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『改憲阻止の大連合を!』 中北龍太郎(関西共同行動)

●改憲大連合の危険な状況
 自民党は十一月二二日、結党五十周年大会で、新憲法草案と「近い将来新しい憲法を制定するため、国民合意の形成に努める」との方針を冒頭においた新綱領を採択しました。
 新憲法草案は、これまでの自民党各種改憲案に濃厚に見られた国体の復活をめざす復古調をトーンダウンしています。例えば、前文で日本の歴史・伝統や国柄を謳うことを止め、「天皇の元首化」「国民の国防義務」「家族扶助義務」は削り落としている点などです。そのため、マスコミなどからもマイルドになったと評価されています。
 自民党が党内タカ派を押さえつけてまで懐メロ調を薄めたのは、公明・民主両党の篭絡を優先し、また新憲法制定に本腰を挙げたからにほかなりません。こんな魂胆をもった新憲法案の採択と制定推進決議によって、憲法改悪に至るタイムスパンは相当短縮されたと見なければなりません。
 対する前原民主党は、自民党に遅れをとるまいとしたのか自民新憲法草案発表のわずか三日後の十月三一日、自衛軍の存在を前提に「自衛権行使の明確化」「国連の集団的安全保障への参加」「武力行使の容認」を含んだ憲法提言を発表しました。
 その余勢を駆って、前原代表は日米開戦日の十二月八日、訪米中にシーレーン防衛のために集団的自衛権を行使できるよう憲法改正すべきだとぶち上げました。軍事路線では自民党以上にタカ派と前評判の高かった前原の本音発言だけに驚きはしませんが、アメリカに尻尾を振る忠犬ポチがもう1匹いたのかと情けなくなります。
 この発言にはさすがに党内から独断専行との異論が出ましたが、前原代表は党大会で「集団的自衛権の行使は憲法提言の枠内に入っている」と答弁しています。集団的自衛権の行使のための改憲路線では、自・民両党は完全に一致しているのです。
 こうして〇五年の晩秋改憲大連合がくっきりとその姿を現し、改憲数年前という厳冬がやってきたのです。

●新憲法草案を斬る
 新憲法草案は、三本の矢から成り立っています。前文と九条改憲による戦争する国づくり、祀る国づくり、そして人権の国家への隷属、この三本の矢は束ねると平和・人権・民主を殺す恐るべき武器となります。部分的にマイルドになったり,前文から美文調が消え味も素っ気もないものになったとはいえ、自民党が重視している項目はきっちり盛り込まれており、危険な本質は変わっていません。
 草案の最大のターゲットが九条改憲―集団的自衛権の行使にあることは衆目の一致するところです。アメリカへの戦争への加担・のめり込みの軍事オプションが改憲の推進力になっているだけに、九条改憲は切迫したものになっています。
 事前に草案がプレス発表されたのが十月二八日、なんとその翌日には、在日米軍再編に関する中間報告が取りまとめられました。中間報告は、日本が米軍の先制攻撃作戦をサポートし、また自衛隊が世界規模で米軍とともに戦うための極めて実践的な内容を持った両政府の合意文書です。ピッタシのタイミング、これは決して偶然ではありません。中間報告=米日共同先制攻撃体制づくり=集団的自衛権の行使=改憲、この図式にそって政治が動いているために必然的に日程が接近したのです。
 二本目の矢は二十条改憲=政教分離の緩和です。社会的儀礼・習俗的行為を政教分離原則の埒外に追いやる改憲は、国が靖国を中心的施設とする戦死者の追悼顕彰儀式に公然と関与し、戦前がそうであったように、人殺し=戦死のススメの制度化を図るところにその狙いがあります。九条と二十条の改憲は一対のもので、体と心の両面から戦争する国づくりを支えるベースになります。戦争をする国は祀る国でもあるのです。
 三本目の矢は十二条改憲です。「公益、公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」という規定の狙いは、人権の上に国権を置き、国の最大の行事である戦争を公益・公の秩序と位置づけることにあります。十二条改憲は、戦争=公益を理由とする市民の人権侵害を憲法上正当化し、また戦争への国民動員を根拠づける条文となります。草案では国防義務はカットされていますが、この条文は国防義務と同じ役割を果たすことになるでしょう。
 三本の矢だけでは達成できない改憲の積み残しの課題は改憲第二幕に持ち越されることになりますが、衆参両議院の過半数の賛成で改正案を発議できるようにする改正手続の軟化は,自民党が単独で思い通りの改憲案を発議するための布石にほかなりません。

●改憲大連合に勝つ民衆の大連合を!
 改憲大連合と化した支配圏に対し、市民圏で改憲を阻む力をどう創りだせるかが私たち一人ひとりに突きつけられています。
 〇五年体制ともいうべき小泉政権のリバイアサン化と力ある抵抗野党の不在という制度圏の状況、そしてこれに抗する運動圏の弱体化、こうした状況が保守政治のこれまでとは異質の傲慢かつ荒々しい統治手法を跋扈させています。地元無視の頭ごなしの米軍基地再編計画の決定,アジアからの批判をまったく無視した首相の靖国参拝とともに、九条改憲に反対する多数世論を踏みにじって押し進められている改憲の動きも、強権政治の現れにほかなりません。
 こうした強権発動は、矛盾を顕在化しまた民衆の怒りを引きおこさざるをえません。潜在化した怒りを顕在化し怒りの大連合を広げていく試みを、過去のドクマとバラバラ観の否めない運動状況を乗りこえて実行していくことが求められています。
 改憲阻止は、日本からアジア・世界へホンモノの平和メッセージを発信することであり、二一世紀における世界と歴史のエポックメーキングとしての壮大な民衆運動の登場を意味します。戦後の平和・人権・民主運動の底力に賭けて、改憲を許さない大きなうねりをつくっていきましょう。
関西共同行動ニュース No39