がしょん。がしょん。がしょん。がしょん。




























「はあ、はあっ、はあ、はあっ」





























女が逃げる。激しく息を切らせて、走って逃げる。
















それを僕は追う。歩き続けて追う。がしょんがしょん。







































女は必死になって逃げる。息を切らせ、おぼつかない足取りになりながらも、全力で逃げる。
















それを僕は追う。わざと女に追いつけない、だけど引き離されもしない速度を保って、がしょんがしょんと追い回す。














































逃げろ、逃げろ。逃げ惑え。









恐怖におののき、逃げ惑え。









逃げないと、逃げないと。全力で僕から逃げないと。









でないと僕が君を殺しちゃうぞ。残酷に殺しちゃうぞ。










































笑い声すら響かせて、僕は女を追う。相変わらず、追いつけもしない、引き離されもしない速度を保って。









女の息はどんどん荒くなる。足取りも加速度的に怪しくなってくる。









けれどそれでも女はまだ転ばない。必死になって僕から逃げている。



















だけど、長続きしないんだ。









どんなに必死になろうとも、どんなに驚異的に粘ろうとも。









女はヒトで、僕はロボ。女の限界はすぐそこで、僕の限界は果てなく遠い。









ただ僕は待っているだけでいいのだ。女が力尽きるその時を。


























































「あぁっ」









悲鳴が上がった。女が前につんのめって転んだ。









ああ、もう限界だったんだね。かわいそうに。君はよくがんばりました。









女が転んだ隙に、僕は一気に速度を上げて詰め寄って、女の腕をつかんだ。























ごきり。嫌な音がした。









「あ、ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」









女が悲鳴をあげた。僕が掴んだ腕に力がこもり、それに相乗するように悲鳴がひどくなる。









ああ、さっきのは骨が折れた音だったのか。それだけでこんな声が聴けるなんて。







































体の中から出したロープで、女の両手首を縛る。









それだけのことですら、女は空気をつんざくような悲鳴をあげる。









当たり前だろうけれど。女はもう両腕の骨が折れているから、動かされるだけでも激痛が走るんだろう。









そんな女を宙吊りにすると、どんな声が聞けるんだろう。ああ、今から楽しみでしょうがない。くすくす。





























「ひっ……ひぃっ……」









実際に宙吊りにしてみたら、女はぴくぴくと体をわななかせ、だらしなく涎を垂らしながら、痛みからか恐怖からか、痙攣してるみたいな声を漏らす。









そんな姿はただ汚いだけだ。思ってたより不快な姿だったのでむかついて、僕は女の足の片方を蹴り飛ばした。









「いあっ、ああああああっ!!!!!」










女の体が揺れて、そして上がる悲鳴。ああそうか、これって折れた腕にものすごく刺激がかかるのか。









前言撤回。これはこれで面白そうだ。叩くたびに悲鳴の上がる、人間サンドバッグ。

















































「えー、本日も恐怖ロボの様子を詳細に伝えてまいります、よろしくお願いします」









「ただいま恐怖ロボは女性を捕まえ、拷問を行っている模様です」









「何十億、何百億という人々の命を奪った悲劇のドリルとミサイルを、今日は搭載していない模様です」









「しかしなんということでしょう!! 女性からは絶えず悲鳴が上がっております!! 恐怖ロボはそれを楽しんでいるかのようです!!」









「ですが、恐怖ロボが1人の女性に気を取られている時間を、各国政府は戦力を整えるチャンスだと見ているようです」









「首脳陣の中には女性を『好機をくれた女神だ』と称える声もあります」









「我々は1人の女性の犠牲によって大いなる好機を手に入れたのです」









「ああ、世界中から聞こえます。女性を称える声が聞こえてきます!! 私たちも称えましょう、女性を称えましょう!!」

















































「あ……ああ、あああぁぁぁ…………」









未だ腕から吊るされた状態で、女は弱々しく声を漏らす。








僕は女の体をつんつんと突付いていただけだ。それだけではじめは気持ちの良い悲鳴を上げていたけれど、時間が経つにつれて弱々しくなっていった。









腕の痛みだけでは、もう楽しませてもらえないんだろうか。









新たな痛みが必要か。









そう思うと、すぐに行動が出た。自分でもほとんど意識することなく、あまりにも自然な動作だった。









女の両方の太ももに、自分の両方の人差し指を突き刺した。ずぶりと、指の付け根までが沈み込む。





























「いあっ、ああああああああああああ!!!!!!!!!!!」





























女は再び絶叫をあげた。









聞きたかった声を再び聞いて、意識もせず自分が笑っていることに気づく。









ああ、楽しい。すごく楽しい。





























すごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごくすごく





























すごく、楽しい。






































女の下に、血溜まりが広がっていく。









足の先から、ぽたぽたと血が落ちる。合わせて、女の体はびくびくと跳ねる。









「ひっ……ひっ……」









女はまた、情けない呻き声をもらす。そんなのは聞きたくない。僕が聞きたいのは、空気を切り裂く悲鳴。









だけど、焦らない。まだまだこの女を叫ばせる方法は、いくらでもある。







































終幕へと向かう女の恐怖、それをもたらす僕の快楽は、まだまだこの程度で終わりはしない。









いつ終わるともしれない、宴を。僕とこの女だけの、宴を。



















底なしの苦痛を与え、底なしの恐怖を与えよう。










その底なしの恐怖こそが、僕が最も求める、底なしの快楽であるのだから。




















       

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