集会・行動案内 TOP
 
『ヤマサクラ(日米共同方面隊指揮所演習)がやってくる』 和田喜太郎(関西共同行動)

 陸幕広報室は4月7日、平成18年度の主な演習予定(指揮所・実動・転地・派米実射等)を発表した。うち日米共同方面隊指揮所演習は中部方面隊担任で実施、現在日米間で調整中という。いわゆるヤマサクラ(略称YS)という図上演習で、00年1月、伊丹の中部方面隊千僧・緑ヶ丘、広島の海田など駐屯地で実施された。
 この時の〈ヤマサクラ37〉に次いで来年1月予定の〈YS51〉は、中部方面隊にとっては2回目。(在日米陸軍は富士山を部隊章とし、この「山」と陸自シンボルの「桜」を合わせて)〈ヤマサクラ〉をコードネームとし、共同演習章なども制定されている。)大会場中央に大型モニター、会場内には所狭しと設置されたブースには端末、屋外テント村にも各部隊の端末。想定シナリオに沿って敵味方の攻防が画面に映し出される。実行部と統括部に別れ最後に統裁官が攻防の判定を下す。こういったところが指揮所演習の大体の風景。
 もちろん市ヶ谷の陸幕・統幕、地下の中央指揮所や米在日司令部、米本土司令部まで軍事衛星で中継され事態の推移状況は届き観察されている。
     ◆
 今年〈ヤマサクラ49〉(1/20〜2/3)は陸自西部方面北熊本や健軍駐屯地などで実施。続いて〈ヤマサクラ50〉(7/12〜21)がハワイのフォートシャフター基地で、中部方面や陸幕関係約百人、在日米陸軍第1軍団や第9戦域コマンド関係約百人が参加し実施された。
 方面隊指揮所演習は82年に始まり、以来日本と米本土基地(6〜7月頃米陸軍基地で約二〜三百人規模、主にハワイ)で交互に行われるのが恒例。YS偶数番号がこれにあたり同一年度同担任で2回行われる。実動演習は兵員動員に限界がある。何万という軍団を戦争動員するために考えられたのがコンピューターによる図上演習。そもそもコンピューターの軍事利用は米軍が開発したもの。その本家から予備役兵など迎えて行われるのが日米共同指揮所演習。
 コンピユーター上では日本全土が戦争状態でも、街中を迷彩服隊員や装甲車が走り回り銃撃音もあるわけでもない。いくらか車両横行が多い程度で住民の反撥も危機感もない。来日した米兵も地元市民と交流したり福祉施設を訪問したりで、友好ムードが演出される。本当は恐ろしい戦争実行訓練と隣り合わせにいても何事もなく見過ごされる。
     ◆
 後記別表(P12)のように、かつての三千人規模は今では5千人以上に拡大化している。前回伊丹YS37では米軍ホームページで演習シナリオが分かり、週刊誌が取り上げ自衛隊側はクレームをつけ、トイレや売店の分かる駐屯地絵図まで消されてしまった。
 仮想敵が北九州上陸、米軍の来援を待ちながら迎え撃つというありふれたシナリオで、かつての仮想敵ソ連軍が北朝鮮軍に変わっただけ。陸上訓練だから当然かもしれないが、海上や航空戦力など「白書」にある着上陸作戦はない。岡山あたりで撃破することになるが、「敵」の近代化軍団が突然陸上するに至る朝鮮半島の軍事情勢は全くなし。三千人以上動員する図上演習にはわずかな「不審船」上陸では訓練のサマにならないことか。新たに国民保護計画が付与される今、納税者市民にこそ率直に演習の実態を明らかにすべきだ。
 北熊本YS49では始めて「島嶼防衛」を想定し、「国民保護計画の参考」にと九州・沖縄各県の担当職員らを招請見学(1月30日、8自治体)させた。あまり参考にはならなかったらしいが、今後こうした研修企画は増大され、自衛隊と自治体による「国民保護」や防災演習の図上演習を進める自治体もあり、会同や協定が交わされた例も増えている。また図上演習に習熟した自衛隊OBを顧問に迎える自治体も増え、これをあてにしたOBによるNPO法人も結成されている。
     ◆
 指揮所演習は一般にCPXと呼ばれ、統幕・海自・空自などそれぞれ実施しており、海自は横須賀や米海軍大学、空自はフロリダ空軍基地などで行われている。このほか陸・海・空部隊の小規模なもの、海上保安・警察、防災を巡る自治体との図上演習なども進められている。
 今年2月日米統合指揮所演習(2/20〜3/3)が日米四千六百人規模で市ヶ谷、横田などで行われた。これは統幕議長が陸海空の調整から一元的指揮体制をとるいわゆる「統合運用体制」移行と「在日米軍再編」に伴う演習だった。(これまで米軍側はこの演習を「キーンエッジ」などと呼称。)CPXに対して実動演習を一般にFTXとよび、今年2月滋賀あいば野演習場と岡山日本原演習場で「相互乗り入れ」の日米共同実動演習17FTX(2/19〜3/3、13旅団米子部隊約三百五十人と米海兵隊予備役大隊約二百五十人)が行われた。
 訓練は例外なく山地や演習場に造成された「市街」での対ゲリラ戦闘などだった。実動も図上同様に機能訓練と総合訓練、そして総合評価の順に行われる。この時期あいば野の山には積雪もあり、雪中訓練はテキサスの米兵には初体験だった。訓練参加の13旅団は出雲部隊が廃止され、スリム即応部隊化される一方、四国第2混成団は部隊増設で第14旅団に昇格するなど、「統幕監部」新設に伴う新運用体制への仕上げが進められている。
     ◆
 去る9月17日、再びやってくる〈ヤマサクラ〉に対し反対実行委員会がもたれた。前回伊丹YS37の際には約三千人の集会と「人間の鎖」で、テント村と化し駐屯地周辺をとり囲んだ。その後この実行委枠組みは、昨年の陸自中部方面第5次
イラク派兵(1月守山)、第6次イラク派兵(5月伊丹)反対行動に継承され再び「人間の鎖」で〈イラクに行くな!〉を意思表示した。
 今のところYS51の詳細は不明だが、とりあえず1月下旬に昆陽池公園での集会、軍事専門家をゲストに学習会開催など予定している。

