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『21世紀初頭の琉球処分に抗して』 安次富浩(ヘリ基地反対協議会共同代表)

1、在沖米軍再編はやんばるの軍事要塞化が目的
 日米両政府は米軍再編に伴う普天間基地の移設先をキャンプ・シュワブ沿岸で合意した。県民が要望する普天間基地の撤去・県外移設を無視し、基地のたらいまわしである。
 在沖米軍再編の特徴は司令部機能要員7千人のグアムなどへの移転、パッケージ方式による海兵隊基地の既存施設内移転に伴う基地専有面積の削減をアメとすれば、事件事故を引き起こす実戦部隊の温存、MV22オスプレイ配備予定の普天間基地のキャンプ・シュワブ沿岸移設及び嘉手納基地以南の海兵隊基地の北部移設はムチである。沿岸案に同意しなければ海兵隊基地の返還はないという脅かしは新たな「琉球処分」である。
 今回の沿岸案は1966年に米海軍が策定した辺野古から大浦湾一帯の軍事拠点化を北部要塞化構想へと発展させた。米軍は過疎地域のやんばるに北部訓練場、都市型戦闘訓練施設、実弾射撃場、弾薬庫、航空基地、軍港、補給基地などを集中化させることで永久固定基地化を狙っている。しかも日本政府の思いやり予算で最新鋭の基地が建設されることは「濡れてに粟」である。県民にとって極めて不条理な合意であることは言うまでもない。
 小泉首相は「過重なる負担の軽減、本土側への応分の負担」約束を反故にした。「責任は小泉にある」と開き直り、「平和の代価」と嘯いた。厚顔無恥なペテン師である。政府高官は「変更の余地はない」と押し付け、「悪しき隣人(米軍)との共存」を教唆した。
 稲嶺知事から公有水面の使用権限を奪う特措法の導入という刺客も送り込むとの恫喝を加えた。特措法は地方分権の流れに逆行し、法治国家の否定、即ちファシズムの手法である。
 一方、ブッシュ大統領は11月8日に沖縄の善良な人々へのメッセージで「日米合意に対する不満は承知。・・・民主主義はすべての人々を満足させるのは困難」と侮辱した。ブッシュ政権は大量破壊兵器の存在、アルカイダへのテロ支援など嘘の情報で劣化ウラン弾、クラスター爆弾などの大量破壊兵器を使用しながらイラク侵略戦争を正当化した。国連を無視し、米国との友好国で構成する自衛隊を含む多国籍軍による支配はイラク民衆の反発をかい、米軍への抵抗闘争が活発化し、多くの民衆が犠牲を受けている。アメリカは民主主義を標榜しながら国際法違反を繰り返す「戦争犯罪国家」なのである。

2、反撃は島ぐるみ闘争!
 第1ステージは97年の海上ヘリ基地建設案を名護市民投票で拒否し勝利した。その後、市長選の敗北、県知事選の敗北、岸本名護市長のリコール運動の挫折、そして沖縄サミットなどの苦難を経て、闘いは第2ステージに移った。
 海上ボーリング調査阻止闘争は非暴力抵抗運動によって日米両政府のSACO合意に基づく辺野古沖軍民共用空港案を撤回させた。第2ステージではウミンチュなどの全県的な支援、全国から市民や学生、宗教者等が座り込みに参加し、環境保護団体の国際的支援も受けた。
東大など超一流大学出身の官僚と腹黒い政治家等のヤナージンブン(悪知恵)に、民衆のジンブン(知恵)が勝利した。小さなアリの集団が巨大なパワーを持つ日本政府に勝利したのである。闘う大義が正しければ世論は味方につくことを証明した。
 キャンプ・シュワブ沿岸案は第3ステージの闘いである。大義は3つある。1番目は反戦平和の闘いである。悲惨な沖縄戦の体験からアジアの一員として平和・連帯を希求している。
しかし、在沖米軍は朝鮮、ベトナム、湾岸、アフガン、そしてイラク戦争と多くのアジア民衆に血の犠牲を強いてきた。イラクの都市ファルージャを無差別攻撃した海兵隊はキャンプ・ハンセンとシュワブの海兵隊である。この事実を忘れてはなるまい。新基地建設を許すことはアジアの民衆の眼にはアジア支配の加担者=沖縄として映るであろう。
 2番目は環境保護、ジュゴン保護区の設定である。絶滅危惧種ジュゴンの保護を柱とする大浦湾から辺野古のリーフの保全である。大浦湾はジュゴンの遊泳が度々目視されている。辺野古のリーフ内はジュゴンの餌であるアマモ類が生い茂り餌場でもある。沖縄の自然を次世代に残すため、ジュゴン保護区を設定させ、学者や専門機関の協力でジュゴンを絶滅の危機から救い、ジュゴンの親子の遊泳シーンを中心とする癒しのジュゴンウオッチングを確立したい。将来は沖縄から観光産業に邪魔な日米の軍事基地を放逐し、琉球列島の世界自然遺産への登録に向けて自然豊かな環境を取り戻して行く。
 3番目に米軍再編=基地機能強化に対して怒りの声をあげている岩国、横須賀、座間などの市民運動との横断的な結合である。国家財政の破綻にもかかわらず、グアム移設費などに1兆円、沖縄など莫大な基地建設費用も日本政府が負担する不条理さ。政府・自民党内では消費税の大幅なアップ、大増税が囁かれている。地方分権確立のため米軍再編反対の市民投票と思いやり予算の撤廃などを結合する全国的な反基地市民運動を構築する。
 最後に、沖縄は米国の植民地でないし、日本の国内植民地でもない。沖縄は沖縄戦という悲劇を体験している。民衆には過ちの国策に対抗する抵抗権が付与される。それゆえ、植民地支配を維持しようとする米政権と沖縄差別の日本政府の合意案を阻止する。
 沖縄では県民投票の実施を求め新聞意見広告運動の署名活動が始まった。米軍再編に対する市民運動の反撃である。沖縄はいつまでもウフヤッシー(おとなしい)でない。沖縄を蹂躙し続ける日米両政府への怒りのマグマが島ぐるみ闘争として爆発するであろう。
関西共同行動ニュース No39