスの信任投票の轍を踏むことになります。

■法案の重大な欠陥   

与党案と民主党案には、共通した重大な欠陥があります。そのいくつかの問題点を指摘します。
(1)投票率・得票数の問題
 本法案とも、投票率40%、全有権者の21%程度、あるいはそれよりももっと少ない賛成の数でも改憲できるようになっています。せめて、日本弁護士連合会が提唱している「有権者総数の3分の2という最低投票率」プラス「投票総数の過半数の賛成票」が必要とされなければなりません。
(2)自由な討議・公正なルールの保障の欠落
@公務員・教育者のその地位を利用した国民投票運動を禁止しています。罰則は外されていますが、懲戒処分の脅しなどで、彼らの意見表明が封じられてしまいます。そのうえに、3月に発表された与党修正案は、公務員法における罰則付きの政治的行為の制限規定を国民投票にも適用するといった規制を追加しました。勤務時間外・職場外の場合での表現活動まで取締りの対象となります。その数五百万人を超える彼らに対する言論封じは、自由・闊達な討議民主主義を圧殺することになります。このような言論抑圧は、諸外国に比べ異常な規制です。
A有料広告が投票日前の2週間の期間を除いて、野放しになっています。今、改憲を進めているのは、権力やお金を持っている人・団体が多いという現状があります。お金にあかしてマスメディアを駆使して賛成意見がどんどん垂れ流され、大々的な情報操作が行われる危険があります。これでは、全く公正なルールといえず、お金で改憲が買われてしまうということになります。
B憲法改正案を周知広報する機関を国会に設置し、所属議員数の比率で構成することになっています。これでは、改憲派が多数を占める国会の現状から、改憲に有利なキャンペーンが行われかねません。日弁連の提唱するように、国会とは別に、公正な第3者機関を設けるべきです。
C国会発議から60日後に国民投票ができるようになっていることも、十分な討議の機会を奪うものです。
(3)投票対象の不明確性
投票対象が不明確というとんでもない問題点もあります。投票は「内容において関連する事項」ごとに行うことになっており、これでは、自民新草案を例にとると、自衛軍の設置も海外派兵も一括して投票にかけられることになり、前者には賛成だが後者には反対という比較的多数の意見が正確に投票に反映できなくなります。自衛隊を憲法上合憲化するだけのつもりが、海外派兵のできる憲法に変わってしまっていた、そんなトリックが仕掛けられているのです。

■主権侵害の悪法に騙されるな!
   
このように、改憲手続法案は、立憲主義、国民主権・民主主義の原理に違反する重大な欠陥があり、私たちの主権を侵害するものと断言できます。予め改憲派がすごく有利になるように仕掛けた手続法の制定で改憲一直線というのが、改憲派の狙いです。法案は改憲を実現するためのアンフェアーなルールに外ならず、市民が主体的に憲法をつくるための手続、最大の主権行使である憲法改正国民投票にふさわしいものでは全くありません。
主権と平和憲法を死守するため、アンフェアーな改憲手続法案を葬り去りましょう!

関西共同行動ニュース No44