 ●別表<ヤマサクラ>経過メモ

YS--1 82年 2.15〜19 滝ヶ原 東部 約1000人 米側約 500人 計約1500人
YS--2 82年 6.21〜25 ハワイ 北部 約 60人 米側約 250人 計約 310人
YS--3 82年 12.6〜10 東千歳 北部 約1800人 米側約 650人 計約2450人
----中略----
〈当初は主に北部、東北方面隊で実施。95年西部方面北熊本でのYS27
 以後は五つの各方面隊持ち回となる。〉
YS-27 95年 1.23〜2.3 北熊本 西部 約2000人 米側約1400人 計約3400人
----中略----
YS-35 99年 1.21〜30 朝霞 東部 約2400人 米側約1100人 計約3500人
YS-37 00年 1.20〜29 伊丹 中部  2200人    1000人   3200人
YS-39 01年 1.22〜31 北熊本 西部  2400人     1300人   3700人
YS-41 02年 1.20〜2.1 仙台 東北  3800人    1700人   5000人
YS-43 03年 1.18〜2.1 東千歳 北部  4500人    1500人   6000人
YS-45 04年 1.21〜2.1 朝霞 東部  2500人    1400人   3900人
YS-47 05年 1.21〜2.1 東千歳 北部  3500人    1500人   5000人
YS-49 06年 1.20〜2.3 北熊本 西部  4400人    1300人   5700人
YS-50 06年 7.12〜21 ハワイ 中部 105人 100人 205人
YS-51 07年 1月頃 伊丹 中部 ? ? ?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ハワイなど偶数YSは省略。
朝雲新聞社『防衛ハンドブック』より抜粋。
(年度の元号表記は西暦に変更)
関西共同行動ニュース No42