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●核実験をめぐる討論集会(12・25)うけて
  試論(私論)・核兵器は民衆運動を代行できない  【関西共同行動】星川洋史


 06年12月25日、関西共同行動では、山原克二(ゼネラルユニオン委員長)山元一英(全港湾大阪支部書記長)林真樹(ヨンデネット大阪代表)の三人を提起者に「米軍再編と核実験」と題して、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核実験についての討論集会をもった。北朝鮮の核実験が行われた直後の10月15日の「戦争あかん!基地いらん」の集会のときにさえ、北朝鮮の核実験に対する統一した立場が打ち出されなかったことに見られるように、反戦平和運動の中での見解の違いが深刻であり、放置することはよくないとの考えからだった。もちろん、幾度かの討論で意見の一致が生まれるなどと楽観しているわけではないが、運動の発展のためには討論が必要であるとの観点だった。
 当然のこととして提起者には一致点と相違点があった。一致点としては、「核兵器反対」ということだったが、主に対応の仕方について相違があった。
 山原さんは、「もちろん経済制裁には反対」「国対国の問題として考えることに反対」「反米ナショナリズム・階級的観点を否定する民族主義化、宗教(原理)主義化反対」「北の国家の評価と核のことは分けて考えるべき」「超階級的武器としての核兵器絶対反対」と主張し、山元さんは、「北朝鮮の核弾劾とまではいえない」「イラクの二の舞(核をもっていなかったからやられた)はいやだという北の主張は理解できる」「どの国にも自主権はある」「NPT(核不拡散条約)だけ批准しCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准しないアメリカのダブルスタンダードが問題」「日本は嘉手納基地へのパトリオットの配備にも見られるようにアメリカの核の傘の下にあり、北朝鮮にとって脅威」「核保有国こそ核軍縮を」と主張した。
 林さんは、「米帝と渡り合っている北というのは誤った先入観である」「北の人道支援のために米を送ってきたが、共和国の政権が信用できないので朝鮮総連ではなく韓国のNGOをとおして送った」「拉致問題では自責の念。横田さんたちが、北朝鮮の政府と民衆、在日の人々を区別しなくなり、経済制裁まで要求するようになったのは、われわれ運動の弱さ」「核実験強行弾劾、アメリカの核反対、日本の核武装反対」「核も戦争もないだけでなく飢餓も抑圧もないことを求める」「アメリカの政府には北の核反対をいう権利はないが、アメリカの民衆にはある」と主張した。北の政権・国家と民衆のあり方の評価を避けることができないというのが前二者との違いだった。

■非核・平和の東アジアに向けた民衆連帯を!
 北の政府は、アメリカの核兵器をはじめとする巨大な軍事力と日米軍事同盟による包囲が核武装の理由だとしている。日本や韓国の運動でもそう主張されている。
 厳しい敵対・対立状況にある東アジアを非核・平和の東アジアにするためには、この東アジア、極東に張り巡らされているアメリカ帝国主義の核を中心とする巨大軍事網と日米軍事(同盟)体制を打ち破るための闘いが求められている。われわれは、沖縄の辺野古や普天間の闘い、岩国や座間、相模原、横須賀などの人々と共に基地再編強化と闘い、憲法改悪反対、戦争ができる国造り反対の運動を作り上げなければならない。それが、北朝鮮の核武装化の根拠を奪うことになる。
 しかし、そのことは、朝鮮民主主義人民共和国の核武装に関する主張を鵜呑みにしたり支持することにはならない。北の核実験が、北の社会と民衆にとって何をもたらしているのかを考える必要がある。北朝鮮では、飢餓が起こり多数の餓死者が出ている(私はこれを敵対勢力のキャンペーンだけとは考えない。北の政府も援助を要請している)中で巨大な費用を投入して核実験をすることが本当に必要だったのだろうか。
 核実験を契機に、国際社会からの食糧支援が打ち切られ、食料事情に深刻な影響が出ている。もちろんわれわれは、各国政府の制裁や国際社会からの援助打ち切りに反対である。しかし、核実験をやれば食料やエネルギー支援が重大な事態に陥ることは北の政府にとっては十分予測できたことである。それにもかかわらずあえて強行した政府は弾劾されるべきである。今回の食糧危機の中で、大量餓死者が発生した96年と同じように、政府からは『苦難の行軍』方針が打ち出されているという。北の民衆の苦難はきわめて深刻である。
 北朝鮮の核問題解決のための六者協議の進行は理解するのが困難である。そこでは、北への援助の確約が先か、核の凍結・廃棄の約束が先かなど争われている。大衆から見れば、なぜ同時ではいけないのか分かりづらい。われわれとしては、日・米政府に援助の約束をせまるべきだろう。
 94年の「米朝枠組み合意」では、米国は軽水炉発電所の建設を支援すると約束したが、ブッシュ政権になってこれを破棄した。北の政府は、あくまでもその約束の復活・履行を求めている。ブッシュ政権は、この軽水炉も核武装につながるとのことで拒否している。これはアメリカの約束違反である。しかしだからといって、軽水炉の建設援助要求が正しいとはいえない。韓国からは電力輸送が提案されもしている(北の政府は韓国にエネルギーの供給を握られることへの危惧から受け入れていないといわれている)。われわれは、どの国でも、原子力発電に反対である。エネルギーのためなら水力発電、火力発電で十分だろう。あくまでも核武装につながる軽水炉こだわり続けることは、北の民衆が被るエネルギー危機が長引かされることになる。
 われわれ日本の民衆運動には、一部であれ相当根強く、「北の核実験に反対することは、アメリカの北朝鮮攻撃への手助けになる。イラクが攻撃されたのは核をもっていなかったことに一因がある」という主張がある。朝鮮ではなくイラク攻撃が(先に)なされたのは、パレスチナ・イスラエル危機進行、石油資源などのための中東重視政策があり、フセイン独裁政権が国際世論、イラク国民と乖離していたことが見透かされたからではないだろうか。フセイン政権も『富国強兵』的だった。
 「武器には武器」をではない。武器の向こうにいる民衆同士が連帯を求め続けることこそ真の力である。アメリカの民衆が朝鮮半島の民衆、日本とアジアの民衆と連帯してアメリカ政府の北朝鮮敵視政策に立ち向かうことに役立つような日本・韓国・朝鮮の民衆運動が求められている。
 今回の北朝鮮の核実験は、こうした国際的連帯でアメリカの朝鮮人民民主主義共和国への敵対をやめさせるための助けにはならない。それどころか混乱を持ち込み弱体化させる。また、日本の右翼・安倍政権、核武装と先制攻撃論者を勇気づかせ、アメリカのネオコンを生き延びさせることに役立っている。もちろんわれわれには、それを超える戦争反対・核兵器反対の大きな運動を作ることが求められている。

関西共同行動ニュース No43