「にしても、どういう風に撮ればいいのかなぁ」
「どーした、いきなり。メイキング風景なんてお遊びなんだから、難しく考えなくてもいいんじゃねーの?」
「そうなんだけどねー。ちょっと今、二択で悩んでます」
「どういう?」
「いや、漂くん中心に撮るか、できるだけ全体を満遍なぁ〜く撮るか、なわけですよ」
「何だその変な口調……まあ、普通は満遍なくのほうがいいんじゃないか」
「うん、そうよね普通は。ただ、漂くんがこういうのを言い出した理由を考えると、ね」
「あーそっか……それだと確かに咲良がいっぱい映ってたほうがいいのかもしんないなー。細川サン、だっけ? その子にDVD渡すのが咲良にとっちゃ第一なんだろうし」
「勘違いすんなユウ。確かにきっかけはそこだけど、作んの一枚だけじゃねえぞ。何十枚か作って希望者に配る、って話になってんだろ」
「うーん、そうだなぁ。そうなるとやっぱり満遍なくのほうが、って話になるよな……うん、ゲン、厳しい意見サンクス」
「んー……でもこれじゃ決まらないわねー。どっちにしようかなー」
「まあ、あんまり悩むくらいなら、何も考えないで撮りたいように撮ればいいんじゃない? どうせ後で編集するんだから今は何枚ぶんでも撮っていいって言ってたし」
「うー、エリちゃんさー、それじゃ相談した意味ないじゃないのよー。好きなようにだとそれこそ漂くんしか映さないかもしれないですよー、いいんですか白共リーダーさーん?」
「わざわざ相談するヤツがンなことするかよ。まあ比率的には多くなんのかもしんないけど?」
「あー、バレてる」
「てか、マジそれでいいんじゃねーか。咲良だけ多めに映して、合間にぽつぽつとバックの人間入れるくらいでさ。偏りすぎんのは問題だけど、本当に平等にやる必要もねえしさ」
「うん、ユウ、まあそれが一番現実的なんだろうが、やっぱ比率の問題で宮月の判断次第ってことだよな」
「みっちゃん、責任重大ね〜」
「あーん、こんなことなら通わなきゃよかったわー。あたまいたーい」
「ははは、今更そんなこと言ったって逃がしゃしねえぞー。キリキリ撮れー」
「うわー、横暴リーダー! ひどい、女の子をこき使うなんてー!」
「……よく言うぜ。お前のほうが普段オトコ使ってそうじゃねえか、しかも顎で」
「いや、うっわ、ちょっと相川くんなにそれホントひどーい!!」
「ってェ!? なんだよマジ痛ェよ叩くなよ!!」
「あのさー、話逸れてねーか? てかさー」
「なんだ、どしたユウ」

「いやさー、咲良が全っっっ然喋ってねーんだけど」

「……そういやそうだな。なんかまだ今日、声聞いた記憶ねーぞ」
「どうしちゃったの、咲良くーん? 何か嫌なことでもー?」
「……意見あるなら言えよ。お前だけ置いてけぼりにするわけにもいかねえんだからな。てか発案者だろ、お前」



「いや……なんか、口挟む余裕ないっていうか、挟まなくてもいいかなっていうか……なんか、見てるだけでもいいやって感じで……こう、トントーンって進んでる感じがするから」



「何ジェスチャーまで入れてんだよー。駄目だろー、お前も参加しろよー」
「あー、アレじゃない? 咲良くん最近いじられてばっかりだから傍観者に回ってそれを避けようとかじゃないのー?」
「な、ちょ、それは違う、ってかなんでそうなるの!?」
「あー、でも言われてみればそう見えなくはないよなぁ? なるほどなるほど」
「違うっつってんだろにやにやすんな大士ー!? ああもう、だからヤなんだよっ……!」
「だから嫌? なんだそれ咲良お前やっぱり本音はいじられたくねえってことかよ、この不真面目が」
「うっさいだまれ嫌味言うなコラー!!」
「っっってェ!!? なんだよお前、さっきの宮月より痛ェぞコラァ!?」
「あーあーもー、ふたりとも落ち着け落ち着け。ほれほれ、深呼吸深呼吸」
「すーはー……いやもうその手には乗らないからな!?」
「待てお前それマジで言ってんのかよ、自業自得だろあんなの」
「うるさいだまれとにかくだまされない聞かない何も聞かないっ」
「あーあー耳塞いじゃったよ……ダイシ、どーすんのこれ」
「しょうがねーなー……つーか咲良、お前、それはそれでマジウケんだけど」
「うるさいだまれうるさいだまれ喋んな口開くな息すんなー!!」
「いや、息しなかったら死ぬって」





「ていうか咲良くん、すっかり面白いキャラになっちゃったわねー」
「……案外、こういうところを撮ればいいのかなーって思うわ。あー、カメラ回しとけばよかったー」
「残念ねー。まあ、今からでも遅くないんじゃない? あんなにいじり甲斐ある子だもん」
「それもそうね。あー、決めた! メイキングはできるだけこういうの撮ろーっと」
「え、ホントに? 咲良くん的にはいいのかなー」
「何よ、エリちゃんが言ったんでしょー。それに音楽パートは本番だけでも十分だと思うしー、たぶん漂くん本人すごい恥ずかしがると思うけどー、すごぉく親しみやすくなるんじゃないかなーっていう、そういう期待込みでねー」
「あららまあ……そういうもっともらしい理由で来られちゃ私も止められませんねー。むしろゴーって感じ!」
「イェーイッ!」
「いやちょっとそこ何ハイタッチして盛り上がってんのちょっとー!?」
「よかったなー咲良、お前、いっぱい映るぞー?」
「映すなーっ!?」