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『教育基本法「改正」案をめぐる現段階について』 井前弘幸(子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会)

 政府は、教育基本法「改正」与党案の提出(4月28日)以降、野党の反対を押し切って、「教育基本法特別委員会」を設置し、5月11日から6月15日の約1ヶ月間で13回(実質審議は本会議を含む11回)に及ぶ審議を強行した。政府案は、「国を愛する態度」を強制し、政府・教育行政に全面的な教育介入の法的権限を与え、教育の機会均等を空文化し、憲法とのつながりを切断する。現行教育基本法の根本理念の全面的否定である。一方で、民主党は「日本国教育基本法案」を対置し、「日本を愛する心の涵養」を前文に明記して「教育は不当な支配に服することなく」を完全に削除した。日本会議など復古的国家主義的な教育基本法「改正」促進勢力がこれを歓迎し、民主党は彼らを利用する。教育をどうするのか。この国をどこに向けようとしているのか。なぜ教育基本法を改正する必要があるのか。国会審議での政府答弁は、まったく形式的であるか、小泉流の情緒的なものしか存在しない。小坂文科大臣曰く、改正理由は「昨今の倫理観の欠如」「時代の変化」である。一方では、日本会議派の民主党議員と自民党議員が呼応して、「教育勅語」的な教育観を延々と語り「教育危機」を弄んでいる。与党と民主党との、本当は教育論抜きの、危うい政治的駆け引きが臨時国会にも継続されそうだ。
 自民党は、臨時国会最大の重点を教育基本法におくとしている。9月20日の自民党総裁選後の29日にも、臨時国会の召集が見込まれている。(会期は12月中旬までが濃厚?)今後の与野党の駆け引きは、総裁選と10月10日に告示される衆院補選(22日投票 大阪・神奈川)の行方に影響されそうである。しかし、自民党は、「前国会で審議は尽くされた」として、冒頭から、中央・地方公聴会の日程確定と早期終了、その後の委員会採決を要求するはずである。自民党政調は、「国家戦略としての教育改革〜学校現場の裁量拡大と、国の明確な責任に基づく教育」(6月14日)をすでに策定している。「改正」を見込んで、「国が教育政策の目標(内容を含む)を設定し、国が教育水準を調査・評価・指導し、国が改善措置を強制する法的権限を確保する」戦略である。教育内容の国家管理強化、教員免許更新制、新たな管理職制度、人事考課と差別給与の徹底、「指導力不足教員」への厳格対応などがここに明記されている。これこそが、現に実態として先行する教育基本法改悪の具体の内容である。私たちは、この「戦略」に全面的な法的権限を与える教育基本法の改悪を許さない。臨時国会の冒頭から、事態が緊迫する可能性は否定できない。備えなければならない。
関西共同行動ニュース No41